今日で赤ずきん辞める!
赤ずきん、と呼ばれる少女がいた。もちろんあだ名である。
大好きな祖母からもらった赤ずきんをずっと被っているのでその名がついた。いつしか、両親ですら赤ずきんと呼ぶようになったあわれ……可愛らしい少女である。
本人としてはそろそろ赤ずきんを卒業したいと思っている。
「赤ずきん! 赤ずきん、ちょっと来てちょうだい」
「なに?」
今度は何だめんどくせー。
思いながら赤ずきんが返事をすると、母親が赤ずきんと呼びながら笑顔でカゴを差し出した。赤ずきんは時折思う。
この母親……自分の子の名前を忘れているんじゃなかろうか?
「おばあちゃんが風邪ひいてしまったそうなの。このケーキ持ってお見舞いに行ってこい」
「はい」
めんどくせー。
再び思いながら、命令口調の母親には逆らえず、赤ずきんはカゴを受け取った。にこにこと笑いながら命令されるというのは、中々に怖い。普段は厳しい赤ずきんの父親もこの時の母親には逆らえないので、決して自分の意思が弱いとかそういうのではない。
赤ずきんは誰にともなく心の中で言い訳をした。
そんなこんなで赤ずきんは家を出た。村を歩くと村人たちが「赤ずきんちゃんどこ行くの?」と口々に聞いてくる。
お前ら私の名前覚える気ないだろ。
心の中でのぼやきは一切顔に出さず、赤ずきんは笑顔で「おばあちゃんのお見舞いに行くの」と応えた。そうするとみんな微笑ましそうな顔をして「まあ偉いわね」とお菓子をくれる。最近はお金が欲しいと思い始めている赤ずきんだが、さすがにそんな図々しいことは言わない。
そんなこんなで赤ずきんは村を出た。森を歩いていると鳥達が「赤ずきんだ赤ずきんだ」とさえずっているように聞こえてくる。
私相当疲れてるな。
年齢に似合わぬため息をつき、赤ずきんは「それにしても、どうしておばあちゃんは村から外れたところに住んでるのかしら。はぶられたのかな?」と長年の疑問を口に出す。村の人たちは笑顔で祖母のことを語るが、その裏では何かしら思うところがあるのかもしれない。だって誰も村の方においでとは祖母に言わないのだ。
人間社会って怖いね。
恐怖で身を震わせながら赤ずきんが森を歩いていると、
「赤ずきんちゃん、赤ずきんちゃん、どこに行くんだい」
なんと狼が話しかけてきました。
赤ずきんは、目をこすりました。どう見ても、何度見ても狼です。背後を見てみましたがチャックはありません。中の人などいない!
しゃべる狼など珍しい。見世物小屋にでも売れば高く売れる!
赤ずきんの目が輝きました。狼がちょっと退きました。
――売ったお金でこんな村おさらばして、赤ずきんも卒業よ!
「ええっ? ちょ、話ちが……アッーーー!」
どうして母親からも赤ずきんと呼ばれるのか。どうして祖母がそんな遠いところにいるのか。どうして狼がしゃべっても疑問に思わないのか。
長年の疑問をぶつけただけの作品。
ところでこういうのって二次創作に入るんでしょうか?
しかしそれにしても今回はパンチが弱い。赤ずきんのキャラが掴みきれてない。コメディーは本当に難しいですねぇ。
そして最後に一言。
「赤ずきんつえー」