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7th Sense  作者: freeman
序章:主人公とは
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第五話:隣人

―――午後6時すぎ―――

「―――ここが今日からあなたたちが暮らす5002号室よ」

24区の中心街に建っている一棟の高層マンション―――その最上階にある部屋のリビングに式と綾と結理の3人はいた。

海場との面会を終え、支部長室を後にして二人の待っている待合室に行ってみると、名前で呼び合っている2人が打ち解けたような口調で会話していた。どうやら互いに敬語口調はやめたようだ。式としてもこれから世話になる年上の女性に敬語を使わせるのはあまり気分がいいものではなかったので、任務時以外は敬語はやめてもらうことにした。その後、結理の車でマンションまで連れてきてもらったというわけだ。

「わぁー!見て見てお兄ちゃんっ!すごいよっ!」

窓の外の景色を見てはしゃぐ綾。

「ほんとだな」

最上階だけあって窓から眺める景色はなかなかのものであって24区を一望することができる。

間取りは4LDKと二人暮らしには十分な広さ。家具家電も備わっていてすぐに生活ができる状態だ。

「そういえば二人とも、今日は晩御飯の準備してないでしょ?」

「・・あっ、そういえば・・・」

「よかったらウチで晩御飯食べない?そうね・・・7時くらいはどうかしら?」

「え?でもそんな悪いですよ。また車で送ってもらうことになりますし・・・・」

「・・・フフフ」

「「・・・?」」

すると結理が小さく笑って言った。

「その心配はないわ。私は隣の5001号室に暮らしているから」

「―――えーっ!」

それに過敏に反応したのは、窓から外の景色を眺めていた綾だった。

(・・・まぁ粗方予想はしていたが・・・)

「・・・なら今日はお言葉に甘えてご馳走になろうかな。綾もそれでいいよな?」

「・・・別にいいけど・・・」

まだどこか納得していない様子で返事する綾。

「じゃあ7時にね、待ってるからっ♪」

「わかりました。では7時にお邪魔します」

ガチャッ

彼女は隣の5001号室へ帰っていった。



「あぁ~、緊張したぁ・・・」

脱力してリビングのソファーにもたれかかる。

(“結理さん”かぁ・・・・)

自分の事をそう呼ぶ、今日会ったばかりの少年の事をふと頭に浮かべる。

数多くのアメリカ敵対組織を殲滅してきた人間兵器・・・・―――

けど、私の目に映る彼の印象はそんなものとはかけ離れていた。

落ち着きがあって、部下である私に対しても謙虚な態度で、甘えてくる妹に苦笑しながらもやさしく接する“人間のできた面倒見のいいお兄ちゃん”という印象を受けた。

「・・・・」

そこで彼の補佐を任命されたときに支部長に言われた言葉を思い出した。


『―――今回の件、本部の連中は何か・・隠していると私は考えている。でなければリスクを負ってまで“あいつ”を国外に出すはずがない』

(・・・“あいつ”?)

『・・・支部長は序列第三位と面識があるのですか?』

『ん?まぁな・・・最後に会ったのは8年前だが』

(・・・8年前・・)

『というわけで、君には彼の補佐に加えて、その動向にも目を見張ってもらいたい』

『・・・“監視”―――ということでしょうか?』

『そこまで堅苦しいものではない。ただ何か不可解な行動を起こした時は常時報告をくれ』

『・・・わかりました』

『くれぐれも子供と思って見ない方がいい。アレ・・は正真正銘の化物・・だ』


化物・・、ねぇ・・・」

(―――まっ!今はとりあえずお客さんとしておもてなしすることを第一に考えるとしようっ!)

―――ガチャッ

「―――おねぇちゃん、帰ってきたの?」

するとリビングに入ってきた一人の少女が声を掛けてきた。

「うん、ただいまぁ~」

「おかえりなさい。そういえば今日だっけ?お客さんが来るのって」

「そうだよ。アンタも一緒に食事するでしょ?」

「・・・どうせイヤって言ってもダメなんでしょ?」

「イヤなら別にいいよ。その代わりきっと後悔すると思うけど」

「えっ?なんで?」

少女は頭に?を浮かべてたずねた。

「フフフ、それは後のお楽しみっ♪」

思わず笑みがこぼれるといった表情を浮かべて結理は言った。



ピンポーンッ

午後7時、綾と5001号室のドアの前に立ち、インターホンを押した。

「はーい♪」

―――ガチャッ

すぐにドアが開き、中から結理が出てきた。

「いらっしゃい。さぁ二人とも中に入って」

「お邪魔します」

「・・・お邪魔します」

靴を脱ぎ、リビングへ入るとスマートテレビ(インターネット検索などコンピュータの機能を取り込んだテレビ)やソファ、豪勢な料理が並んでいる四人掛けのダイニングテーブルがあり、他にも生活雑貨などが多くあり、明るい雰囲気のリビングだ。

「ちょっと散らかってるからゴメンねっ」

「そうですか?とてもきれいにしてると思いますよ」

「そう言ってもらえると嬉しいわ。もうお料理はテーブルに置いてあるから適当に座って頂戴。あとはあの子・・・を呼んでくれば、食事を始められるから―――」

「「・・・あの子?」」

そこで式と綾の声がハモった。

ガチャッ

するとリビングにあるもう一つの扉が開き、誰かが入ってきた。

「おねえちゃん、もうお客さん来―――」

―――ピタッ

そこで入ってきた人物と目が合った。

身長は綾より少し高いくらい。学校の制服を着ていて肩まで伸ばした黒髪に赤いフレームの眼鏡をかけている。目元はどこか控えめな雰囲気を感じさせ、きれいな鼻筋に形の整った口元、全体的に大人しそうな印象を受ける美少女だ。

(なんか、結理さんに似てるような・・・・)

「・・・・・」

すると目があった彼女が口をあんぐりと開けたままこちらを見て固まっている。

「きゃ・・・・」

「・・・きゃ?」

なにか言葉を発したかと思うと―――

「キャ――――――――ッ!」

「「―――ッ!?」」

少女の悲鳴がリビングに響き渡った。



「―――ホント美紀ったら、なにも悲鳴あげなくったっていいじゃない」

そう言って笑う結理。

「だ、だって・・・ホントビックリしたんだもん・・・」

恥ずかしげな表情で顔を赤くして俯く先ほど悲鳴をあげた“美紀”と呼ばれてる少女。

「そんなのいきなり叫ばれた二人の方がビックリしたに決まってるよぉ。ねぇ式君?」

楽しそうな表情でたずねてくる結理。

「まぁ、たしかに驚きましたね・・・」

苦笑いを浮かべる。

現在、四人はダイニングテーブルの椅子に座っている。

席はキッチン側に結理と“美紀”という少女が隣に座り、結理の向かいに綾、その隣に式という配置だ。

「・・・・」

彼女は顔を赤くし、チラチラと式の方を見ては視線を下に向けている。

「・・・」

ギュウ・・・

そして、なぜか無表情になってテーブルの下で式の腕をつねっている綾。

(・・・・・俺、何かしたか?)

「―――じゃあ紹介するわね。この子は私の妹の工藤美紀。あなたたちと同じ16歳よ。綾ちゃんと同級生になるわ。ほら、美紀っ」

「え?え、えっと・・・・い、妹のく、工藤美紀ですっ。えっと・・・第一高校に通っていますっ。あ、あの・・さ、さっきはすみませんでしたっ!・・・よ、よろしく、お、お願いします」

頭をペコリと下げ、たじたじのあいさつを終えると、恥ずかしそうにしながら俯く。

(・・・人見知りなのか?)

「いや、別に気にしてないよ。俺は雅式といいます。アメリカから来ました。よろしく。こっちは妹の綾―――綾も、ほらっ」

「・・・雅綾です・・・よろしく」

これまた素っ気ない態度の綾。あいさつくらいきちんとできるようになってほしいのだが・・・

「さぁ!自己紹介も済んだことだし、乾杯しましょ!」

そう言ってジュースの入ったコップを手に取る結理。美紀も顔を赤くしたままそれにならって、綾も仕方なさそうに、そして式もコップを手に取った。

「それでは!二人の来日と私たち・・・の引っ越し祝いにかんぱ~い!」

「「「かんぱ~い」」」

(・・・ん?)

そこで式は思わず?を浮かべた。

「さぁ、食べましょ♪式君も綾ちゃんもいっぱい食べてね」

「は、はい。いただきます」

「・・・いただきます」

―――パクリ

フォークとナイフを使ってハンバーグを口に入れた。

「「―――ッ!」」

「うまい」

「・・・おいしい」

二人同時に言葉が出た。

「このハンバーグ、すごくおいしいです」

「それ、美紀が作ったのよ」

誇らしげに結理が言う。

「へぇ、美紀さん料理上手なんだね」

正面の美紀に賞賛の言葉を贈る。

「―――えっ!?い、いやそんな・・大したものは作れません・・・ちょっとできるくらいです・・///」

目が合うまた頬を赤らめ俯く美紀。

「式君は料理するの?」

「いえ、暇なときに綾に教えてもらいながら作るくらいです。料理はいつも綾がしてくれてます」

―――ポンッ

「・・・お兄ちゃん///」

そう言って自然と綾の頭を撫でると頬を赤らめ、照れた顔をして式の顔を見上げる綾。

「へぇ~、なら式君も仲間・・だね―――私なんて、からっきし作れないよぉ~」

「―――え・・・?」

結構ヘビーなことを笑顔でサラリと言った。

(・・・あれ?今俺の中の結理さんのイメージに亀裂が入ったような・・・まぁ今の時代、できない人だっているか・・・)

無理やり納得することにした。

そして、気になっていたことをたずねることにした。

「―――あの、結理さん。」

「ん?なに?」

「さっき乾杯の時、“私たちの引っ越し祝い”って言いましたよね?」

「うん、そだね」

「あれは一体、どういう意味ですか?」

「あ、言ってなかったかしら?実は私たちもおとといココに引っ越してきたばかりなのよ」

(・・・なるほど、そういうことか)

「すみません。俺のせいで面倒な手間・・をかけさせてしまって」

恐らく彼女たちはこの任務・・のためだけに、住む場所を変えさせられたのだろう。

「そ、そんな式君が謝ることないのよ。むしろこっちは感謝してるくらいだし」

「そ、そうですっ!もともとホントだったらおねぇちゃんみたいな下っ端・・・のお給料でこんないいところに暮らせるなんてありえないし、私はその・・・すごいありがたいですっ!ありがとうございますっ!」

バッと頭を下げてきた美紀。謝ったつもりがなぜかお礼で返されてしまった。そしてサラりとひどいことを言った。

「そうですか・・・けど任務が終わった後は?」

「前暮らしていたマンションと同じ家賃でいいって言って下さったの。しかも任務が終わるまで家賃はタダでいいって♪」

嬉しそうに話す結理。

「そういうことを子供が心配するもんじゃないわよ、式君」

彼女はやさしい笑みを向けてそう言った。

「・・・これでも一応、俺はあなたの上司ですよ、結理さん」

「あら、これは失礼しました。序列第三位♪」

(・・・なんか楽しそうだな)

「にしても美紀、たしかに私の稼ぎじゃココに住むのは無理だろうけど、“下っ端”は酷すぎるんじゃない?」

口を尖らせ、不満そうな口調で抗議する。

「それを言ったらおねぇちゃんの方が酷いよぉ。どうしていきなりこんないいところに住めるようになったのか気にはなってたけど・・・・お二人が来ることくらい前もって教えてくれてたってよかったじゃない!おかげで私は大恥かいちゃったよぉ・・・」

今にも泣きそうな顔で訴える美紀。

「アハハッ、ゴメンゴメン。でも美紀の驚いた顔をどうしても見たかったのよ。見事予想以上の反応をしてくれたから、私は大満足よっ♪」

(・・・確信犯はあなたですか、結理さん)

クスクス・・・

(・・・ん?)

隣を見ると、俺とと二人きり以外のときはあまり笑わない綾が小さく笑っていた。

(・・・ここにきて正解だったかな・・)

その笑顔を見ると心のどこかで安心した。


結理さんの放った、次の言葉を聞くまでは―――


「それによかったでしょ?憧れの式君に会えて」


―――ピキッ

次の瞬間、笑っていた綾の顔は鉄仮面のように固まり、目つきが変わった。

「・・・・」

同時に式は戦慄した。















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