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7th Sense  作者: freeman
序章:主人公とは
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第一話:後日談

『ハァイ、任務ご苦労様。スカイダイビングは楽しかった?』

散々聞きなれた愉快な口調の声だ。

「あんなの寒いだけだ。風邪引いたらどうしてくれるんだ」

疲れ切った口調で愚痴をもらす。

『まぁそう言わないでよ。『サンプル』の所在を突き止めたとこまではよかったんだけど、なんせアレは軍が極秘裏に開発していた代物だから、万が一事が外部に漏れたらウチの国は批判の的にされちゃうの。そこで証拠湮滅・・・・の必要があったからわざわざアナタに出向いてもらったのよ』

「そんなことは知ってる。で、朝っぱらからなんだ?まさか労いの言葉をかけるために電話してきたわけじゃないよな?」

『察しがいいわね。実は昨日の任務でアナタが使ったマスクがどこにもないって整備の連中が騒いでるんだけど、どこにやったの?」

「ああ、アレね・・・・捨てた」

『・・・マジ?』

「ああ、マジだ」

『なんで捨てたのよっ!アレ一ついくらするか知ってるのっ!?』

「かぶってると邪魔で仕方がなかったんだ。かといって手に持つのも面倒だったし、俺の給料からその分引いていいから。てゆうかもう切っていいか?寝てないんだ」

『・・・・色々言いたいことはあるけど、とりあえずこれだけは伝えておくわ。次の任務が決まったわ』

「早いな。で、次は何させるんだ?」

『任務内容は――――――以上。何か質問は?』

「・・・・なぁ、それマジ?」

『ええ―――マジよ』

女は含み笑いを浮かべながら言った。



―――8月19日、午前9時45分―――

通話を終えて液晶画面の表示を一瞥すると適当にスマートフォンを放り投げてまた布団を被る。

現在、アメリカ合衆国・ペンシルベニア州・フィラデルフィア郊外にある二階建ての一軒家。

家に着いたのは9時半頃だった。疲れていたので帰りの機内で寝ようとしたが、けたたましいエンジン音や飛行中の揺れでどうも寝つけなかった。やっと自室のベットで寝られるとシャワーも浴びずに布団を被ったとき、見計らったようにスマートフォンのバイブレーダーが鳴った。

相手は仕事の上司。その上司から次の任務について聞かされたわけだが・・・・その内容を聞いたら眠気が失せてしまった。

「・・・とりあえずシャワー浴びるか」

立ち上がり自室を後にする。一階の脱衣所へ入ると着ているものをその場に脱ぎ散らかし、浴室に入る。

シャワーのコックをゆるめて頭から温水を浴びる。

「・・・あいつに伝えないといけないな」

ボーとしてシャワーを浴び続けていると

「お兄ちゃん、帰ってきたの?」

ドアの向こうの脱衣所から声が聞こえてきた。

「あ・・ああ、さっき帰ってきたんだ」

「そうなんだぁ~お疲れ様。おかえりなさい」

「ああ、ただいま」

「・・・私もシャワー浴びようと思ってたんだけど・・・・」

「ああ、わりぃ。俺はもう出るから少し待って―――」

「―――私もいっしょに入っていい?」

「―――はぁっ!?」

―――バンッ

「―――ッ!?」

直後、勢いよくドアが開いた。

「―――ちょっ、お前・・・」

「ふふふ♪」

そこにいたのは全身にバスタオルを巻いた少女だった。白く透き通った肌に華奢な体つき、身長は少年より頭一つ分ほど低い。腰の辺りまで伸ばしていて、いつもはツインテールにしている、少し茶色味のかかった柔らかそうなストレートの黒髪を今はほどいている。パッチリと大きく、透き通った黒い瞳に小さく形のきれいな鼻、そしてかわいらしい笑みをこぼしている口元。タオルで目視できないが体はまだ発展途上といったところだろう。だがそこには間違いなく誰もが認めるであろうとてもかわいらしい印象を持った美少女がいる。

男ならば誰もが興奮するシチュエーションだろう―――そう、それがでなければ―――

「・・・なんで入ってくるんだよ、あや

面倒そうな表情で呟く。

「えー!なにその反応っ!?リアクション悪いよぉ!」

ぷくーと頬を膨らませる妹の綾。

「・・・―――ッ!?」

すると少年を見ている彼女の目線は徐々に下がっていき途端、顔を真っ赤にして声を上げた。

「な、ななななんでタオル巻いていないのっ///お兄ちゃんっ!」

「・・・逆になんで巻くんだよ」

思わず呆れてしまう。

「い、いいからっ!早くこれ巻いてっ!」

目元を手で覆い、顔を逸らし少年にタオルを突き出してくる。

「・・・おまえ、ホントなんで入ってきたんだ・・」

そう言いながらもタオルを受け取り、腰に巻く。

「も、もう巻いた?」

「ああ、巻いたよ」

返事をすると少女は目元から手を放し、ゆっくりと少年の方を向く。まだ顔は赤いままだ。

「―――じゃあオレは出るよ」

そう言って浴室を出ようとすると―――

「ま、待って!!」

呼び止められた。

「ん?なんだ?」

「そ、そこに座って!背中流してあげるから・・・」

風呂椅子を指さして言う。

「いや・・・いいよ別に」

「いいからっ!!」

声を張り上げ、目をつり上げて少年をじーと見てくる妹。このパターンは黙って言うことを聞いた方が後で面倒事が増えないことを学んでいる少年であって―――

「・・・・わかったよ」

諦めたように言われた通り風呂椅子に座ると正面の鏡に映る少女の表情がぱぁっと明るくなった。

石鹸が泡立っているタオルで丁寧に背中をこすりながら嬉しそうな声で話しかけてきた。

「なんかこうしてると昔を思い出すね。小さいころよく二人で流し合いっこしてたよね」

「そうか?」

「もうっ!忘れたの?」

「う~ん。記憶にないな」

「え~!?うそ!?ありえないっ!」

「なんで責められなきゃいけないんだよ。そんなことよりほら、代わってやるよ」

「えぇっ!?」

「だから背中流してやるって言ってんだ。昔もよくやってたんだろ?」

鏡を見ると顔をほんのり赤く染め、恥ずかしそうな表情をしている少女と目が合う。

「そ、その、嬉しいけど変なトコ・・・さわらないでね?ま、まだそこまで心の準備が・・・///」

最後に何かボソボソ呟いてたが背中を流しているシャワーの音でかき消された。

「さわるかよ―――あ・・・」

そこで突然あることを思い出した。

「どうしたの、お兄ちゃん?」

「いや、実はな綾、お前に大事なことを伝えなきゃいけないんだ」

くるりと体を反転させ、正面から少女の瞳を見据える。

「え?な、なに?」

少女は顔をほんのり赤く染めたまま俯き、落ち着きない様子でたずねてくる。

「ホントは後で言おうと思ってたんだが、もうここで言っておこうと思ってな」

(今のこいつはけっこう機嫌が良さそうだからな)

「そ、それって・・・・!」

急に顔をばっとあげて期待の籠った目でこちらを見つめてくる少女。

「実はな・・・」

「う、うん・・・」

恥じらいと期待の混ざったような表情の少女だったが、少年の次の一言でその表情が崩れた。



「―――来週から日本で暮らすことになった」


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