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7th Sense  作者: freeman
序章:主人公とは
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第二話:サプライズ

―――8月24日、正午12時37分、太平洋上空を飛行中の小型旅客機の機内―――

「お飲物の御代わりはいかかですか?」

機内にいる唯一・・の乗客にブロンドヘアーのキャビンアテンダントがたずねてきた。

「綾、何か飲むか?」

「・・・いらない」

ぶすっとした表情で言う綾。

「そ、そうか・・・なら俺もいいや」

「かしこまりました。何かご用がありましたらお呼びください」

意味ありげな笑みを浮かべるとモデルのような足取りで去っていくキャビンアテンダント。

「・・・・・」

その後ろ姿を見ていると―――

ゴッ!

「―――がぁっ!」

左足の脛に激痛が走った。

「痛ってぇー!何すんだよ綾!」

正面の席に座っている綾が机の下から蹴りをかましてきた。

「フンッ!何見とれちゃってるの―――だらしない」

軽蔑したような眼差しでこちらを見てくる。

「いや、別に見とれてたわけじゃ・・・」

「うそっ!ジーとおしり見てたじゃんっ!」

「いや、確かにキレイな人だとは思ったけどそんなことは断じてしていないぞ」

「・・・お兄ちゃんのスケベ」

「・・・なぁ、まだこの間のこと怒っているのか?」

「・・別に怒ってないもん」

(・・・はぁ)

思わずため息が出てしまった。



時を遡ること5日前―――8月19日、自宅の浴室で日本で暮らすことになったことを告白した直後だった。

「・・・・」

体をブルブル震わせる綾。

「ど、どうした綾!?」

「わ、わわわたしのぉ・・・・」

かすれたような声だが、そこに怒気が含まれているような気がするのは勘違いだろうか。

「あ、あの綾さん?」

「わたしのぉ・・・・・かえせぇ・・・」

「わたしの?かえせ?」

「わたしのときめきをっ!かえせーーーー!!」

―――ドゴッ

「―――ぐっ・・・!」

直後、頬に強い衝撃がきた。それが華奢でかわいらしい少女から繰り出されたパンチだと誰が予想できようか。

「ぐはっ!」

バタッ

パンチの衝撃でその場に倒れこむ。

「もう、知らないっ!!」

―――バッ

そのまま浴室を出て行った綾。



その後、何度も謝ったが「わかってないっ!」の一点張りで結局今日まで機嫌が直っていない。だが、日本で暮らすことには特に文句とか言ってこないから、もしかしたら別のことで怒っているのかもしれないが、心当たりが全くないのでお手上げ状態だ。

(・・・そろそろか)

「なぁ綾―――」

「・・・なに?」

頬杖をついて、窓の外の景色を見ながら素っ気なく返事する綾。

(まだ怒ってるなぁ)

「ちょっと左手を出してくれ」

「え?なんで?」

疑問を浮かべた表情で少年を見る。

「いいから」

「う、うん・・・」

わけがわからないといった様子で左手を差し出してくる。その小さな手をとり、細い薬指にソレ・・をはめた。

(よし、ピッタリだな)

「え?これって・・・・」

左手の薬指にあるのは細いシルバーの指輪で真ん中に赤く光る石が埋め込まれている。

「うわぁ、すごくきれい!」

「お待たせいたしました」

そこへ先ほどのキャビンアテンダントがきた。手に持っているトレイにはシャンパンの入ったグラスが2本と16本の火のついたロウソクがささっている小さめのホールケーキがある。

それらを手慣れた手つきでテーブルに置いていく。

「ではごゆっくり」

「ありがとう」

再びモデルのような足取りで去って行ったキャビンアテンダント。

「ほら、ロウソクの火を消して」

「―――えっ・・・?」

まだ混乱してる様子の綾だが―――

「う、うん・・・はぁー、ふぅー」

息を吸い込んで懸命に火を吹き消す。苦戦しながらもすべての火を消した。

パチパチパチ・・・

「16歳の誕生日おめでとう、綾」

「あ、ありがとうっ!!お兄ちゃんっ!!」

今にも抱き着いてきそうな勢いで身を乗り出し、満面の笑みを浮かべている。

「喜んでくれてよかった。CAの人に頼んでサプライズした甲斐があった」

「・・・それでさっきからあのCAさんの方を見てたの?」

「まぁ、こういうのはタイミングが大事だってよく言うからな」

「・・・・ごめんなさい。わたし勘違いしてさっき酷いこと言って、それにこの前の事も・・・勝手に1人で怒ってお兄ちゃんを困らせて・・・わたしってほんと子供だね・・・」

落ち込んだ表情で俯いてしまった。

「・・・いや、この前のことは俺が怒らせてしまったんだから(原因はわからないが)気にするな。それにお前はまだ16歳なんだから子供でいいんだよ」

当たり前のことを言ったつもりだったのだが―――

「ぶぅー。だったらお兄ちゃんも16歳だから子供だよっ!」

と頬を膨らまし、こちらをジーと見てくる。

(・・・子供、か)

「あぁ、そうだな」

とりあえず話を合わせておいた。

「でもこの指輪・・・ホントきれい。特にこの赤い石っ!お兄ちゃんの瞳と同じ色で・・・すっごく素敵///」

頬を赤く染め、うっとりとした目で指輪を見ている。

しかし正面に座っている少年の瞳の色は彼女と同じ黒だ。

「ねぇねぇ、今日のわたし・・どうかな?」

何か期待を込めたような表情でたずねてきた。

今日の髪型は腰まであるツインテールで服装は白の少し大人っぽいノースリーブのワンピースである。肩の露出で白い肌が日焼けは大丈夫なのかと少し気になったが外では上に袖のあるボレロを羽織るそうだから大丈夫らしい。

「とてもきれいだよ。」

思ったことをそのまま口にした。

「嬉しいっ!!なんかこうしてるとプロポーズの指輪もらったみたいだねっ!」

これ以上ないくらい幸せそうな笑みを浮かべている。こんな笑顔を向けられると―――

「そ、そうか?そうかもしれないな・・・ははは・・」

否定なんてできるわけがない。

「この指輪ずぅっとつけて大切にするねっ!」

指輪を撫でながら言う綾。

『まもなく、成田国際空港へ到着します』

そこで機内アナウンスが流れる。

「そろそろ着くな。早くケーキ食べちまおう」

「うんっ!」

二人ともグラスを手に持ち、同時に唱和した。

「「かんぱい!!」」









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