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7th Sense  作者: freeman
序章:主人公とは
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第六話:夕食にて

「お、おおおねぇちゃんっ!!な、ななな何言ってるのっ!!」

結理が衝撃発言をした次の瞬間、美紀はボッと顔を赤くし、涙目で抗議する。

「あれぇ?じゃあ美紀は式君に全然興味ないんだぁ~?」

からかったような口調で結理は言う。

「そ、そんなことないよっ!で、でも本人の前で言うなんてひどいよっ、おねぇちゃん!ふ、ふえぇ~ん」

とうとう泣き出しそうな声でワーワー嘆く美紀。

「・・・・」

しかし、そんな二人のやり取りなど全く耳に入っていない式であった。

彼の全神経は今、隣にいる彼の妹に注がれている。

(ま、まずい・・・これは・・嫌な予感がする・・・)

先ほどまで可愛らしく笑っていた綾の顔は時が止まったかのように固まると―――

―――キッ!

目つきが鋭いものとなり、斜め正面にいる美紀を睨む。

「―――ひっ!?」

すると涙目で嘆いていた美紀もその視線に気づいたようで、途端に体をビクリと震わせる。

それはさながら肉食動物とそれに食われることを恐れている小食動物のような構図だ。

「―――お兄ちゃん」

すると綾が声を掛けてきた。

「ど、どうした・・・?」

それがまた二人でいるときによく聞く可愛らしい声なので余計に怖い。

ツゥー

背中を一筋の汗が流れたのがわかる。恐らく次に彼女から言われることはろくでもないことに違いない。

「わたし、箸うまく使えないからご飯が食べられないの。だからお兄ちゃんに食べさせてほしいなぁ」

―――きた。ある意味、蹴りやつねりより痛い・・やつがきた。

「で、でもな綾・・・結理さんと美紀さんもいるし、そういうのは行儀が悪いだろ?」

だが式だってそう易々と聞くわけにはいかない。

「でも、せっかく用意してもらったごちそうを残す方が失礼だと思うけどなぁ~。ねぇ、美紀さんもそう思うでしょ?」

美紀に問いかける綾。

「―――ッ!?え?あ、あの・・・」

すると美紀は体をビクンと震わせ口ごもる。

「―――とにかく、食べ物を粗末にするのはよくないよね?お兄ちゃん」

それを無視して締めくくった妹。たしかに言ってることは尤もだが・・・・

「で、でもなぁ・・・・・」

「むぅ~・・・―――ッ!」

式の反応に綾は不満そうな顔をしてるが次の瞬間、何か思いついたような顔をして彼女は言った。

「なら、わたしもカミングアウトしよっかなぁ♪」

「カミングアウト?」

「さっきから結理さんと美紀さんが色々ぶっちゃけトークしてるから、私もココは場を盛り上げようと思ってね♪そうだなぁ、お兄ちゃんの話にしようかなぁ♪」

「え、なになに?式君の話?聞きたい聞きたい♪」

身を乗り出して興味深々の結理。心なしか、美紀も興味を持った視線を向けている様子だ。

(・・・俺のことでそんな面白い話、あったか?)

まぁそんなことでこの場が治まるなら構わないと思い―――

「・・・なら話してみろよ」

―――と、考えもなしに言ったのが失敗だった。

「じゃあ話すねっ♪お兄ちゃんがお風呂場でわたしに恥ずかしいモノ・・・・・・・を見せてきた話―――」

「―――ッ!」

(おいぃ――――!)

「「お、お風呂場で!?・・・・は、恥ずかしいモノ!?」」

結理と美紀の驚愕した声がハモった。二人とも顔を赤くしている。

「―――いや、待て綾!その言い方は変な誤解を招く!」

「え~?でもホントじゃん、お兄ちゃんがバスタオル一枚・・・・・・・のわたしに見せつけてきた・・・・・・・のは―――」

「「ば、バスタオル一枚!?・・・・み、見せつけて!?」」

またもや見事にハモった美人姉妹。

「ほ、ホントあのときは恥ずかしかったんだからね・・・す、すぐに隠してくれなかったし・・・///」

急に顔を赤くし、オーバーリアクションで手のひらで顔を覆い恥ずかしそうにする綾。

(ま、まずい・・・このままでは話が捏造ねつぞうされたままあらぬ方向へいってしまう・・・・)

「な、なぁ綾、話もいいけどご飯冷めちまうぞ?た、食べさせてやるからその・・・いったんその話はやめないか?なっ?」

(てゆうか、やめてください・・・・)

式はここで負けを認めたのであった。

「えー?せっかく面白いとこなのになぁ・・・・仕方ないなぁ」

あからさまに残念がっている表情をしているが、それが本心に見えないのは気のせいだろうか。

白飯が盛られている綾のお椀を手に取り、もう片方の手で綾の箸を持とうとすると―――

「お兄ちゃんの箸でいいじゃん」

「え?まぁお前がそれでいいんならいいけど・・・」

「ふふふ♪あーん」

小さく口を開けて式の持つ箸を待っている綾。

「あ、ああ―――はい」

白飯を適度に箸で取り、綾の小さな口元へ運ぶ。

口に入った白飯を咀嚼そしゃくして味わう綾。

「ど、どうだ?」

「うん!すごくおいしい。やっぱりたまにはご飯も食べるべきだね」

「そ、そうか。それはよかった」

「んふふふ♪あーん」

「あ、ああ」

それを何度か繰り返して、ようやくお椀が空になった。

「「・・・・・」」

ちなみにこの最中、結理と美紀はずっとそのやりとりを凝視していた。

(なぜだろう・・・すごく後ろめたいことをしている気持ちになったのは・・・)

ようやく解放され、自分の皿にある、残り一切れのハンバーグに手をつけようとしたときだった。

「―――待ってお兄ちゃん」

綾に呼び止められる。

「ん?どうした?」

「さっきのお礼にわたしが食べさせてあげる」

「え?いや、いい―――」

「―――食べさせてあげる」

「・・・はい・・」

逃げる隙も与えず綾が同じ言葉を発した。もう抗う気力がそぎ落とされた。

自分のフォークで式の皿にあるハンバーグをとらえるとそれをゆっくりと式の口に運んでいく綾。

「はい、あーん♥」

「あ、あむ・・・」

もぐり うん、やっぱりうまい。

「どう?おいしい?」

「ああ、おいしいよ」

そういって美紀の方を見ると目があった。また恥ずかしそうに顔で俯く美紀さん。

「――あ、お兄ちゃん、ちょっとこっち向いて」

「―――え?」

―――ガシッ

綾に声を掛けられたかと思うと両頬を綾の手にガッチリとホールドされ、ゴキッという音とともに首を曲げられ90度視界が変わると、そこには間近に綾の小さな顔がある。

「・・・・どうした?」

「あっ、やっぱり!口にハンバーグのソースがついたままだよ、お兄ちゃん」

「え?マジで?」

それは恥ずかしいと思い、パンツのポケットに入っているハンカチを取ろうとしたときだった。

―――スッ

「―――ッ!?」

突然、式の頬を両手で押さえながら綾の左手の人差し指が式の唇になぞるように触れた。

「ンフフッ♪」

そのまま両手を放すと式の口に着いていたソースを拭い取ったと思われる左手の人差し指を小さな舌でペロリとなめて彼女は言った。

「ホントにおいしいよね―――この和風ソース」

妖艶な笑みを浮かべて式を見つめている綾。

「・・・・」

向かいの椅子に座っている二人の反応を確認するまでもなく思った。

今すぐこの場から消えたいと思った式であった。



「今日はごちそうになりました。本当おいしかったよ、美紀」

「お、お粗末さまでした。そ、それじゃ式君、おやすみなさいっ!」

モジモジしながら俯いて美紀は言った。

「ああ、おやすみ」

「―――///」

ブウゥ―――ンッ

すると、顔を赤くしてそのままダッシュでリビングの方に消えていった。

(・・・やはり人見知りなのか?)

現在5001号室の玄関前―――あれからどうにか誤解を解いて食事を終え、綾を先に帰らせ美紀の皿洗いを手伝っていた。

美紀は終始敬語口調で俺に遠慮している様子だったので、歳も近いことだし敬語はやめて呼びやすいように呼び合おうということになった。

そして美紀が去った今、玄関前にいるのは式と結理の二人だけとなった。

「どうどう!?ウチの美紀ちゃんは?」

「とてもいい子ですね。将来いいお嫁さんになりなすよ」

「なんなら式君がもらってあげれば?美紀も喜ぶと思うわよぉ~」

冗談交じりに笑う結理。

「俺にはもったいないですよ―――それよりひとつ、聞いていいですか?」

「ん?何かしら?」


「なぜ今回の補佐の任務、請け負ったんですか?」


シーン・・・

途端、それまで和やかな空気が一変張りつめたものに変わった。

「・・・・どういう意味かしら?」

「簡単なことです。普通に命が惜しい人間なら俺と同じ任務に就きたがるわけがない」

「・・・・これは私が自分の意志で決めたことよ。あなたと一緒の任務に就くことのリスク・・・を踏まえた上でね」

「・・・・結理さんだけでなく、妹さんにも危険が及ぶ可能性がないとも言い切れませんよ?」

「問題ないわ。その時は式君があの子を守ってくれるから―――ついでに私のこともねっ♪」

ウィンクしながらきっぱりとした口調で結理は言った。

この時、どうしてこの人がこんなに自分の事を信頼しているのか理解できなかった。

「・・・あ」

そしてなぜか同時に全く関係ない、あること・・・・を思い出した。

(・・・・てゆうか綾のヤツ・・・箸使えたよな?)



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