学園祭の出来事
とうとう恐怖の学園祭当日になった。
朝登校しながら、省吾に
「カフェに行くよ絶対」
と言われてしまって、僕は絶望を感じていた。
直人にも散々言われていたのに、ダメ押しの今朝だった。
杉山君や直人の組は、お化け屋敷みたいだから、絶対行きたくない…
というか、僕…休憩貰えるのかな?人がそんなに来なかったら、自由な時間も摂れるかもしれない…
「増田くん~そろそろ着替えてくれる?」
女子がそう言うから着替える事になったけど、こんなメイドみたいなフワフワな衣装と、初めて履くストッキング…化粧にウイッグまで…
「やっぱり~可愛い~~~」
「本当!増田君って化粧映えするよね~これなら人気になりそ~」
嬉しそうに言う女子の横で、僕より背の小さい可愛らしい男子が言う。
「え~ボクの方が可愛くない?」
女性のように小首を傾げて、にっこりと笑っている。
「かわいい~~~やっぱりこの3人で正解だよね~」
女子達は嬉しそうに、キャッキャッとはしゃいでいた。
「この3人で写真撮ろうよ!チェキならすぐに撮影できるから、こんな子が接客しますよ~みたいな宣伝になると思うけど」
もう一人の男子がそう女子に提案すると、それが採用になり写真を撮る事になった。
マジで辞めて欲しい…勿論僕になんて拒否権ないから、従うしかないんだけど…
「似合わない系男子のも写真撮るからね~」
と女子が嬉しそうに言っていた。
似合わない系の人達は、筋肉質の体をしているせいか、衣装もピチピチで化粧はなんとか様になってるけど、こっちの可愛い系の2人には、うん…まあ…劣るというか…
「え?そっちだけでいいじゃん!それじゃなくても罰ゲームなのによ~」
似合わない系の3人は、本当に不服そうにそう言っていた。
女子の圧力に有無を言わさず、僕らと彼らの写真を撮ると、開店前の最後の打ち合わせが終わった。
はぁ~本当に絶望でしかない…
開店してしまうと、恥ずかしいとか言っている場合じゃなく、驚く程客が入ってきた。
女子も男子も来店するから、もう正直クタクタだった。
「オレンジジュース2つと、ドーナツ2つお願いします」
戦場と化している厨房とまではいかないけど、食品を扱うところにオーダーを伝えに行く。
作るわけじゃなくて、簡単に出せるものを設定しているから、楽といえば楽なのかもしれないけど、接客が地獄というか…
注文受けた品物をテーブルに運ぶ
「お待たせしました。オレンジジュースとドーナツになります」
そう言ってテーブルに置いて去ろうとしたら、いきなり手を掴まれた。
「え?」
「ねえ…君って、猿渡の幼馴染君だよね?」
こう言うって事は、省吾の知り合いなんだろうか?
「あ…はい…」
「へぇ~可愛いね…」
その人はなんだか僕を、値踏みするように見ていた。
「あの…手を…」
そう言った時に、僕とその人の手を剥がしてくれた人がいた。
「こういう事はやめていただけます?そういうサービスはしていないので…失礼します」
そう対応してくれたのは、一番似合っている彼だった。
「あぁいうのは、適当に流さなきゃだめだよ」
小声で僕に耳打ちをすると、微笑んでくれた。
(やば…可愛い…これは惚れるだろうな…)
「助けてくれてありがとう」
そういうと、微笑んで次のお客の対応に回っていた。
僕もちゃんとしなきゃ…と気合を入れて次のテーブルへ向かうと、そこに居たのは…杉山君と直人だった。
思わず息が止まるかと思った…
「助けようと思ったんだけど、先にあの子に助けられちゃったな」
頬杖をついてそう直人が言うと、杉山君が僕をじっと見ていた。
「直人がやると角がたったと思うから、よかったよ…あ…ご注文は?」
「オレンジジュース2つで」
そう杉山君が注文をしてきた。
「少々お待ちください」
杉山君にこんな姿見られたくなかったな…
ジュースを運ぶと、直人と杉山君がいるテーブルを見ている女子が、なにやら騒いでいた。
まあ、分かる…一見直人もスタイルいいし、杉山君は言わなくてもカッコいいから、そんな2人がいると女子が騒ぐのも仕方ない。
「お待たせしました」
「ありがとう」「サンキュー」
杉山君と直人は、同時にお礼を言っていた。
「…ごゆっくり…」
振り返って移動しようとした瞬間、手を掴まれた。
「稔~?そろそろ休憩とかない?」
振り返ると手を掴んでいたのは、直人だった。
「え…いや…」
そこへ女子がやってきた。
「増田くんあがりでいいよ~学園祭回ってきてね」
そう言われて、直人は喜んでいた。
「じゃあ、行こうか!」
僕の腕をそのまま引っ張って、廊下へと出た。
「待って!さすがに着替えさせて!」
「なんで?こんな可愛いの見せつけなきゃ!」
直人はグイグイ腕を引いて、歩き出した。
杉山君は、僕らの後をついて来ていた。
「待ってって!本当に恥ずかしい…」
恥ずかしくて穴に入りたかった…
すると後ろから頭に、上着の制服がかけられた。
後ろを振り向くと、杉山君の上着が無かった。
彼の香りがする上着を頭から被っていると、とてつもなく恥ずかしかった。
「やる事がいちいちイケメンですね~杉山!」
僕の手を引いたまま、直人はそう言うと、2人して笑い合っていた。
この2人ってここまで仲良さそうだった?
3人で屋上に上がると、そこには誰も居なかった。
「ここなら写真撮り放題だな」
直人は嬉しそうにスマホを出すと、僕の方に向けた。
その瞬間杉山君は、直人のスマホと僕の間に割って入った。
スマホに手をかざして、塞いだ。
「勝手に撮るのはよくない。ちゃんと確認すべきだろ?」
そう言うと、杉山君は僕を見て微笑んでくれた。
「あー…そう…。稔は写真撮ったらダメ?」
小首を傾げて言う直人に、僕は笑って言った。
「じゃあ、杉山君と一緒に撮って…」
僕は頭から被っていた彼の上着を取ると、手に持って杉山君の横に立った。
「OK!じゃあ、寄り添って~」
スマホを掲げながら、笑って言う直人に、僕と杉山君は見つめあった後、スマホに向かってピースをした。




