嬉しい提案
直人の提案で杉山君と一緒に、お昼を食べる事になった。
「杉山は何食べたい?」
「ん~俺はなんでもいいから、増田君に合わせるよ」
「え?僕?」
杉山君の言葉に、僕は驚いた。
「なんで稔の意見?俺の意見は?」
直人も不服なのか、杉山君に文句を言っている。
「だって菊地はなんでも食べそうじゃないか、その点増田君は繊細そうだし…」
「なにその偏見…」
面白くなさそうに言う直人が、少し不憫に感じた。
「じゃあ、ハンバーガーでもいい?」
おずおずとそう言うと、直人は目をキラキラさせながら頷いていた。
そりゃそうだ…ハンバーガーは直人の好物だから…
「じゃあそこに行こう」
杉山君は優しく微笑むと、歩き出した。
(笑顔も爽やかで意見を聞いてくれる杉山君はやっぱり優しい…)
「稔は優しいな~ありがと」
直人は僕の耳元で、小さく言った。
やっぱり察してしまったか…流石というかなんというか…
まあ、これくらいは僕にだって察する事はできるからね!と心の中でどや顔をしていた。
注文を済ませて、2階席へと移動すると、僕・杉山君・直人の順番に座った。
これはきっと直人が、気を利かせてくれたんだと思う。
流石だな…優しいにも程がある。
「俺取ってくるから、2人は待ってて!」
「俺も手伝おうか?」
そういう杉山君を制し
「大丈夫大丈夫、杉山は運動で疲れてるだろ?それに一人で運べない量じゃないし大丈夫」
直人はそのまま階段を降りて行った。
「菊地って結構気が利くよな…」
直人を見送る様に、杉山君は目で追っていた。
これって…やっぱり杉山君は直人の事気になってる?
そりゃ、気が利いて、楽しくて、明るい直人はモテても仕方ない。
「直人ってすごく優しいよ…僕なんていつも助けてもらってばっかり…」
僕が俯いてそう言うと
「そんな事ないよ。増田君だって充分優しいよ。ここって菊地が好きなところなんだろ?」
まさか杉山君が気がついていたとは思わなくて、驚いた。
もしかすると、元々直人の好みを把握してる?
直人がトレーを持ってやってくると、杉山君がそれを受け取りテーブルへと置いた。
「さすが杉山!モテる男はやる事がスマートだな」
笑いながら言う直人に、少し照れた様に顔を背けている杉山君の顔が少し赤くなっていた。
それを見て、杉山君は直人を好きなのかもしれないと思ったのは、間違っていない気がした。
「そういやさ、夏の終盤に花火大会あるじゃん?」
「あ~そうだな…」
「杉山もその頃には暇になんだろ?」
直人がそう言うと、杉山君も「まぁ…」と返事をしていた。
「ならさ、みんなで見に行かない?どう?稔」
「え…別にいいけど…」
僕がそう答えると、杉山君も「俺もいいよ」とそっけなさそうに言った。
「でさ!その日レンタルでもいいから浴衣着たりしない?」
楽しそうにそう提案する直人に、僕は思わず息を飲んだ。
杉山君の浴衣姿が見えるのか?これはナイス提案だと思った。
「あ~俺、浴衣持ってる…菊地や増田君は持ってないの?」
そう聞かれて、僕は頷いた。
「俺も流石に浴衣は持ってないや…」
「じゃあ、俺の家に何枚かあるから貸すよ。それでいい?レンタル代だって馬鹿にならないし」
そう杉山君は提案してくれた。
「マジ?杉山マジ天才!」
「じゃあ、当日俺の家に来てもらう事になるけどいい?」
まさか杉山君の家まで行けるとは思ってなくて、僕は平静じゃいられなくなりそうだった。
「お邪魔してもいいの?」
僕が少し遠慮がちに言うと、杉山君は微笑んだ。
「勿論…遠慮しなくていいよ」
これで夏休みの最後に、とてつもないイベントができてしまった。
楽しみで仕方なくなった。
絵も完成し、夏休みも残り少なくなったところで、花火大会の日になった。
駅で待ち合わせて、杉山君の家に行くことになっていた。
「稔~こっちこっち!」
直人は僕を見つけると、嬉しそうに手を振っていた。
待ち合わせ時間より少し早いのに、もう着いてる直人は流石だと思った。
「お待たせ。杉山君はまだだよね?」
キョロキョロと周りを見ていると、直人は含み笑いをしていた。
「じゃ~ん!あそこにいるよ」
柱の影から、杉山君が現れた。
「え?僕結構待たせちゃった?」
焦って言う僕に、2人は笑っていた。
「まだ待ち合わせ時間にもなってないよ!焦りすぎ!」
直人は笑って、僕の髪の毛をくしゃくしゃと撫でた。
「杉山君待たせてごめんね」
僕がそう言うと、直人は少し不満そうな顔をした。
「なんだよ…俺は待たしてもいいってこと?」
「そんな事言ってないだろ」
バツが悪そうに言う僕に、直人は頭を撫でた。
まるで子供扱いだ…杉山君の前でそんなの辞めて欲しかった。
「暑いし、早めに俺の家に行こう」
杉山君に同意して、歩き出した。
彼の家は、現代風の綺麗な家だった。
「どうぞ」
「お邪魔します」「おじゃましまーす」
挨拶だけはきちんとしようと思ってそう言うと、杉山君は笑いながら言った。
「あ、今日誰も居ないから大丈夫だよ。上がって」
靴を揃えて上がると、スリッパを出してくれていたので、それを履いて2階へと上がった。
「まだ時間早いから、ちょっと俺の部屋で寛いで」
ヘアのドアを開けて、僕らを招き入れた。
部屋の中は杉山君ぽいというか、とても整理整頓されてて、いわゆる男子の部屋って感じだった。
「飲み物はジュースと麦茶どっちがいい?」
「俺はジュース」
「あ、僕は麦茶で…えっと…面倒ならジュースでもいい」
そう言うと、杉山君は微笑んで
「ちょっと待ってて」
ドアを閉めた。
部屋はクーラーがかかっていて、とても涼しかった。
わざわざ冷やしておいてくれたのが、気遣いが素晴らしいと思った。
杉山君の部屋に来れるとか、すごいラッキーで幸せだと思った。




