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姫と龍神 物語の始まり

これは、異国恋歌~龍神の華~の、一話あたりの文字数を減らして、読みやすくした物です。

前回は文字数の都合で削除してしまった場面なども入る予定ですので、一度お読み下さった方にもお楽しみいただけるかと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

「お母様、まだ眠くならないよ。もっとお話聞かせてよ」

 小さな男の子が、母親を見上げながらこう言った。父親そっくりの色をした瞳に見上げられて、母親は小さく笑みを漏らした。その隣では、自分そっくりの娘も期待を込めた眼差しで兄と同じように母親を見上げている。

「仕方ないわね。じゃあ、もう一つだけ。とっておきのお話を聞かせてあげましょう」

 そう言って苦笑をもらす母親に、子供たちは目を輝かせて大きく頷いて見せた。

「それでは、お話をはじめましょうか。遥か昔のお話です。ある国のあるお城に、お姫様が住んでいました」

「わあ、素敵! 私、お姫様が出てくるお話、大好きよ!」

 母親は、その細い指をそっと娘の唇にあてた。

「ほら、お話を聞く時には静かにね。その国は豊かな国で、中央に住む砂嵐サラン族、北に住む亀水キスイ族、西に住む虎神コシン族、そして南の緋雀ヒジャク族、東の清龍シンロン族という五つの部族で成り立っていました」


「あっ、待ってよみんな!」

 小さな女の子が、慌てて転んでしまった。年の頃はまだ五つ、六つ位だろうか、ほんのりと緑色がかった髪を肩まで伸ばした、真紅の瞳のかわいらしい少女だ。

「大丈夫?」

 横から手を差し伸べたのは、三つ程年上に見える朱色の髪の少女だった。

「うん、ありがとう、春蘭シュンラン!」

 先ほど転んでしまった少女をつかまらせて立ち上がらせると、春蘭と呼ばれた少女は彼女に向かってニコッと微笑んだ。

「怪我はしてない? 景華キョウカ?」

 銀色の髪を首のあたりで束ねた少年が覗き込んで来た。その青い瞳に、彼女はドキリとしてしまう。

「あ、う、うん! 趙雨チョウウもありがとう!」

 四つ彼女よりも年上の少年は、怪我がないことを知ると満足気に笑みを返した。

「まったく、景華は鈍くさいからなぁ。怪我でもさせたらこっちが大目玉だっていうのに」

「ちょっと、柳鏡リュウキョウ! 鈍くさいってどういうことよっ?」

 無造作に切った黒髪の頭をかきながら、少年は深い緑色を宿したきつい瞳でこちらを見返した。よく見れば、柳鏡の瞳の色は、景華の髪の色とそっくりだった。

「そのままだよ」

 少年はそうぶっきらぼうに言い放った。

「よくも言ったわね! 今日こそぜーったいに許さないわよ!」

 景華は、真っ赤な顔をして怒っている。

「そう言っておきながら三日後には寂しくなって遊びに来いって言うの、誰だっけ?」

 景華は言葉を失った。今までにもこの二人は顔を合わせる度にこのような喧嘩をしていて、その度にいわゆる絶交状態になるのだが、結局は景華が寂しくなって柳鏡のもとに使いを送る、というようにいつも解決していたのだ。

「こ、今度は絶対に寂しくなんかならないもん!」

「あぁ、無理無理。景華にはぜーったいに無理!」

 いつものことだと思って見物していた二人も、さすがにそろそろハラハラしてきた。

「りゅ、柳鏡、言いすぎなんじゃ……」

 趙雨が止めに入った。

「ほら、景華も。柳鏡は景華の反応がおもしろくてわざとからかってるんだから、本気にしちゃダメよ」

 春蘭も景華をなだめにかかった。二人に止めに入られては、景華も戦意を喪失させる他ない。

「う……。覚えてなさいよ、柳鏡!」

「気が向いたらな」

「ちょっとぉー!」

「「はぁ……」」

事態の収拾がつかないことで、趙雨と春蘭の二人は同時に溜息をこぼした。

こんにちは、霜月璃音です。

龍神の華 改訂版をお読み下さって、ありがとうございます。

前回よりも読みやすく、わかりやすくと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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