テーブルの上の戦争
数日後、村の集会所で歴史的な会談が行われた。 出席者は、捕虜となったバルトロメウス伯爵。 そして仲介人として招かれた、隣国の使節と、王都から急行した商務大臣の代理人(これは商人ベンジャミンのコネクションだ)。 そして、村の代表、澤北。
澤北は、テーブルの上に一枚の羊皮紙と、ガラスの小瓶に入った「黒い粉」を置いた。
「条件はシンプルです。この村を、王家直轄の『自由都市』として認めること。領主の支配を受けず、独自の自治権と徴税権を持つこと」
伯爵が顔を真っ赤にして反論しようとしたが、澤北は黒い粉を指差して制した。
「もし認められないなら……この『火薬』の製法と、あの大砲の設計図を、隣国へ売ります」
隣国の使節が目を光らせた。 商務大臣の顔色が変わる。 あの大砲が敵国の手に渡れば、王国の城壁など紙屑同然になる。国家の存亡に関わる脅威だ。
「そ、それは困る! 我が国の技術流出は防がねばならん!」 「ならば、我々を保護してください。我々はこの技術を、平和利用のためだけに使いたいのです。……鉱山の発破や、土木工事にね」
澤北の嘘に、誰もが気づいていた。だが、誰も指摘できなかった。 この男は、悪魔の兵器を「外交カード」として使っている。
長い沈黙の後、商務大臣が重々しく頷いた。
「……よかろう。国王陛下に奏上し、この地を特別自治区とする。その代わり、火薬の技術は国家機密とし、他国への流出を禁ずる」 「契約成立ですね」
澤北は伯爵の拘束を解くようタケルに目配せした。 伯爵は悔し紛れに捨て台詞を吐いた。
「覚えておけ……。力を持った農民など、いつか必ず破滅するぞ」 「ご忠告、感謝します。その時は、また知恵を絞って生き延びますよ」




