爆弾陛下と龍神 口調
「ね? 確かこんな感じだったよね?」
「……」
正直言って、絶句した。なぜそこまで鮮明にあの時のことを覚えていながら、自分が戦いに行く理由はわからないと言うのだろうか。その方が、わからない……。
「いや、俺はわかったぞ。あんたは世界一鈍い!」
「ちょっと、どうしていきなりそんな喧嘩腰なのっ? 柳鏡のくせに生意気ー!」
その頬を、ぐにぐにとつねる。
「ほう、それを言うならあんたの方じゃないか? 生意気、という言葉はあんたのためにある言葉だよな!」
ふと彼女が、急に真面目な顔になった。その変化に、正直言って慌てる。その頬を放してやると、彼女はそのまま言葉を紡いだ。
「でも思うの」
「何をだよ?」
彼女の言葉にそれらしい反応を返して、その目を見つめる。昔はその真紅の色が彼の心臓をきつく締めつけたものだが、この頃ではそんなこともなくなっていた。ただ、温かい感情が溢れるだけ……。
「柳鏡、私にそんな話し方しててよく怒られなかったな、って……。ほら、確かに頼んだのは私だけど、仮にも姫とその護衛だよ? 色々と問題が……」
「アホ、散々あちこちからお小言くらったんだ」
じとーっと、白い目で彼女を見返す。真紅の瞳が、見開かれた。
「えっ? じゃあどうしてやめなかったのよ? 敬語の方が、柳鏡でもかわいげがあったかもしれないのに……」
彼女が尖らせた口が、彼の指に強くつままれた。
「むむふむむーっ?」
何するのーっ? と言ってみたが、まったくもってわからない。しかし……。
「何するのーっ? じゃないだろ、アホ。あんた、自分もかわいげと言う物が全くなかったくせに、よく言うよな!」
彼の手を自分の口から引き剥がして、反論する。
「何ですってー! 私のどこがかわいくなかったって言うのよ! 少なくとも、素直な方だったとは思うわ!」
「俺以外に対してはな……」
彼が間髪入れずに言った言葉に、ぐうの音も出ない。確かに、彼に対してだけは、自分はとことん素直ではなかった。またしても味わう、敗北感……。
「あのなぁ……。俺があんたが何の気なく言ったわがままを叶えるためにどれだけ苦労してたかなんて、考えたこともなかっただろ?」
「うん、全然。なんか、柳鏡には叶えてもらうのが当たり前、って気がしてて……。あはは……」
あっさりとそう答えてから笑って誤魔化す彼女をしり目に、彼はまたがっくりと肩を落とした。
「考えてもみろよ? あの父親だぞ? あんたにこんな口のきき方してて、怒られなかった訳がないだろうが」
とてつもなく長い連載になってしまいましたね……。
一話あたりの文字数的にはそうでもないと思いますが、その分話数が大変な数字になってしまいました。
どうかこれからも、飽きずにお読みくださいませ。
ありがとうございました。