自由都市宣言
一ヶ月後。 村の広場には、新しい旗が掲げられていた。 黒い背景に、金色の稲穂と、銀色の歯車が描かれた旗。 農業と工業。そして、独立の象徴。
澤北は、集まった数千の住民(近隣の村々も合併し、人口は急増していた)の前で宣言した。
「今日から、ここは誰の支配も受けない。我々の汗と、知恵と、勇気によって運営される『自由都市』だ!」
地鳴りのような歓声が上がった。 タケルが、ガロウが、ガンテツが、そしてリクの母親が、涙を流して抱き合っている。
澤北はその光景を見ながら、ふと空を見上げた。 北の空。リクが眠る雪山の方角だ。
(見ていてくれ。これが、君の命と引き換えに作った国だ)
胸のポケットには、リクの血がついた帽子がしまわれている。 罪悪感は消えない。北での悪夢も、塹壕での殺戮の記憶も、一生消えないだろう。 だが、澤北はもう逃げない。 その罪を背負ったまま、この都市の指導者(市長)として、泥と油にまみれて生きていく覚悟を決めていた。
都市の工場の煙突から、黒い煙が力強く立ち上っていた。 それは、中世の黄昏と、近代の夜明けを告げる狼煙だった。
だが、彼らはまだ知らない。 海の向こうから、さらに巨大な「黒い影」が迫っていることを。 文明の衝突は、まだ序章に過ぎないことを。




