表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再生の物語 つながりを紡ぐ  作者: 冷やし中華はじめました
都への旅路と経済の怪物

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/56

ガラスの欠片と未来への投資

 商談は成立した。  澤北たちはベンの倉庫へ案内された。そこには、売れ残った塩の樽や、使い古された衣服の山、そして弱った牛が二頭繋がれていた。

「塩は全部もらいます。牛も二頭とも。あと、この古着の山も」

 澤北はテキパキと指示を出した。  古着は、繊維をほぐして「紙」の原料にするつもりだ。  さらに、澤北は倉庫の隅に積まれていた木箱に目を留めた。  中には、薄汚れたガラス瓶や、割れたガラスの破片が詰まっていた。

「これは?」 「ああ、それは屑ガラスだ。溶かして再利用しようと思ったが、質が悪くてな。濁っていて売り物にならん」

 ベンが吐き捨てるように言った。

「都の職人が作ったらしいが、最近は燃料をケチっているせいで温度が足りず、気泡だらけだ。こんなものを高値で売りつけられるんだから、たまったもんじゃない」

 澤北は割れたガラス片を光にかざしてみた。  確かに濁っている。緑色がかっており、気泡が多い。  だが、澤北の目には、それがダイヤモンドの原石に見えた。

(温度不足……つまり、燃料と炉の問題だ)

 自分たちの村には、鉄を溶かす高火力の炉がある。  そして、川には良質な石英(砂)があり、木炭を作るための木もある。草木灰を使えば、透明度を上げることも可能だ。  何より、この都市ではガラスが「高値」で取引されている。

「ベンさん。このガラス屑、鉄の小刀五本で譲ってくれませんか?」 「はあ? こんなゴミをか? 持って行ってくれるならタダでもいいぞ」 「いいえ、対価は払います。……これはゴミじゃない。『次の商売』の種ですから」

 澤北は不敵に笑った。

 こうして、取引は終わった。  荷車には満載の塩と古着、そして木箱いっぱいのガラスカレットが積まれた。後ろには牛が二頭繋がれている。  鉄製品はすべてベンの店に納品された。ベンは久しぶりに晴れやかな顔で、「これで農村に行商に行けば、まともな商売ができる」と喜んでいた。

 帰り際、ベンは澤北に忠告した。

「気をつけろよ、澤北。あんたたちの村の噂は、いずれ領主の耳にも入る。……あの男は強欲だ。金の匂いがするところには、必ずハエのようにたかってくる」 「肝に銘じます。……その時は、また相談に乗ってください」

 ベンとの間に太いパイプができた。  彼はこの都市における、澤北たちの代理人エージェントになってくれるだろう。

 帰り道。  夕日に染まる街道を、牛の鳴き声と共に進む一行の足取りは軽かった。  特にタケルは、手綱を握りながら上機嫌だ。

「すげえな、澤北! あの頑固そうな爺さんを丸め込んで、こんなに物資を巻き上げるとは!」 「巻き上げたわけじゃありません。Win-Winの関係ですよ」 「うぃんうぃん? よく分からねえが、お前が味方で本当に良かったよ。敵に回したら一番怖えタイプだ」

 ガロウも、背中の荷物を直しながらボソリと言った。

「……剣を使わずに勝つ。野盗よりたちが悪いな」 「最高の褒め言葉として受け取っておきます」

 澤北は苦笑した。  だが、心の中は燃えていた。  ガラス屑。これが次の切り札だ。  鉄で基盤を作り、ガラスで外貨を稼ぐ。そして、紙を作って情報を制する。

 村に戻れば、忙しくなる。  まずは「ガラス工房」の建設だ。  澤北の脳内では、既に新しい炉の設計図が描かれていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ