血濡れの硫黄
硫黄を満載したソリを引き、山の民の一族二十数名を連れて、澤北たちは村へ帰還した。 村人たちは歓声を上げて出迎えたが、澤北たちのボロボロの姿と、人数が減っていることに気づき、次第に静まり返っていった。
リクの母親が駆け寄ってきた。 彼女はキョロキョロと後ろを探している。
「澤北様……リクは? あの子はどこに?」
タケルが顔を背けた。ガロウが帽子を目深に被った。 澤北は、一歩前に出た。
逃げてはいけない。 「はぐれた」とか「事故だった」と嘘をつくのは簡単だ。だが、それは自分を守るための嘘だ。 澤北は、リクの血で汚れた帽子を母親に差し出した。
「申し訳ありません」
澤北はその場に土下座した。凍った地面に額を擦り付ける。
「リク君は死にました。……私の判断ミスです。私が敵を見誤り、彼を死なせました。彼は、人間に食われて殺されました」
母親の悲鳴が上がった。 彼女は半狂乱になり、澤北の背中を叩いた。蹴った。 澤北は動かなかった。痛みを甘んじて受け入れた。これが、自分の犯した罪の重さだ。
「返してよ! あの子を返して!」
ひとしきり暴れた後、母親はその場に泣き崩れた。 澤北は顔を上げ、泥だらけの顔で言った。
「命を返すことはできません。……ですが、約束します。リク君の犠牲の上に手に入れたこの『力』で、この村を絶対に守り抜きます。二度と、誰にも奪わせない」
それは贖罪の誓いだった。 母親は澤北を睨みつけたが、その目には憎しみだけでなく、ある種の諦念と、澤北の凄絶な覚悟を感じ取った色が混じっていた。
「……嘘をついたら、許しませんから」
そう言い残し、彼女は帽子を抱いて去っていった。 澤北は立ち上がった。 もう迷いはない。 感傷に浸る時間は終わった。ここからは、悪魔の調理の時間だ。




