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再生の物語 つながりを紡ぐ  作者: 冷やし中華はじめました
鉄と炎の結束

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21/56

最初のケラ

 熱が冷めるのを待って、その塊――ケラは引きずり出された。  大人が三人掛かりでようやく持ち上がるほどの重量だ。

「こいつぁ……たまげたな」

 ガンテツが震える手で、ケラの一部を小槌で叩いた。  カンッ、と澄んだ高い音が響く。  割れた断面は、銀色に輝いていた。

「見てみろ、この輝きを。不純物がねえ。こんな上等な鉄、都の鍛冶屋でも滅多にお目にかかれねえぞ!」

 ガンテツは興奮して唾を飛ばした。  その言葉に、疲れ切っていた男たちから歓声が上がった。

「やったぞー!」 「俺たちの鉄だ!」

 タケルとガロウが、互いの肩を抱き合って笑っている。  三日間の煤と汗にまみれた顔。そこには、もう「余所者」の壁は微塵もなかった。

 だが、澤北の仕事はまだ終わっていない。  鉄は、道具にして初めて価値が出る。

「ガンテツさん、休んでいる暇はありませんよ。早速、これを叩きましょう」 「おうよ! 腕が鳴るぜ!」

 ここからは職人の独壇場だ。  ガンテツはケラを再び加熱し、大槌で叩き始めた。  火花が散る。不純物が飛び散り、鉄の密度が増していく。  鍛造。  叩くたびに、鉄は強くなる。まるで、叩かれることで結束を強めたこの村のように。

 翌朝。  ガンテツの工房の前に、数本の「それ」が並べられた。  武器ではない。  分厚く、鋭く研ぎ澄まされた刃を持つ**「くわ」と「すき」**だ。

「なんだ、剣じゃないのか」

 見物に来ていた赤狼村の若者が、少し拍子抜けしたように言った。  澤北は微笑んで、一本の鍬を手に取った。ずしりと重い。だが、頼もしい重さだ。

「剣よりも、もっと強い武器ですよ。……見ていてください」

 澤北は村外れの荒れ地――まだ木の根が残り、石が転がる未開墾の土地へと向かった。  普段なら、木の鍬が折れてしまうような硬い地面だ。

 澤北は鍬を振り上げ、思い切り振り下ろした。  ドスッ!  鈍い音と共に、刃が土に深々と突き刺さる。  そのまま柄に体重をかけると、バリバリという音と共に、地中の木の根が切断され、黒い土が掘り返された。

「……!」

 見ていた農夫たちが息を呑んだ。  木の鍬なら何十回も叩きつけなければならない作業が、たった一撃だ。

「ガロウさん、やってみますか?」 「……貸せ」

 ガロウが鍬を受け取る。その剛腕で振るえば、威力は倍増した。  ザクッ、ザクッ、ザクッ。  まるで豆腐を切るかのように、硬い荒れ地が耕されていく。  その圧倒的な効率。暴力的なまでの生産性。

 ガロウは手を止め、鍬の刃を見つめた。刃こぼれ一つしていない。

「……これがあれば」

 ガロウが呟いた。

「これがあれば、俺たちの村の痩せた土地でも……石だらけの山でも、畑にできたのか」

 その声には、悔恨と、そして深い感動が混じっていた。  飢えて死んだ家族。奪うしかなかった過去。  もし、この「鉄」があれば。この「知識」があれば。   「そうです。これからは、奪わなくていい。この鉄で土地を耕し、もっと多くの麦を育てられます」

 澤北の言葉に、ガロウは無言で頷き、そして鍬を抱きしめるようにして天を仰いだ。

 その日、村は二度目の祝杯を挙げた。  鉄製農具の配備。それは、この村が「生存サバイバル」の段階を終え、「発展(文明)」の段階へと進化したことを告げる号砲だった。


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