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爆弾陛下と龍神 希薄

「あ、そっか。だから公式の場所だけは敬語を使うようになったのね、柳鏡」

「……」

 あまりにもあっさりとした反応……。今更真実を聞かせたところで、何の意味もない。何しろ、自分にわがままを叶えてもらうのは当たり前、と思っているような彼女だ。何らかの見返りを期待した自分が馬鹿だったのだ。

 相変わらず、彼の期待を踏みにじることは、彼女の得意技だ。

「あ、その日のことも日記につけてあるかもよ。うーんと、春蘭の誕生日の次の日、だったっけ?」

「おい、重いからそろそろ降りろ……」

 彼の深い想いに対する言葉は、一切なし。まあ、彼女らしいと言えば彼女らしいが……。

 そして、彼はいい加減足がだるくなってきていた。彼が胡坐をかいているその上に彼女が座っているのだが、そろそろ疲れてきた。自分から、彼女にそこを指定したのだが……。

「うん、ちょっと待ってね……。あ、あったよ、これでしょ? 読んでみて!」

 そう言って彼の胸にその背中を預けて、日記帳を手渡す。降りる気は、なし。いや、自分がどこに座っているのかも、おそらく彼女は覚えていない……。柳鏡がそれを受け取って、溜息をついてから読み始める。

「十三歳、四月十三日。今日は、春蘭が城に遊びに来てくれました。でも、昨日成人した彼女は、趙雨が成人した時と同じように私に敬語で話すようになっていました。寂しいです。柳鏡も後一年と一カ月で成人します。彼は、敬語は使わないそうです。そうだよね、柳鏡に敬語なんかで話されたら、気持ち悪くて死んじゃう! ……ほぉ、いかにもあんたが書きました、っていう日記帳だな……」

「えへへ……」

 照れたように笑う彼女に、間髪入れず突っ込みを入れる。

「いや、褒めてねえし……」

 それにしても、かなりの紙の量だ。一体、彼女はいくつの時からこの日記をつけているのだろうか?

「重いでしょ? 五歳の誕生日の時からつけてるから、紙がたくさんになっちゃったの!」

 彼の心の中での疑問に勝手に答えて、彼女は笑って見せた。確かに、その年からつけているならこの質量になってもおかしくはない。

「ところで、なんでこんな面倒なことしようと思ったんだ? 毎日その日にあったことを書くなんて、面倒過ぎないか?」

「柳鏡は面倒くさがりだからね……。お母様が、字の練習になるから書きなさいって言ったの。結構面白いよ?」

 自分を見上げて来る真紅の瞳に、意地悪に笑って答えてやる。

「そりゃ、これだけ人の悪口書けば面白いだろうな」

「反省しまーす……」

 そう言ってしょんぼりとして見せるその姿に、苦笑が漏れる。それからまた、彼女の悪口日記に目を戻した。


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