表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/22

新学期と学園祭準備

夏休みも終わり、新学期になった。


久しぶりの登校に、少し憂鬱になっていた。


新学期ということは、そう…学園祭があるからだ。


何をやるか次第で、僕の運命は決まる…


その死の宣告が今日という日というのは、分かっている…


ため息をつきながら、足取り重く歩いていると、いきなり背中を叩かれた。


「いたっ」


叩いた相手を見ようと振り向くと、そこには省吾が笑っていた。


「省吾…」


「よう!久しぶり!相変わらず肌白いままだけど、海とか行ってないわけ?」


省吾を上から下まで見ていると、どんな夏休みを送っていたか容易に想像できる。


「省吾は相変わらずの夏休みだったみたいだね」


そう言葉にしながら、普通に接してくれているってことは、僕も普通にしなければと思った。


「まあ、殆ど部活関係だったけど、最後は外に出っ放しだったな!」


「じゃあ、学園祭が終わったら受験だね」


省吾は少し不貞腐れた顔をして、僕の背中をもう一度バチンと叩いた。


「いたっ!叩かないでよ!」


「それを言うなよ!一番避けて通りたい話なのにさ…稔だってすぐ受験一色になるんだからな」


明るく言う省吾は、今までの様に話をしてくれて、とても嬉しかった。


「そんな事より、僕は今日の学園祭のやる事が恐怖で仕方ないよ」


「は~ん…稔の苦手な文化祭だもんな!クラスの出し物」


大きくため息をつくと、省吾は笑っていた。


「まぁ、がんばれ!応援だけしとくわ」


「薄情だな!省吾は」


そう話していると、昇降口についてお互いのクラスへと別れた。


一か月くらい話をしてなかったけど、普通に話せてよかった。


このまま話せなくなるのは、流石にちょっと寂しいから…


でも、それって…省吾にとっては…


本当に自分勝手だな…


本当の意味で普通に話せるようになるには、まだまだ時間が必要だって事はわかっている。


今は省吾の気遣いのおかげだと言う事も…


僕はかなり卑怯だと思う…こんな僕に想われている杉山君が不憫に感じた。



とうとう…この恐ろしい時間が始まった…そう、学園祭のクラスでの出し物決め…


「今回のうちのクラスの出店は、女装メイドカフェに決定しました!」


お分かりだろうか?この絶望的な提案が…


「今回は基本女子は裏方に回ります。男子が6人くらい女装メイドしてもらいたいので、立候補誰かします?」


クラスの女子が率先して進行しているが、当然誰も手を挙げない。


「これじゃあ、話が進まないんだけど?男子は決める為のいい案ないの?」


進行役の女子がそう言うと、クラスのカースト上位の男子が言いだした。


「じゃあさあ、女装の似合いそうなヤツ3人と絶対に合わないヤツ3ってのはどうだ?楽しそうじゃね?」


「それ!いいんじゃない?皆はどう思う?」


皆がその意見を了承する形で、選考方法を決める事になった。


そう提案していたけど、まぁ、僕が選ばれる心配はなさそうだから、大人しくその話を聞いていた。


「決めるのは女子でいいわよね?男子は一列に後ろに並んで」


女子は教壇の前に並び、男子は後ろに並ぶ事になった。


まるで品定めするように、メモを片手に話し合いをしていた。


女子はチラチラとこちらを見ながら、輪になる様にキャーキャーと騒いでいた。


「じゃあ、6人が決まったから発表するわね」


そう言って発表されたメンバーは最悪だった…


何故かそのメンバー中に、僕の名前が入っていたからだった。


ねぇ、それってなんの罰ゲーム?



「え?何それ最高じゃん!」


「は?」


絵を描きながら、直人は笑っていた。


「絶対遊びに行くからな!」


僕はため息をついて、直人の反応にイラついていた。


「僕は女装なんてしたくないよ!しかも似合いそうって何?似合う訳ないでしょ!」


直人は筆を僕に合わせて、デッサンのモデルを見るように被写体を捉えていた。


「ん~…似合うと思う」


その言葉に僕は落胆していた…


「他に選ばれた人は、2人とも小柄で可愛い感じだから分かるよ?でも、僕は影は薄いしスタイルもよくないし、背だって172もあるんだよ?似合う部類に入るのはおかしくない?」


「似合う側に選ばれて、なんでそんなに嫌がるんだよ…似合わない方に選別される方がきつくない?」


僕はためいきをついて、直人を睨んだ。


「そりゃ…直人が女装したら、完璧に似合わないっていうより、イケメンすぎの面白い感じになると思うよ」


「はぁ?俺が女装したら、モテモテだよ!」


体をクネクネさせながら言う直人に、僕は怒る気も失せていった。


「あーハイハイ…」


大きく息を吐くと、スケッチブックを机に置いた。


「直人はもう時間ないんだから、ソレ仕上げちゃいなよ…学園祭まで1か月だよ?」


直人はこちらを見て、微笑むと筆を動かしはじめた。


僕はため息をしながら、少しボーっとしていると、廊下を走る音が聞こえて来た。


「あ~こんな所にいた!」


そこにはクラスの女子2人が、僕を見ていた。


「増田くん!もう絵は完成してるって言ってたわよね?」


「え…あぁ…まぁ…」


「じゃあ、部活関係休んで大丈夫なんだから、手伝ってよね!それに、接客練習もあるんだから、サボらないで!」


そう言われながら、椅子に座っている僕の腕を引っ張った。


「あ、片付け…」


そう言いかけたら、直人が言った。


「片付けは俺がしとくから、稔連れてっていいよ!」


ニヤニヤと笑いながら言う直人に


「ありがとう!菊地くん!じゃあ、増田くん借りていくね~」


直人は手を挙げると、嬉しそうに僕を送り出した。


(直人のヤツ…絶対に許さない…)


女子達に連れられて教室に戻ると、それぞれ大道具や小道具を作成している面々が居た。


「お~美術部の増田じゃん!これ手伝ってよ!」


「あ…うん」


看板やら、メニュー表やら、やる事は沢山あって、そういう感じは僕の得意分野だから、クラスの役にたっているのは、やりがいはあった。


そして後の1か月は僕にとって、本当の地獄の日々になった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ