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7th Sense  作者: freeman
第二章:弐頭龍、襲来
41/64

第三十七.五話:助っ人

遅くなってごめんなさい。

この話は三十七話と三十八話の間の話です。結構詰め込んじゃった感じですが、どうぞっ!

―時を遡ることおよそ3分前、午後6時40分、第一高校教室棟一階―

ブワァッ

資料室のドアが蹴破られたことよって、炎が燃え広がっている廊下の熱が室内に入ってくる。

カツン、カツン、カツン・・・・

「ハロー、愛シノ悪魔チャン♥オネェサンガ殺シニ来タゾ♥」

そんな灼熱の光景を背景にして、薄暗い資料室に入ってきた女、リンシェン。

女は数メートル向こうの床に屈んでいる少年の姿を目で捉えると―――

「ン~、ヤッパ、イ・イ・オ・ト・コ♥殺スノモッタイナイッ!」

うなりながら両頬に手を添え、長い脚を内股に閉じてクネクネと腰を振りながら、熱を帯びた目つきで少年を見つめている。

対して、見つめられている本人はというと―――

(・・・何だコイツ?どっかのストリッパーか?)

そして佐藤めぐみは、少年の肩越しから襲撃者の姿を見て純粋にこう思った。

(・・・モデルみたい・・・)

身長170センチほどの長身に、メリハリのあるくびれ、日本人離れした見事なプロポーションだ。

(それに・・・すごい恰好・・・)

太ももの辺りまでしかない黒いチャイナドレス。丈の短いスリットからはスラッと長い脚が伸びており、肩は剥き出しとなっている。自分には決して真似できないような、露出度の高い格好に視線が釘付けになってしまう。


『あのふざけたチャイナドレスをやっつけます』


(この人が・・・明石さんが言ってた・・・―――ッ!!)

この女がここに来たと言うことは――――

(・・・ひょっとして・・・)

先ほどの大きな爆発で彼女の身に何かあったのかもしれない―――抑えようのない不安が頭の中を駆け巡る。

ぎゅっ・・・

不安のせいか、めぐみは思わず少年の手を握ってしまった。

だが式は特に反応を示さず、めぐみと手を繋いだまま―――

スタッ

めぐみの手を引いて立ち上がった。未だに何枚かのガラス片が刺さっているその背中には、黒い炎のようなものが音もなく、纏わりつくように蠢いている。

めぐみも不安げな表情を浮かべながら、寄り添うように彼の傍らに佇んでいる。

「お前か、階段で俺の背中を穴だらけにしたのは」

少年は正面にいる女を見据えて口を開いた。

「御名答ッ☆モー逃ゲラレナイゾ、悪魔チャン♪」

口元を二ィと吊り上げて答える女。

「・・・廊下で闘ってたS2操者はどうした?」

「アー、アノ小娘ネ・・・殺シタ」

女は心底興味のなさそうな口調で言った。

「―――ッ」

その言葉が耳に入った瞬間、めぐみの呼吸が一瞬止まった。

(・・・そんな・・・明石さん・・・)

ポタ、ポタポタ・・・

同時に、目元から抑えようのない涙が溢れてきた。

だが彼女の隣にいる式はその言葉を聞いても、全く表情を変えない。

そして彼は言った―――


「なら、お前の後ろにいるのは一体誰だ?」


「「―――ッ!?」」

その言葉にめぐみは顔を上げ、リンシェンはハッと後ろを振り返った。

直後―――

シュ―――ッ

それまで廊下に燃え広がっていた炎が瞬時に消えると、まるで濃い霧のように視界を遮る、大量の水蒸気が廊下から室内に入ってきた。

ツカ、ツカ、ツカ・・・

そして白い霧の中から聞こえてくるゆっくりとした足音―――

「誰を『殺した』ですって?オバサン・・・・

グイ

額の辺りから流れている血を適当に拭って、彼女・・は正面から女を見据える。

霧の中から姿を現したのは、水色のブレスレットをはめた右手に冷気を纏った少女、明石央乃だった。

「明石さんっ―――!う・・うぅ・・よ、よかったぁ・・・」

ぺタ

安堵で力が抜けたのか、その場にへたり込んで口元を押さえながら涙を流しているめぐみ。

「―――チッ・・・」

リンシェンは舌打ちをしながら央乃を睨みつけると―――

ボォッ

黒いグローブをはめている右手から、指で挟むように4本の炎針を生成した。

バンッ

同時に、央乃はその場に屈んで、冷気を纏った右手を床についた。

「―――クタバレッ!」

しなやかなラインの腰をひねりながら、女は素早く右腕を振って炎針を投げようとした。

しかし―――

「―――ナッ!?」

炎針を投げ放つことはできなかった―――なぜなら―――

ピキピキピキ―――ッ

突如、足元の床から生えるように出現した氷が、両足から腰の辺りまで張り付き、腰から下が微動だにできなかったからだ。

「―――痛ッテ――ッ!」

冷たいという感覚を超えて、直に体を凍らされた激痛が駆け巡る。

その足元には、床を伝ってある方向・・・・から冷気が送られてきた痕跡がある。無論、その方向の先には―――

「やっと近づくことができた―――半径5メートル以内に―――」

5メートルほど先で屈んで、床についている右手から冷気を送っている明石央乃の姿。

バッ

そして少女は立ち上がると、勢いをつけるように2、3歩ほど走り込み―――

―――ダンッ

アスリート並みの身体能力を感じさせる、非常に高い跳躍をして女に飛び掛かった。

ズオォ―――

自身との距離およそ2メートル、高さおよそ2メートルの地点で上昇の頂点に達し、放物線状に自分の方へ降下してくる少女の姿を眼前にしたリンシェンは―――

グッ

体中に思い切り力を込めて叫んだ。

「―――クソッ垂レッ!」

ピキピキピキッ―――!

こんな怪力がこの細身の女にあると誰が思うだろうか。怒り狂ったリンシェンの雄叫びと共に、女の腰や脚に張り付いていた氷に亀裂が生じ―――

―――バリンッ

崩壊した。

「―――死ネッ!」

ビュッ

女はすかさず右手に持っている炎針を、空中から迫り来る少女目掛けて至近距離で投げ放った。

ブンッ―――

加速系を作用させていることで、弾丸のような速度で飛翔する4本の炎針が、一直線に央乃に向かって飛んでいき―――

バァ―――ンッ!

直撃した―――

シューッ

炎針が少女に直撃したと同時に、空中で白い霧のような煙が勢いよく発生する。

(―――フッ、今度コソ―――)

目の前で直撃を目にし、そう確信したリンシェン―――

しかし―――

「―――ナッ!?」

ブワッ

次の瞬間、眼前の煙の中から、無傷・・の少女の姿が―――

ピキ、ピキピキッ―――

その右手には、もうほぼ原型を留めていない、大きな氷の塊のようなものが―――

パッ

少女はその氷の塊を投げ捨てると―――

「―――はぁっ―――!」

その白くて健康的な両脚を真っ直ぐ伸ばし―――

「―――ッ!?」

斜め下で呆然と立っている女の腹に―――

ドゴ―――ッ

まるでレスラーのような、豪快な飛び蹴りをかました。

「―――ガハッ!!」

真正面からその蹴りをまともに受けたリンシェンの体は、海老反りのように『く』の字に曲がって後方に吹き飛ばされ――――

ドゴーンッ!

「―――ガッ!」

後方にある木製の巨大な本棚に叩きつけられた。

バタッ

女は力なく前のめりになって床に倒れた。

バタバタバタッ・・・・

衝撃によって高さ2メートルほどの本棚がグラグラと揺れ始め、何冊も書物が落ちていく。そして大きく揺れ始めて不安定になった本棚は―――

ガタ―――ンッ!

前方に倒れている女を下敷きにして倒れた。

「あー、スッキリした」

飛び蹴りをかました両足で軽やかに着地していた央乃は、その有様を見て、清清せいせいした様子で言い放った。

「あの一瞬で氷を生成して身を守ったのか・・・お前速い・・な、明石」

事の一部始終を見ていた式は、淡々とした口調で央乃に声をかける。

「錬成スピードにはそこそこ自信があるの、でも正直ギリギリだった・・・まさか自力で氷を割るなんて・・・とんだ馬鹿力ね、あの女・・・」

そう言って女を下敷きにしている本棚を一瞥する。


央乃はリンシェンが投げた炎針が直撃する寸前に、右手で氷の盾を生成して炎針から身を守ったのだ。その生成時間は1秒を切っていた。また、直撃と同時に発生した霧のような白い煙は、実は炎針と氷の盾が衝突した際に発生した水蒸気だったのだ。


「・・・いや、俺はむしろ、お前のドロップキックに衝撃を受けた・・・」

「そう?あんなのただの飛び蹴りよ、そんなに珍しくもないでしょ?」

「・・・いや―――」

央乃の言葉に異を唱えるような様子で式は言った。

「パンツ丸見えのドロップキックなんて、中々見れないぞ?」

「―――ッ!!」

直後、ハッとした様子で顔を真っ赤にした央乃。

そう、彼女は制服のスカートの格好で、豪快なドロップキックをかましたのだ。真横からそれを見ていた式には、風圧で大きく揺らいだスカートの中身が丸見えだったというわけだ。

バッ

「―――み、見たのっ!?」

顔を赤く染めながら、隠すようにスカートを押さえて式を睨みつける央乃。

見た・・んじゃない、見えた・・・んだ」

あっけらかんとした様子で釈明する式。

「こ、この変態っ!最低っ!信じられないっ!」

顔を真っ赤にしながら声を張り上げる央乃。

「いや、見えたものは仕方ないだろ。佐藤先生もそう思いますよね?」

スッ

そう言って床にへたり込んでいるめぐみに手を貸す式。

「え?えっと・・・その―――」

式の手を取って立ち上がると、言葉に詰まっているめぐみ。

「・・・だ、大丈夫だよっ、明石さん―――」

そして意を決したようにめぐみは言った―――

「―――先生もさっき見られちゃったからっ!」

どこか恥ずかしそうに苦笑いを浮かべている女性教師。

「・・・雅君、あなた佐藤先生の下着まで覗き見したの?」

そんなめぐみの様子を見て、軽蔑した目つきで尋ねる央乃。

「んなわけあるか、目が覚めたら視界に入ったんだ」

「目が覚めたらって・・・――――ッ!?」

そこで央乃はやっと気がついた。

「雅君・・・あなた、あれだけの傷を負ってたのに・・・どうして―――」

すると突然、話の途中で言葉を途切らせた央乃、そして―――

クラッ―――バタッ

力なくその場に倒れ込んだ。

「―――ッ!?明石さんッ!!」

バッ

慌てた様子のめぐみが央乃の元へ駆け寄る。

央乃はうつ伏せに倒れたまま、返事をしない。

「雅君っ!どうしようっ!?」

落ち着きのない様子で振り返るめぐみ。

「大丈夫、気を失ってるだけです。ああやって強がっていましたが、体力的にかなり無茶をしていたようですね」

式はマイペースな足取りで央乃の元へ歩み寄り、その場に屈むと―――

ガバッ

央乃の体を両腕で抱き上げながら立ち上がった。

「・・・・」

その背中をめぐみは無言で凝視していた。なぜなら―――

(・・・背中に刺さってたガラスが・・・ない)

そう、ついさっきまで刺さっていたガラス片はなく、カッターシャツが破れて剥き出しになっている背中には、傷が一つも見当たらない。そして―――

(あの黒いのも・・・なくなっている)

彼の背中に纏わりついていた、黒炎のようなものも、いつの間にか消えてなくなっていた。

「取りあえず、今の内に・・・・ここを出ましょう」

そう言った直後だった―――

ブア―――ッ

「―――ッ!?」

突然、背後から激しく炎が燃え上がった音が耳に響き、ビクリと体を震わせためぐみ。

振り返ってみると案の定、先ほど崩れ落ちた大量の本によってできた、本の山が激しく燃えている。

そしてその中心に倒れている、巨大な本棚にも火が燃え広がっている。

すると―――

バキバキッ―――バァ――ンッ!

下から何か・・が、本棚を突き破った。

―――黒いグローブをはめている拳だ―――

バキバキッ、バキッ

そして、そこから這い出てきた―――黒いチャイナドレスの女―――

「・・・ハァ・・ハァ・・・アー、クソッ!痛ッテー」

二つの団子を作っていた髪は乱れ、肩や腕、額から血を流している女は苦痛に顔を歪めると正面にいる2人―――いや、正確には3人に視線を向け―――

「モォ怒ッタ―――全員殺ス―――」

「―――ッ」

その狂気を含んだ眼光にビクリと怯むめぐみ。対して式は―――

(あの程度で死ぬようなタマじゃないとは思ってたが、まだこんな元気があるのか・・・)

「・・・タフな女だ」

央乃を抱き上げたままポツリと呟いた。

「・・・ネェ悪魔チャン―――ワタシ、悪魔チャンノファン・・・ナンダ♥」

ベロッ

自身の腕から流れている血を舐めながら、熱烈な視線を式に向けるリンシェン。

「殺シノ仕事スル中デ、ヨク悪魔チャンノ噂聞ク♪人間兵器ノ3人ノ中デモ最モ悪名高イ・・・・・・、“イカレタ化物”ダッテ♪」

「・・・・・」

「今日生デ見テ分カッタ―――悪魔チャン―――君、超ヤバイッ♪ホーント最――ッ高♥」

興奮を抑えられない様子で舌なめずりしながら式を見ているその瞳には、狂気が滲み出ている。

「ダカラァ♪大好キナ悪魔チャンハ苦シクナイ様二、一瞬デ灰二シテアゲル♥ソコノ雌2匹ハ・・・スンゲー痛メツケテカラ殺スケド」

そう言ってめぐみの方へ視線を向けるリンシェン。

「―――ひっ」

自分の方へ視線を向けてきた女の、狂気を含んだ眼光に怯んでビクリと体を震わせるめぐみ。

そんな中、少年は気怠そうな口調で口を開いた。


「そんなぬるい炎・・・・で俺を灰にするだと?そりゃ無理だ」


「・・・ハァ?」

表情が固まったリンシェン。

「俺を灰にしたいなら炎帝・・でも連れてこい。お前程度・・・・じゃ俺は殺せないぞ、中連人チャイニーズ

「・・・ンダト?」

シュッ

直後、正面にいた女が消えた、いや―――

ダンッ

女は5メートル以上の距離を一瞬で詰め、式の眼前に現れた。その移動速度は明らかに常人の動きを超えた、加速系によるものだ。

「―――ッテヤンヨッ!」

ボウッ

そして、炎を纏った右手の手刀を式に向けて繰り出した。

「―――ッ!」

式の隣にいる佐藤めぐみは突然目の前に女が現れたことで反射的に目を瞑った。

だが同時に―――

ズン―――ッ

彼女は背後から物凄いスピードで何か・・が近づいてくるような感覚を覚えた。

また式は、自分に迫り来る手刀を躱そうとも、避けようともしない。

ズオォ―――ッ

そして央乃を抱いたままその場に突っ立ている式に向けられた炎の手刀は―――


パシッ


「―――ナッ!?」

突如、式と女の間に割り込むように現れた人物によって弾かれた。

バチバチバチッ

炎の手刀を弾いたその右手は、青白い電流を纏っている。

「―――チッ!」

バッ

突然の乱入者を警戒するように数メートル後方へ下がるリンシェン。

そして正面からその姿を確認した。

上下黒のスカートタイプのスーツに、ウェーブのかかった長い黒髪をなびかせている。

「・・・誰ダ?オマエ」

乱入者を睨みつけて言うリンシェン。

「サオス日本支部、第三官・工藤結理。この子の補佐兼保護者よ」

自分の背後にいる少年に視線を向け、乱入者・工藤結理は言った。



「ナイスタイミングです、結理さん」

まるで、全て分かっていたような口調で、背を向けている結理に式は言った。

「遅くなってごめんなさい!校内にいる人たちの避難誘導に少し時間が掛かっちゃったの!」

パンッ

振り返って申し訳なさそうに両手を合わせてきた結理。

「大丈夫ですよ。俺はこの通り、ピンピンしてますから」

「でも・・・服がボロボロ・・・それに血がついてる・・・」

血だらけの式と、彼が抱いている央乃を見て表情を曇らせる結理。

「問題ありません。それより―――」

「―――そうね、今は―――」

二人は正面にいる、黒いチャイナドレスを纏った女に視線を向ける。

「どうやらあの女、怪焔フィアンマの錬成操作に加速系も使えるようです」

「重操が使えるS2操者・・・厄介ね」

(ここは式君と組んで戦った方が―――)

そう考えて、式との初めの共闘を期待していた結理であったが―――


「―――んじゃ結理さん、後は頑張ってください」


「・・・は?」

「先生、行きましょうか」

グッ

「―――あっ」

央乃を片手で抱き上げて、もう片方の手でめぐみの手を取ると―――

ブウゥゥ―――ンッ

二人を連れて少年はそのままダッシュで資料室を出ていった。

「「・・・・・」」

その様子を呆然と見ていた結理とリンシェン。そして二人の女が取り残された資料室に―――

「はあぁ―――っ!?」

工藤結理の声が響き渡った。




「雅君・・よかったの?」

「・・・え?何がですか?」

タッタッタッタ・・・・

央乃の体を担ぎながら、大小さまざまな大きなの氷の塊が散乱し、火災現場のように黒ずんでいる一階廊下を小走りしている式と、彼に手を引かれて同じく小走りしているめぐみ。

「あのサオスの人・・・心配じゃないの?」

「ああ、結理さんのことですか―――全然」

「・・・どうして?」

「毎日殴られてる俺には分かるんですよ。あの人、ああ見えて結構やり手・・・ですから―――」

そして先ほど自分が襲撃された廊下の端にある階段にたどり着いた。

すると―――

「―――っと」

「―――おっとと!」

その突き当りで、意外な人物と鉢合わせた。

「おっ!シーくんにめぐみ先生、それにあかちゃんっ!みんな無事だったんだねぇ♪良かった良かった♪」

透き通るような白い肌に、160センチほどの身長の少女だ。艶のある長めの黒髪をポニーテールに纏めていて、その毛先はクルンとウェーブがかかっている。その顔は少し大人びた雰囲気も感じさせ、パッチリとした目は式を見据えており、小さく形のきれいな口元から愉快そうに言葉が発せられた。

「・・・やっぱり来ましたか、詩菜さん」

「―――えっ!?何で海場さんが・・・?」

その人物の姿を見て正反対の反応をする二人。

第一高校現生徒会長でもあり、日本支部の第二官・海場詩菜かいば しいながそこにいた。

「避難誘導で色々やってたら遅くなっちゃった、ゴメンねぇ~」

両手をスリスリ合わせながら軽い調子で謝ってきた。

「ん~?あれぇ?そういえば“ユリっち”はぁ?先にシーくんたちの方に向かったと思うんだけどぉ~」

(ユリっち・・・ああ、結理さんのことか・・・)

「向こうの資料室で黒いチャイナドレスのストリッパーと交戦中です」

「ストリッパー?あ~、さてはシーくん、ユリっちに全部押し付けてきたなぁ~?悪い子めぇ~」

ポンポンッ

お仕置きのつもりなのか、軽く式の頭を小突いた詩菜。

「人聞きが悪いですよ、信頼して任せた・・・・・・・んですよ」

「またまた~、よく言うよぉ~」

どこか見抜いているように笑みを浮かべる少女。

「―――まぁ、というわけで詩菜さん、二人のことをお願いします」

ガバッ

そう言うと、パッとめぐみの手を放し、担いでいた央乃の体を詩菜に預けた。

「ん~?一体どういうつもりなのかな?シーくん」

央乃の体を優しく受け止めながらも、どこか問い詰めるような口調で式に視線を向ける詩菜。

「あなたの代わりに二階には俺が行きます。どうやら敵は魔氷リオートの錬成操作を行使しているようですね」

「へぇ~、FDS・・・なし・・でそんなことも分かっちゃうんだぁ~♪さっすがぁ~」

「この程度、あなたの親父さんに比べたら大したことないですよ」

「うふふー、えっへん!自慢のお父さんなのだっ♪」

そう言って誇らしげに胸を張る詩菜。

タプン、タプンッ

そして、その動きに連動して上下に揺れる彼女の規格外な胸。

「・・・・・」

(・・・いつ見てもスゲェな・・・アリスぐらいあるだろ、コレ・・・)

その豊胸に目が釘付けになっているバカ

そこへ―――

「でもねぇ、シーくん―――」

詩菜が静かに口調を開いた。

「ここは米国じゃなくて日本なの、この前の任務は特例だったから容認したけど、本来は日本支部の指揮権領域だからシーくんに勝手に動かれたら日本支部こっちとしては面子が立たないの。分かるよねぇ?」

「・・・・・」

「それにぃ~、シーくんはスイッチが入っちゃったら、やり過ぎる所があるでしょ~?そういうの、日本ここじゃチョットまずいんだよね~」

「・・・詩菜さん」

するとゆっくりと式は口を開いた。

「ん~?」

「ついでに感知できたんで、一つ伝えておきます」

「何ぃ~?」


「二階にいる拓弥なんですが、瀕死状態です」


「「―――ッ」」

その言葉にめぐみは口元を押さえ、詩菜もわずかに眉を潜めた。

「たぶんこのままじゃアイツ、持ってあと数分くらいだと思いますよ」

「・・・世良っちが・・・」

「詩菜さん、俺が二階に行けば、アイツの命を助けてやれないこともないですけど・・・・どうしますか?」

僅かに口元を吊り上げ、少女に視線を向ける悪魔。

「・・・・シーくん、やっぱり君、悪い子・・・だね」

「その言葉は『交渉成立』と受け取っていいんですよね?」

「―――もぉ~、しょうがないなぁ、行ってきなさ~い☆」

「安心してください。約束・・は守りますから」

そう言って二階への階段を上ろうとした時だった―――

「―――雅君っ!」

突然、背後から声をかけられた。

「・・・何ですか?佐藤先生?」

「そ、その・・・絶対、無事で帰って来るんだよっ!」

今にも泣きそうな表情で少年を見上げながら担任教師は言った。

「・・・やっぱり先生は二人目・・・ですね・・」

その表情を見て、ポツリと彼は言った。

「え?今なんて―――?」

「・・・何でもありません。んじゃ、ちょっと行ってきます」

タッタッタ―――ッ

そう言うと少年は階段を駆け上がっていった。

階段を駆け上がりながら少年は心の中で担任教師に言った。

日本こっちに来て、俺を人間・・として見てくれた大人はあなたが二人目です、佐藤先生)

最も、一人目・・・は今頃、俺に対して怒り心頭しながら交戦中だろう。

(・・・こりゃ、また晩酌に付き合わされるかもしれないな・・・)

そんなことを考えていると一瞬、その顔が年頃の少年らしく、どこか楽しそうに綻んだ。

「―――さて」

だが次の瞬間には、その表情から無邪気な笑顔は消えた。

タッタッタッ・・・タンッ

そして二階の床に着地した瞬間、その右手から黒い炎を出現させると、舌なめずりしながら化物は呟いた。

「久しぶりに味わえるかもしれないな―――女の血肉・・・・を―――」

























次回から三十八話の続きです。

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