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7th Sense  作者: freeman
第一章:学園入口
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第十八話:クラスメイトと反撃

「ねぇ雅くん、試験どうだった?」

「ん?」

声を掛けられたのでそちらの方を向くと、2人の女子生徒がこちらを見ていた。よく見ると、彼女たちは昨日最初に話しかけてきた2人だった。

今話しかけてきた、背の低い方の女子生徒は茶髪のボブヘア、もう一人も茶髪で毛先に軽くカールのかかった髪型をしている。二人とも年頃の女の子らしい、おしゃれに気を使っているような髪型をしている。

学校が再開した2日目、今日は一日中習熟度試験があり、たった今終わった4限目まで国語、数学、英語、地歴公民(地理・歴史・公民)の試験があった。

「んー、まぁボチボチと言ったところかな・・」

正直な感想をそのまま述べた。

「へー、そうなんだぁ!あ、ゴメン、そういえば自己紹介がまだだったよねっ?私は木村結衣きむら ゆい。よろしくねっ!」

活発そうな雰囲気のある、ボブヘアの女子生徒が言った。

「私は来栖加奈くるす かなです。よろしくねっ」

木村という女子生徒より少し控えめな雰囲気の来栖という女子生徒。

「雅式だ。よろしく」

「あはは、もう知ってるって。てゆうかこの学校で雅君のこと知らない生徒なんていないよ~」

木村という女子生徒が笑いながら言ってきた。

「そうだよ、雅君はこの学校を守ってくれた“ヒーロー”なんだから、みんなの注目の的なんだよ」

来栖という女子生徒もニコリと笑いかけてきて言う。

「“ヒーロー”って・・・・」

(守ったつもりはないんだが・・・)

ふとそんなことを思った。

「もう昨日から学校中の生徒が雅君を一目見ようとこの教室に押しかけてるんだから」

「それにほら、今もみんな雅君のこと見てるよ」

「え?」

あたりを見回すと、二人の後ろにいる数人の女子生徒をはじめ、全員の視線がこちらに向けられていた。

「・・気づかなかった・・・」

とゆうより視界にすら入っていなかった。

「でもホント、同じクラスになれてラッキーだよ!」

「そうだよね。私たち運がいいよ♪」

その言葉に後ろの女子たちもウンウンと深く頷いている。

「え?・・・なにが?」

「雅君と同じクラスになれたことだよっ!」

「・・・なんで?」

「・・・雅君ってひょっとして天然?」

「天然?・・・なにそれ?」

「だって考えてみてよ。第七感関係の職業に興味のある生徒たちばっかりのこの学校にあの・・雅式がいるんだよっ!しかも同じクラスに!」

そう言って俺に向かってビシッと指さす木村さん。

「へ、へえ・・・・そうなんだ。木村さんと来栖さんも第七感関係の仕事に?」

「うん!一応日本支部めざしてるんだぁ」

「まぁ、まだまだ先のことだけどね」

「へぇ、頑張って」

適当にそう言っておいた。

「ありがとっ!まぁそんなわけで、雅君はこの学校の生徒にとって雲の上の憧れの存在なんだよ~だってたった9歳・・・・・でアメリカ本部の最高戦力の一人になったとかスゴすぎだよっ!どんだけすごいか想像もつかないよ!」

興奮した様子で声を張り上げる木村という少女。

「「「だよねぇ~」」」と後ろの女子たちも声をそろえて言っている。

「ねぇねぇ、アメリカ本部があるフィラデルフィアってどんなところなの?」

来栖さんがたずねてきた。

「ん~、確か学生人口が国内で最大とか言ってたな。むこうにもこの学校みたいにサオスを目指している生徒のための学校があるって聞いたし」

「あ、それ聞いたことあるっ!やっぱりむこうの学校のほうがレベルとか高いのかな?」

「どうだろうな、むこうの学校とか行ったことないからよく分からないんだ」

「そ、そうだよね。なんかしつこく聞いちゃってごめんねっ」

申し訳なさそうに言ってきた来栖という少女。

「・・いや、謝らなくていいよ」

「おい、来栖、木村。俺たちにも話させてくれよぉ。女子たちが囲んでるせいで話せねぇじゃねぇかよ!」

そう言って式を囲んでいる女子たちをかき分けて式の前に現れたのは、これまた明るく活発な雰囲気のある黒髪短髪の男子生徒だ。その後ろにゾロゾロと数人の男子生徒たちがいる。

「俺は長谷川凌空はせがわ りくっていうんだっ!リクって呼んでくれ。よろしくな!」

ニカっと笑いかけ、握手を求めてきた。

「なら俺も式でいい。よろしく」

―――ガシッ

そういって差し出された手を握った。

「いぇーい!握手第一号だぜっ!」

(・・・元気いいな・・)

「ちょっと長谷川っ!なに馴れ馴れしく絡んでんのっ!?アンタはどっか行っててよ!」

そんな若々しい少年・リクに抗議の声をあげた木村結衣。周りの女子たちも「そうよ!」「邪魔だからどっか行って」「てゆうか消えて」などとなかなか容赦ない罵声を浴びせている。

「う、うるせぇな!お前らこそ、なに急に化粧なんかしてんだよ?今まで化粧なんかしてなかっただろうが!」

その一言で一瞬「うっ・・・」とひるんだ女子一同。

「・・・ははーん、さては少しでも自分をよく見せて式に付け込もうって魂胆だろ?式がお前らのことなんか相手にすると思ってんのかぁ?」

バカにしたような口調で言う少年リク。

(おいおい、そんなこと言ったら・・・・)

「う、うっさい!この女の敵!ブサ男!てゆうかなに雅君のこと名前で呼んでんの?ホント馴れ馴れしいんですけどー!」

「ぶ、ブサッ!?おい木村!お前今なんつったぁっ!?」

ワー、ワー、ワー!

少年・リクvsクラスの女子たちのファイトが始まった。だが始まる前から勝敗は決まってるようなものだが・・・

その様子をただ呆然と見ていると横から声を掛けられた。

「リクがうるさくてゴメンね、僕は天田蒼あまた そう。僕のことも名前で呼んでもらって構わないから、名前で呼んでもいいかな?」

男子にしては身長が低く、少し長めの茶色い髪に非常に落ち着いた雰囲気の少年だ。

「ああ、よろしく、蒼」

「こちらこそよろしくね、式」

そう言って握手を交わした。そんなことをしている間にリクと女子たちの戦いが激化していた。

「・・・・・」

「ああ、あれならいつものことだから気にしなくていいよ。見苦しいモノを見せてしまって悪いね」

「・・・蒼っ!そんなこと言ってないで助けてくれ・・・・」

どうやら式の予想通り、女子の勝利で終結したようだ。リクは心が折れたようなグッタリとした顔をしている。

「リクが女子に喧嘩を売るようなこと言ったのがいけないんだよ。式もそう思うよね?」

「そうだな。女には気を使わないと、ロクな目に遭わないぞ」

直後、3人の女の顔が頭に浮かんで思わず身震いがした。

「ほらみなさい、長谷川。これがアンタと雅君との違いよ」

勝ち誇ったような顔をして言う木村さんと、その言葉に便乗してさらにリクに罵声を浴びせている女子たち。

「・・・・」

何か見ていてるこっちがつらくなってきた。

「う~、チクショウ・・・好き放題言いやがって・・・まあ確かに式は女にモテるだろうなぁ~、なんつたってルックスがハンパねぇからな」

改めて式の顔を見て言うリク。その意見には女子たちも賛同した反応をしている。

「たしかに、式の容姿はちょっと近寄り難いくらい整っているよね」

さらっと蒼がそう言った。

「そうか?男の顔なんてどれも同じようなもんだろ?だってみんな顔の真ん中にあるの鼻だろう?」

あっけらかんとした様子で言った式。

直後、教室中が爆笑の渦に巻き込まれた。

「ははは!式っておもしれぇ!」

「あはは、ホント、なんか変わってるね!」

「・・・式、君ってユーモアがあるね」

クールな印象の蒼まで小さく笑っている。

クラス中の生徒たちが楽しそうに笑っていた。

(・・・なんだ?なんか俺おもしろいことでも言ったか?)

そう疑問を感じずにはいられなかった。

「あー、ウケる・・・でも正直言ってモテるだろ?昨日だって1年の美少女二人と一緒にいたじゃねぇか、くー、羨ましいぜ!」

ニタニタ笑いながらリクが言う。

「昨日・・・?ああ、綾と美紀のことか・・・あれは妹と知り合いの子だ」

「へぇ、妹がいるんだぁ?もしかしてツインテールの方の子?」

来栖さんがたずねてきた。

「ああ、あれが妹の綾」

「もう一人の眼鏡の子も可愛かったけど、妹さんも超可愛いよね!絶対男子から人気があるよ!」

「・・・まぁそうだろうな。でも二人だって魅力的だと思うぞ」

明るく活発そうなスポーツ少女のイメージの木村結衣に、落ちつた雰囲気でおしとやかなイメージの来栖加奈。2人とも男子から人気があるのだろうと思いながら呟いた程度だったのだが―――

「「・・・・・・」」

突然俯きだした木村さんと来栖さん。

(ん?・・・・なんかまずいことでも言ったか?)

そんなことを思っていると突然―――

「ぬぁーにしてるのかなぁ?お兄ちゃん?」

「―――ッ!」

背後から凍えるような冷気を感じさせる声が聞こえてきた。

「・・・」

ゆっくりと振り向くと、弁当箱を持っている綾と美紀がいた。

「一緒にお弁当食べるって約束したよねぇ?お兄ちゃん?」

「・・・はい・・」

「なら早く行こ・・・話はそこでみっちり聞くから」

「・・・はい・・・悪い、じゃあそういうわけだから・・・」

そう言って、そそくさと教室を出て行った式。

「・・・大変そうだな」

「そうだね」

リクの意見に蒼も同意した。



世の中ってやつは不公平なことばかりだ。

先ほど女子生徒たちの気に障ることを言ってしまったリクというクラスメイトがいたが、結局彼は自身にそのツケが回ってきて、女子生徒たちからの罵声によって辱めを受けることになったのだ。

それは納得できる。だが―――――

(何もしていない俺がなぜこんな辱めを受けなければいけないんだ・・・・)

「は~い、お兄ちゃん、あ~ん♥」

「・・・あ、あむ」

パクリ、もぐもぐ。うん、美味い。美味いのだが・・・・・

「・・・なぁ綾、そろそろ勘弁してくれないか?このまま続けると俺の精神がもたない」

「ダ~メ!今日はお弁当全部食べ終わるまでわたしが食べさせてあげるんだからっ♪」

「・・・・でもこの体勢は色んな意味でキツいんだが・・」

「こんなの夫婦かぞくのスキンシップじゃんっ♪はい、あーん♥」

そう言って再びミートボールを俺の口元へ運んできた綾。

「・・・・・」

今の俺が置かれている状況を端的に述べると・・・・ただの変態だ。

妹を自分の太ももの上に乗せて、弁当を食べさせてもらっている変態兄貴と思われても仕方がないだろう。

「・・・・」

先ほどから俺たちの様子をジッと見ている美紀の視線が俺の心に突き刺さる。

現在、俺たち三人は本来なら生徒は出入り禁止の屋上で昼食をとっている。なぜそんなところで食事をとっているのかというと、俺たちが向かうところ全てに人だかりができてしまって鬱陶しいということで、俺の“力”を使って屋上へ通じる施錠されたドアを消した・・・

美紀は「それはまずいんじゃ・・・・」と心配そうな顔だったが、「後でちゃんと元通りにするから」と言うと納得してくれた。

そしてコンクリートの床に小さなビニールシートを敷いて食事にありつこうとしたときだった。

『ね~ぇお兄ちゃん、下が硬くて座るとおしりが痛いから、お兄ちゃんの膝の上で食べていい~?』

突然綾が甘えた声そんなことを言い出した。

『・・・わがまま言うなよ。美紀だってちゃんとシートの上に座ってるだろ?』

行儀よく足を崩して座っている美紀。

『お前も美紀を見習え』

『・・・ならお弁当あげない・・・』

『・・・やります、やらせて下さい・・』

妹に脅された。



そんなわけで、足を伸ばして座っている俺の太ももの上にまたがって座り、向き合った体勢で食事をしていた俺と綾なのだが、どうやら彼女は先ほどの教室でのことを怒ってるらしく、『罰ゲーム』ということで俺は妹に飯を食べさせられるハメになってしまった。

人前でこんな体勢で食べさせるなんて、恋人同士でもそうはやらないだろうに・・・

「ごちそうさま。おいしかったよ、綾」

―――ポンッ

そう言って綾の頭を撫でる式。綾は顔をほんのりと染めて気持ちよさそうに目を細める。そしてその視線を一度美紀へ向けた。まるで自分たちの仲睦まじい様子を見せつけるかのように―――

「・・・・」

その瞬間、今まで耐え凌いでいた美紀が反撃に出た。

「式君、クッキー作ってきたんだけど・・・食べない?」

「え?マジ?食べる食べる!」


今まで式と何度か食事を共にしてきたことで、美紀はある法則を見つけ出した。

その1 式は食事量が普通の人間よりかなり多い。

その2 式は食後、必ずと言っていいほど甘いモノを口に入れる。

その3 式は「食べる?」と言われたら、なんでもおいしそうに食べてくれる。

女性にとってこれほど料理の作り甲斐のある男性はそういないだろう。

現に自分の作った料理をおいしそうに食べてくれる彼の顔を眺めているだけで自分は幸福で満たされてしまうのだから。

ここで現状を確認すると、確かに綾が式のために用意した弁当の量は2人分は軽く超えているだろう。この時点で『法則その1』は満たされてしまったが、まだ『その2、その3』が残っている。攻めるならここしかない。

(・・・女は度胸!)


もぐもぐもぐ

「ど、どうかな・・・?」

「・・・美味い・・・これ美味いよ!」

そう言うと物凄い速さで私のクッキーを食べていく式君。

日頃は滅多に笑わない彼だけど、食事の時だけは無邪気に食べる姿を見せてくれるのだ。今も夢中で私の作ったクッキーを食べてくれている。

自慢ではないが、料理の腕にはそこそこ自信がある。この“武器”で彼を笑顔にできる。その笑顔を見られるだけで今は満足だ。

私には綾ちゃんみたいに、あんな大胆なことはできないけど、彼に対して抱いてるこの気持ちは本物だ。


―――8年前のあの日から―――


今はこんなことしかできないけど、いつか彼の隣に立っても恥ずかしくない女になりたい。

ふとそんなことを考えていると視線を感じた。

「・・・・」

綾ちゃんがこちらを見ていた。

それはいつものお友達としての目ではなく、女としての目だった。

いつもの私ならその眼光に怯んでいたと思う。でも――――

このとき私はその目を正面から見返した。

そして私たちは互いに小さな含み笑いを浮かべた。

負けないよ、綾ちゃん。






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