突然のチャンス
4人で帰る帰り道で、すごく不思議な気分になった。
想い人と一緒に帰れるなんて、早々ない事だから緊張していた。
隣に杉山君がいるなんて、口から心臓が飛び出そうだ…
「菊池と同じ美術部なんだね」
杉山君に言われて、少し挙動不審になりそうになった。
「あ…うん。僕、絵描くくらいしか無いから…」
「どんな絵を描くの?」
いきなり杉山君に聞かれて、返答に困った…だって描いてるのって杉山君だから…
「えっと…景色…とか…」
「どんな絵描くのか見て見たいな…」
そんな事言われて困ってしまった…1枚も最近景色とか描いてないから…
「えっと…完成したら見せるよ…」
苦し紛れにそう言うと
「楽しみにしてる」
と微笑まれた。
微笑んだ顔は嬉しいけど、景色描かなきゃいけなくなった状況に頭の中ではパニックになっていた。
「ん?何話してんの?」
直人が人懐っこい感じで、僕たちの間に入ってきた。
「増田君がどんな絵を描くのか聞いただけだよ…」
少しぶっきらぼうに返す杉山君に、直人は悪い顔をしていた。
「それならさ~」
そう続けようとする直人の裾を引っ張って、大きく頭をかぶに振った。
(絶対ダメだからな!言うなよ!)
という圧を直人にすると、少しため息をついてつまらなさそうな顔をしていた。
「それなら何?」
杉山君は少し小首を傾げて、直人の方を見ていた。
「なんでもないよ~稔の絵は特別だから、そう簡単には見せれませ~ん」
おちゃらけた様に言う直人に、杉山君は
「はぁ~」
と息を吐いた。
「なんだ?杉山、稔の絵に興味あんの?」
省吾がそう言うと、杉山君は
「え?あるんですか?」
とちょっと食い気味に言ってきた。
「昔俺を描いてくれたやつなら、多分家にあると思うけど…」
「ちょっと!省吾!絶対やめて…昔の絵なんて…」
僕が焦ってそう言うと、省吾は笑っていた。
「あれだよ、杉山…稔と仲良くならないと見せてもらえないよ?コイツ結構人見知りだから…」
杉山君は僕の方を見ると、少し驚いているみたいだった。
「そう…なんですね…」
「だからさ、親睦も兼ねて今度この4人で遊びにでもいく?今度の土日は練習も休みだしさ」
省吾がそう言うと、直人もノリノリでその提案を了承していた。
「いいですね~親睦深めよう!俺ともね!す・ぎ・や・ま!」
「あ~ハイハイ…分かりましたよ先輩」
「じゃあ、決まりね!」
とんとん拍子に遊びに行くことが決定してしまった…嬉しい反面、緊張でどうにかなりそうだった。
「あっれ~?稔くん~風景画なんて珍しいねぇ~もう秋の準備ですかぁ~」
揶揄うようにそういう直人に、僕は少しイライラしていた。
「煩い…いいだろ…何を描いても」
僕の周りをウロウロしながら、意味深に笑っていた。
「なんだよ…気持ち悪い…」
「明日のおでかけ楽しみだな!」
僕を煽る様にそう言いながら、顔を近づけて来た。
「何が言いたいんだよ…」
「チャンスだと思うよ~俺は…」
ニヤニヤしながら言う直人に、僕は心の中で舌打ちをした。
余計に緊張しちゃうだろうっ!ほんとにロクでもない…
「省吾先輩どこに連れてってくれるのかな?」
「さぁ?多分省吾の事だから、ゲームセンターかカラオケくらいだと思うよ」
そう僕が言うと、直人は窓の方を向いた。
「流石幼馴染だから熟知してるって感じ?」
「そうかもね」
僕はそう言いながら、風景を描いていた。
明日の事を考えながら描くそれは、全く集中できてない最悪のものだった。
朝になって支度をしていると、自分の部屋が服だらけになっていた。
洋服を選ぶだけで、もう2時間くらい経っていた。
迷っていると、部屋のドアが開いた。
「稔~用意でき…」
省吾の声が途中で途切れた。
それもそのはず、部屋の様子を見て言葉が止まっていた。
「なんつー部屋…」
「省吾…どうしよう…僕…省吾と直人くらいしか遊びに行ったこと無いから…」
省吾は少し呆れたような顔をして、洋服を一枚一枚拾っていた。
「あのな~別にデートに行くわけでもないのに、こんな服選ぶの苦労してんのか…ほい、これとこれな!」
僕に服を手渡すと、他の洋服をクローゼットに仕舞い始めた。
そうだよな…少しデート気分だった僕の心を読まれたのかと焦ってしまった。
「ありがと…」
省吾が選んでくれた服を身にまとって、一緒に待ち合わせの場所へと向かった。
駅に着くと、既に直人と杉山君が待っていた。
「すまんな!待ったか?」
省吾は手を挙げて、挨拶をしていた。
「今来たところなので大丈夫です」
杉山君が言うと、横で直人がニコニコと笑っていた。
「今日はどこに行くんです?」
「とりあえず、ゲーセンでゲームしてカラオケでも行こうか」
「お決まりコースだね」
僕が省吾に向かって笑うと、直人は僕の近くに来て、肩に腕を絡めると小声で言った。
「本当に稔が言った通りだったな」
ニカッと笑うと、僕の頭をポンポンとした。
「さあ、さっさと行こうか」
省吾は手をクイクイっとして、着いてこいの合図をした。
この癖は、小さい頃からのものだった。
みんなでゲームセンターを訪れ、色々なゲームをした。
意外と杉山君はゲームが強かった。
直人も必死で杉山君を倒そうと奮闘していたけど、杉山君の方が上だった。
「杉山~お前…やるな」
ニカッと笑う直人に、杉山君も笑った。
「それほどでもないけどね」
なんかいいな~こういうの…僕にはできない事だ。




