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動揺する気持ち

僕は一睡もできなかった…


重い頭を振って、洗面所へ向かうと鏡には目の下に隈が色濃くなっていた。


家族にバレないように家を出て、学校へ向かった。


省吾の脅しともとれる取引に、どうしたらいいのか分からなかった。


あの絵を返して欲しいけど、僕が省吾と付き合うのはおかしい…


どうしたらあの絵を返してもらえるのか、考えよう。


「稔?学校に行くには早くない?」


少し息をきらしながら、省吾が僕の肩に手をかけた。


思わず肩をビクッと震わせると、省吾は肩から手をどけた。


「そんなビビらなくてもよくない?」


「別にビビってなんか…」


思わず避けようとする僕に、省吾はいつも通りの感じで学校まで歩いた。


案外普通の態度に、昨日の事は冗談だったのかと少し安堵していた。


昇降口まで来ると、省吾は僕の耳元でこういった。


「返事、楽しみに待ってるね」


そう言い残すと、省吾は先に教室へと向かって行った。


やっぱり昨日のは冗談じゃなかったんだ…


僕は一体どうしたらいいんだ?


直人に言おうかどうしようか、悩みながら教室へと向かった。




「どうした?稔?今日も校庭に行くんじゃなかった?」


僕がそう言われて戸惑っていると、直人は何かを察した様だった。


「なに?杉山と何かあった?」


「え?ううん…何もないよ…じゃあ、校庭に行ってくるね」


スケッチブックを掴んで、僕は走り出した。


察しのいい直人だから、僕の変化に敏感過ぎる。


いつまで隠し通せるか…


ため息をつきながら、ベンチへと座った。


今、正直省吾の絵を描く気分では全然ないんだけど、さっさと完成させて部室に戻りたかった。


鉛筆を動かす手を休めずに、急ピッチで描き進めていた。


「お~い稔~」


その声に思わず、肩がビクッと上がった。


恐る恐るその声の方を見ると、当然ながら省吾が手を振っていた。


僕は引きつった笑みを浮かべて、絵に集中する事にした。




—side杉山健吾

増田君に声をかける先輩を見て、彼の方をみると微笑んでから絵を描いていた。


やはりこの二人は付き合ってるのだろうか…


なんでこんなに気になるのか、全く分からなかった。


走りながら、時折増田君の事を見ていた。


一心不乱に絵を描いている彼を見ると、なんとも言えない気分になった。


なんなんだ?この感情…分からない…


必死に走る事で、思考を手放そうとした。


部活が終わった後、帰り支度をしていると、猿渡先輩に声をかけられた。


「杉山!今日一緒に帰らない?」


「あ、はい」


短くそう答えると、一緒に部室を後にした。


当然の様に昇降口へと向かう先輩を見て、きっと増田君も一緒に帰るのだと思った。


昇降口には当然増田君が居て、その隣に菊地も居た。


菊地が居る事に、少し安堵している俺が居た。


「省吾先輩~ちわっす!」


「おう!やっほー」


手を挙げて挨拶を交わすと、増田君はなんだか居心地悪そうにしていた。


「稔~絵完成したのか?」


「うん…はい…」


増田君は昨日と今日で、描き上げたと思われる先輩の絵を渡していた。


「流石だな~かっこよく描けてるじゃん!これ貰ってもいいよな」


そう言うと、増田君は頷いていた。


なんだか、いつもより無口?そんな感じがした。


「見せてくださいよ~どれどれ~?」


俺と一緒に見ようと、菊地は先輩から絵を取って俺に見せて来た。


確かにかっこよく描かれている…本当に増田君は絵が上手いと思うけど…


なんだか…なんとも言えない気持ちになった。


「本当に上手いですね」


絵を見ながら感想を言うと、先輩は嬉しそうに絵を持って


「サンキュー稔!」


そう言って、増田君の肩に手をかけていた。


この距離感って、やっぱり2人は付き合ってるのかな?


増田君は菊地の手を取ると


「直人帰ろう」


と歩き出した。


先輩はその様子を目で追いながら、絵を仕舞いながら歩きだした。


「なんだ~稔~俺と一緒にいたいんだな~」


そう菊地は言いながら、増田君の髪の毛を撫でていた。


菊地も菊地で、増田君との距離が近いよな?


俺ももう少し増田君と仲良くなりたい…と思ってしまった。


だけど、猿渡先輩と付き合ってるとしたら、それはよくない気持ちなんだろうか…


考えてもわからない…だけど、友達としてなら仲良くしても問題はないだろう…俺はそう思う事にした。



部室で絵を描いていると、直人が話しかけてきた。


「なあ、稔…」


「なあに?」


窓から見える風景を描きながら、少し上の空で返答していた。


「省吾先輩となんかあった?」


ふいにそう聞かれて、思わず手が止まった。


「え?」


「あのさ…何があったかなんて、一目瞭然だっての!俺の目をごまかせるとでも?」


本当に直人は察しが良すぎる…隠しておきたくても隠しきれない。


「なんかあるなら聞くよ?協力できることもあればするし…言っちゃいな」


ニカッと笑って、直人は言った。


直人に隠し事できないと思った僕は、省吾にスケッチを拾われていた事と、返して欲しかったら付き合ってと言われた事を話した。


「ふ~ん…あれって省吾先輩が拾ってたんだな~」


「うん…まさか拾われてるなんて思ってなかった…」


僕が拾い忘れたせいで、省吾の手元にいってしまったんだから、自業自得かな…


「というか、返して欲しかったら付き合えって?…それで稔は先輩と付き合うの?」


そう直人から言われて、大きく首を振った。


「省吾と付き合うとか考えられない…ずっと小さい頃から一緒に居て、お兄ちゃんみたいな存在だし…きっと、僕の事を揶揄ってるだけだと…思うんだけど…」


聞いていた直人は、深いため息をついた。


「そうならいいけど、もし本気だったらどうするの?」


そう言われて、僕は頭が真っ白になった…


「本気…なのかな…」


僕はどうしたらいいんだろう…


でも今朝昇降口で言われた言葉を思い出して、どうしたらいいのか頭を抱えてしまった。


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