自分の気持ちside杉山
—side杉山健吾
菊地に増田君の喫茶店に行こうと誘われた。
入るのも結構人が並んでいた。
しかも、入口にメイドの格好をした3人ずつのチェキが貼ってあった。
それを見ると、増田君が映っている写真を見て、ドキッとしてしまった。
別に増田君に女の子になって欲しい訳じゃないけど、女子より可愛く見えた。
横にあと2人映ってたけど、一番増田君が可愛かった。
このドキドキする気持ちは、もう好きって事なんだろうな…
並んでいると、増田君が対応しているのが見えた。
その時客に腕を掴まれていた。
思わず体が動きそうになった瞬間、菊地に止められた。
すぐに他の男子に助けられてたから、大丈夫だったけど、菊地なら俺と同じですぐに動くかと思ってたのに、まさか菊地に行くのを止められたのは意外だった。
結局その後、増田君が解放されたから、一緒に行動できるようになったけど、菊地が強引でそのままの姿で廊下を歩いていると、この増田君の姿を人に見られるのが無性に嫌だった。
俺は自分の上着を脱ぐと、増田君の頭から服をかぶせた。
振り向いて僕を見る増田君の頬は赤くなっていて、とても可愛かった。
男子や女子が振り返るたびに、増田君を見ているのだと思うと、イライラしていた。
菊地は屋上へ俺たちを連れて行くと、誰も居ないのを確認してから、写真を撮ろうとしてきた。
いきなり増田君を撮ろうとしている菊地に、俺は彼の前に立ちはだかった。
「勝手に撮るのはよくない。ちゃんと確認すべきだろ?」
そう言って、増田君を見て微笑んだ。
「あー…そう…。稔は写真撮ったらダメ?」
可愛げな仕草をして菊地はおねだりすると
「じゃあ、杉山君と一緒に撮って…」
そう言われて、俺は驚いた。
可愛く言われたら断れないし、断りたくなかった。
俺は彼を見て微笑むと、隣で思わずニヤけてしまった。
「OK!じゃあ、寄り添って~」
ナイスアシストの菊地に、心からありがとうと言うのだった。
学園祭から数日経ったある日、裏庭に菊地から呼び出された。
「こんな所に呼び出して何?話なら教室でもできるだろ?」
俺がそういうと、少し呆れた表情をして菊地は言った。
「そんなところでできない話をするからだよ…察して?」
なんだかいつになく真剣な目で俺を見ると、俺は頷いてみせた。
「稔のスケッチブックは見た?」
思わずソレを言われて、菊地の目を見た。
ちょっと後ろめたい感じもあって、少し目を伏せてから小さく頷いた。
「じゃあ、稔が誰を好きかわかってるよな?」
俺の事を射抜くような目で見ると、そのまま動けないでいた。
「それで…杉山の気持ちはどうなんだ?この質問するのには大きな意味がある。だから嘘やごまかしなんてしないで、ちゃんと答えて欲しい」
菊地の真剣な眼差しに、きちんと答えようと思った。
「ずっとあの絵を見てから、俺の気持ちを確かめてきたけど、どうやら…好きみたいだ…」
それを聞いて菊地は、うんうんと目を閉じて頷いて、俺の目を真っすぐに見つめて言った。
「実は…スケッチブック1冊だけ破れたりしたやつあっただろ?俺が窓から放りだしたやつ」
俺は頷くと、菊地はため息をついて言った。
「あれ、1枚拾い損ねてたやつがあるんだよ…そして、今その1枚は…」
そう言って、菊地は少し言いにくそうに口を開けた。
「省吾先輩が持ってるんだよね…」
「え?」
あまりに驚きすぎて、ぽかんと口を開ける事しかできなかった。
「その絵でさ、稔に交際迫ってさ…」
「は?交際?」
菊地は頷くと、猿渡先輩の行動に色々と納得がいった。
「ってゆっても、遊園地行ったじゃん?あの日にフラれてはいるんだ。先輩…でも、まだ杉山の絵は先輩が持ってるんだよな~」
猿渡先輩がそんな事をするなんて、俺には信じられなかったけど、増田君が少し先輩と居る時表情硬かったのはそのせいか…と納得できた。
「そうか…教えてくれてありがと」
俺がそう言うと、菊地は頷くと
「まぁ、そういう事だから…」
そう言いながら俺の肩をポンッと手を置いてから、その場を立ち去って行った。
なるほど…そういう事ね…
だからあの日から一緒に帰る姿も見てないし、登校する姿も見なかったのかと納得した。
大会が近いせいかと思っていたけど、そんなの関係なかったって事か…
増田君の気持ちを知って、彼に告白したって感じかな…
それくらい好きだったんだろうな…
だけど…そんな卑怯な手はやっぱり許せない…
俺は決意すると、猿渡先輩の元へと向かった。
「久しぶりだな~杉山!こんな所に呼び出しとか、何?俺告白でもされんの?」
少しおちゃらけた感じで言う先輩に、少しイライラしていた。
放課後の屋上は誰も居なくて、話をするにはちょうどよかった。
「そんな訳ないじゃないですか…面白くない冗談ですね」
「冷たい事言うなよ~引退したとは言っても、俺は先輩だよ?」
俺はそういう先輩を少し冷たく見ると、何かを察したのか黙っていた。
「先輩…増田君のスケッチ持ってますよね?」
「は?なんでお前にそんな事言われなきゃいけないの?何が書かれてるか分かって言ってるの?」
先輩は少し苛立った感じで、言うと俺から背を向けた。
「知ってます…」
俺がそう言うと、先輩は勢いよく振り返った。
「は?知ってる?」
先輩は少し自嘲気味に笑うと
「で?俺が持ってたら何?」
「増田君に返してあげたらどうですか?」
俺が先輩の目を真っすぐ見て言うと、イライラした様子を見せた。
「返そうが持ってようが、稔の想い人であるお前には関係ないだろ!」
「じゃあ、自分が同じ立場でもそう言えますか?先輩も増田君が好きなんじゃないんですか?」
そう言うと、先輩は頭をかきむしった。
「なら、お前が返せよ!」
そう言って、内ポケットから紙を取り出して、俺の側までくると、その紙を俺に押し付けた。
そしてそのまま先輩は、屋上から走り去った。
俺は受け取った紙を広げて見ると、そこには俺の走っている絵が描いてあった。
それを綺麗に畳むと、ポケットに仕舞いこんだ。
そして俺はある決心を胸に、屋上から降りて行った。
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