女王と龍神 懐古
玉座がある王の間に、四人で向かう。しばしの間のみ許された、平和な時間。子供の頃の思い出が、色鮮やかに蘇る……。
「そう言えば、ここで行方不明になった姫の帰りを待ったことがありましたね……」
城の裏山が見える渡り廊下にさしかかった所で、ふと春蘭がそう言って微笑んだ。
「あったな、そんなこと。なにしろ、ガキの頃から人騒がせな姫だったからな」
「柳鏡、一言余計だよ!」
景華が赤くなってむくれるのを見て、三人が苦笑する。
「そう言えば、あの時は確か柳鏡が見つけて来ましたよね……」
「そうでしたね。暗くなってから急に飛び出して行ったと思ったら、その少し後に姫を背負って戻って来たんでしたよね? あの時、どうやって姫を見つけたの?」
趙雨の言葉を受けて、ふと春蘭が疑問を口にした。すんなりとその言葉が出て来たことから、それを長年ずっと不思議に思っていたに違いない。
「多分あの時、チビ姫が喚んだんだよ、俺のこと。それで居場所がわかったから、仕方なく迎えに行ったんだ」
「迎えに来てなんて頼まなかったけどね! 大体、呼んだって聞こえる訳ないでしょ?」
相変わらずの喧嘩をして見せる二人に、春蘭も趙雨も苦笑が漏れる。
「あんた、よく言うな。見つけてやった時には怖かったー、なんて言いながらピーピーと泣いてたくせに。おまけに足挫いたって言うからおぶってやったら、人の服に涙だけじゃなく鼻水までつける始末だったじゃねえか」
「う……」
景華が反論に詰まる。春蘭は、そろそろ止めに入ろうかと考えていた。
「それに」
柳鏡の言葉にはまだ続きがあったようで、全員の視線が彼に注がれた。景華は、口を尖らせて文句を言いたそうにしている。
「あんたの喚び声は、よく通るんだよ。まったく、どこにいたって聞こえるんだから、始末に終えない」
趙雨と春蘭は、ほっと胸を撫で下ろした。どうやら、一年という月日は彼らに大きな進歩を与えたようだ。
楽しい時はあっという間に終わりを告げ、気付けば彼らは王の間の前に立っていた。景華が、その手で扉を開く。
「ここに……皆に来てもらおうか。ここが……一番いいよね……?」
「ああ……」
景華の言葉に柳鏡が頷き、廊下に出て腰に提げていた角笛を吹いた。これは、城での戦闘で彼らが勝利を収めたという合図。同時に城の衛兵たちは、城から聞き慣れない音の角笛が聞こえたことで、敗戦を知ることになる。後は、皆がこの城に辿りつくのを待つだけだ。




