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7th Sense  作者: freeman
序章:主人公とは
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第九話:遅めのランチ

ズルズルズル

「あー、うめ」

ラーメンをすすりならが呟く式。

「・・・・」

そんな彼を真正面から見つめている結理。

「結理さん。俺の顔、何かついていますか?」

「えっ!?い、いえ、ごめんなさい・・・」

模擬戦を終えた二人は日本支部の食堂で遅めの昼食をとっている。

式はラーメンを、結理はコヒーだけを注文した。

正面の席でおいしそうにラーメンを食べている式だが、対する結理はと言うとまだコーヒーに一口も手をつけていない。先ほどから彼女の思考はあることに向けられている。

(さっきの模擬戦、最後に彼が使った能力ちからは一体・・・・)

消えたかと思えばいきなり背後に現れた。そんなことが可能なコードなんて私の知っている限り聞いたことがない。

もともと彼には謎が多すぎる。

―――雅式―――

誰でも一度は聞いたことがある名前だろう。8年前の旧北朝鮮による日本への大量ミサイル攻撃。それを機に彼の名は世界中に知れ渡った。

だがその能力や個人情報についてはアメリカ本部の機密事項で全く公にされていない。

サオス四機関は互いに情報を共有し合い、協力することもあるがそれぞれが独立しているため、互いに外に漏らしたくない秘密もあるようだ。

現にアメリカ本部から日本支部へ伝えられた彼についての情報は顔写真一枚、年齢と一つ下の妹がいるということだけだった。

おそらく日本支部で彼のことをよく知っているのは、支部長くらいなのだろう。

(ホント、謎が多いわ・・・)

「どうしたんですか?さっきからボーとしていますけど、コーヒー冷めますよ」

「え?ええ・・そうね」

そう言われてあわててコーヒーを一口飲む。

「・・・さっきの模擬戦のことですか?」

「ご、ごぶっ!」

いきなり的を射た一言に思わず飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。

「・・・ま、まぁね」

「結理さんが今なにを考えてるのかは大体想像がつきます。まぁ安心してください。そのうち実戦になったら嫌でも・・・知ることになると思いますから」

そう言い、またラーメンを食べ始める式。

「・・・・」

結理は何も言葉を発することができなかった。

そんな二人の間に会話がない状態が続いていると―――

「―――あら?結理じゃない」

「「―――?」」

不意に、後ろの方から声が掛かってきた。振り向くとそこには食事を乗せたトレーを持っている茶色のショートヘアの女性がこちらを見て近づいてきた。

「あ、ホントだ」

「なんだか久しぶりですね、先輩」

続いて同じようにトレーを持っている、彼女の両隣にいる肩まである黒髪の女性、茶色いロングヘアの女性も結理の方に近づいてくる。

彩香さやか恵美えみあゆみ―――ホント、何だか久しぶりね」

三人を見て思わず笑顔を浮かべる結理。

「あ!彼氏と食事中だった?ゴメンゴメン邪魔しちゃった?」

いらずら口調で言う、黒髪の恵美と呼ばれた女性。

「にしても・・・ずいぶん若いじゃない。こんな子、ウチにいたかしら?」

いまだラーメンを食べ続けている式をジロジロ見ながら言うショートヘアの彩香と呼ばれた女性。

「て、てゆーか超イケメンじゃないですか!あんな上玉一体どこで見つけたんですか!?」

式を見て興奮しながら結理に耳打ちしてくるロングヘアの歩と呼ばれた女性。

「ちょ、ちょっとあんたたち!」

彼女たちの言葉を聞いて慌てる結理。

「ねぇ、君歳いくつ?」

式に声を掛ける彩香。

「え?17ですけど・・・」

「結理!あんた17の子供に手を出すとか―――もはや犯罪でしょ!」

結理に怒鳴る恵美。

「い、いやだから違―――」

「―――てゆーか、なんでこんなところに子供連れ込んでいるんですか!バレたら大目玉じゃ済みませんよっ!」

誤解を解こうとする結理だが歩の言葉にさえぎられた。

ズルズルズル―――ッ

そんな彼女たちのやりとりに耳も傾けずラーメンを食べ続ける式。

「君もどうしてこんなオバサン・・・・と付き合ってるの?君のルックスなら若い子にも人気でしょう?」

「―――はっ!もしかして金目当てとか!結理、あんた結構貢がされんじゃないの?」

「先輩!あの子私の超タイプなんですけど、くれませんか!?」

ガヤガヤガヤ・・・

とうとうそれぞれが勝手なことを言い始める三人。

―――カチンッ

結理の堪忍袋がとうとう切れた。

「あんたたちっ!いい加減にしなさい!同僚が失礼なことを言って申し訳ありません!」

立ち上がり敬語口調で式に頭を下げる結理。

「別にいいですよ。気にしてませんから」

ラーメンを食べながら適当に言う式。

「え?結理、あんた何謝ってるの?」

「てゆうかこの子誰?」

「まさか・・・職員なわけないですよね?」

結理の態度に?を浮かべる三人。

「あんたたちも謝りなさい!彼はアメリカ本部からこちらへ派遣されてきた雅式序列第三位―――名前くらい聞いたことあるでしょ?」

「「「・・・・・」」」

その言葉を聞いて三人の顔は真っ青になった。



「「「ホントに申し訳ありませんでした!」」」

食堂に三人の女性の声が響いた。

「・・・いや、謝らないで下さい。気にしてませんから」

そう言い二杯目のラーメンを口にする式。

あの後、三人が顔を真っ青にしながら茫然としていると式が立ち上がり、どこかへ行ってしまった。「怒らせたかな」と思った結理は三人を自分の真向いの席に座らせ、説教しようとしていたところに二杯目のラーメンを持った式が帰ってきたのだ。先ほど座っていた席は恵美が座っているので現在は結理の隣でラーメンを食べている。

ガクガクガクッ・・・

そんな式を見ながら怯えている様子の三人。

(まぁ、無理もないか・・・)

形式的にはサオス四機関は互いに同じ権力を持っていて上下関係というものはないが、アメリカ本部は他の三機関に比べて圧倒的と言える戦力の高さから発言力も強く、四機関のリーダー的な存在である。そのアメリカ本部の中でも最高戦力の一人・・・・・・・に数えられている式と、まだ下っ端の結理たち四人とでは天と地ほどの地位の差があり、そんな自分たちのはるか上の上官に非礼をはたらいたので顔が真っ青にもなるだろう。

「あんたたちねぇ、式君だったから良かったけど、これがもし他の人だったら下手したらクビよ―――とりあえず、自己紹介しなさいよ」

あきれた様子で言う結理。

「結理の同僚の林彩香はやし さやか補佐官です。先ほどは申し訳ありませんでした。」

「同じく同僚の大槌恵美おおつち えみ補佐官です。非礼をお許しください。」

「あ、あの!後輩の渡辺歩わたなべ あゆみ補佐官です。本当にすみませんでした!」

頭を下げる三人。こんな状況では式もラーメンを食べ辛いので―――

「もう謝らないでください。ホント気にしてませんから。上下関係とか気にしないんで気軽に名前で呼んでください。あと敬語もやめてもらえたら嬉しいです。俺はアメリカ本部からきた雅式といいます。結理さんにはこちらで色々お世話になっているんです。よろしくお願いします」

(((・・・はぁ)))

式に言葉を聞いて安堵しながら顔を上げる三人。

改めて見てみると、三人とも結理に並ぶなかなかの美人だ。

「なら私のことも名前で呼んでね、式君」

そう言ってきたのは彩香だ。茶髪のショートで大人っぽくクールな雰囲気の女性だ。

「まぁ、よ~く考えれば結理にこーんなカワイイ彼氏ができるわけないわよねぇ」

そう切り出したのは綾の隣に座っている恵美。肩まである黒髪でやんわりとした明るい感じの人だ。

「・・・ちょっと恵美―――それ、どういう意味かしら?」

「そのままの意味だって(笑)ねー式君♪」

「ちょっと恵美、あんた馴れ馴れしいわよ」

「えっ?結理もしかしてやきもち妬いてる?」

「な、なに言ってんの!そんなわけないでしょっ!」

ズル、ズルズルッ・・・

二人がそんな言い合いをしている中、黙々とラーメンを食べ続ける式。

「―――あ、あの!」

「・・・はい?」

すると先ほどから彼の正面の席に座っている歩が意を決したように声を掛けてきた。

―――コト・・

箸を止めて正面から歩を見る式。

「私のことも“歩”って呼んでね、式君♪」

茶髪のロングヘアの彼女は大人っぽいというより可愛らしいといった感じのほうが近い女性だ。

顔をほんのりと赤くし、熱の籠った視線を式に向ける歩。

「わかりました、歩さん」

「・・・///」

その返事をきいて恥ずかしそうに笑みを浮かべる歩。

その様子を見ていた三人は心の中で呟いた。

(((あ・・・落ちたな)))



「・・・それにしても式君、よくそんなに食べれるわね・・・」

信じられないものを見るような目で式を見る結理。彩香、恵美、歩も似たような視線を向けている。

「そうですか?いつもこのくらい食べますよ」

現在、食事を終えた三人と結理は雑談していて、式は三杯目のラーメンをもくもくと食べていている。

「でも私の家で食べたときは普通の量だったじゃない?」

その言葉を聞いた歩が「せ、先輩の家で!?」と驚愕した様子で呟いた。

「いつも朝食と昼食は一度に済ませていますから」

と不健康なことを言う式。

「・・・式君、あなたホントに生活習慣を見直す必要があるわよ。明日から私が毎朝起こしにいくわ」

そこでまた歩が「ま、毎朝起こしにっ!?」と反応する。

「では上官命令です。起こしに来ないでください」

「そんなんじゃいつになっても仕事ができないじゃないっ!」

「そのために結理さんが参謀役・・・としているんでしょ?敵の所在を教えてもらえたら、あとは俺が一人・・で片づけるんでそっちの仕事のほうは任せます」

「な・ん・ですってぇ・・・?」

その言葉を聞いてムカッときた結理。

「何を言ってるのかしら?私とあなたはバディを組んでるのよ。戦闘時は私も戦うに決まってるじゃない」

「そっちこそ何言ってんですか?そんなの足手まとい・・・・・だから勘弁してください」

「―――ッ!」

そこで結理のなかでブチと何かが切れた。

「このガキー!!ホンット可愛くないわね!ちょっと顔が良くて強いからって調子に乗ってんじゃないわよ!」

ギューッ

そう言って式の両頬を思い切りつねる。

「い、痛いでずっで!やめでぐだざい!まだラーメン食っでる途中!」

「黙らっしゃい!明日からその腐った性根を叩き直してあげるわ!」

「今の聞ぎまじだ?この人、上官に暴力振るってる上に暴言まで吐いでる!」

「こんな時だけ上官振るなー!」

ギャー、ギャー、ギャー

そんな二人のやりとりを見ている三人はと言うと―――

(・・・仲良いわね、アンタたち・・・)

(アハハハ!この子、超ウケるっ!)

(結理先輩―――私、負けませんよ!)

上から彩香、恵美、歩の順であった。








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