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夏休みの部室

夏になり部室で描くのも、外で描くのも大変な時期になってきた。


汗を流しながら、キャンバスに向かうと、絵の完成が後少しになっていた。


「あっちぃな~稔何か飲む?」


「一緒に買いに行こうか」


そう言って財布を持つと、一緒に自販機へと向かった。


「運動部とかマネージャーいるから、こんな風に買いに行く事もないんだろうな~」


何気ないその一言に、僕は思わず校庭の方へと目を向けた。


「な~に?日差しのような熱い眼差しを杉山に向けてんの?」


誰が聞いてるかもしれない所で、そんな事をいう直人の足を蹴った。


「いってっ!」


痛そうに蹲る直人を放っておいて、僕は自販機へと歩き出す。


「いてて…そんな怒るなよ…稔~」


悲痛な声を出す直人に、足を止めて振り返った。


「そういう事、どこでも言うのやめろよ」


不貞腐れたように言うと、直人は足をさすりながら片手を顔の前に持ってきてゴメンの仕草をしていた。


「今回だけだからな…ジュース奢ってくれたら許す…」


僕がそう言うと、直人は嬉しそうに笑うと、足をさすりながら起き上がった。


「わかった!奢るよ!いくらでも!」


少し足を引きずりながら、僕の隣に来た。


「優しいな~稔は」


微笑むと、僕の肩に手を置いた。


「触るなって!」


その手を振り払うと、自販機の方へ歩き出した。


「稔~!置いてかないで~」


後ろから声をかけられた。


「増田君と菊地?」


振り返ると、そこには杉山君が居た。


「お~杉山も部活か!」


直人は杉山君の周りをグルグルまわりながら、そう言った。


「そりゃ当たり前…もうすぐ大会があるからな…そっちも部活?」


杉山君は直人と僕の方を交互に見て、そう質問した。


「おう…俺たちも秋の展覧会の為に制作してんだよ。俺はまだまだかかりそうだけど、稔はもうすぐ完成しちゃうんだけどな」


何故か直人が嬉しそうにそう報告していると


「さすが増田君だね…それに引き換え菊地は当然って感じだな…」


少し呆れた様に言う杉山君に、直人は大袈裟に悲しんで見せた。


「俺は稔と違って優秀じゃないからねぇ~」


そう言いつつ、僕の方を向いた直人に


「別に…優秀じゃないし…」


僕が小さく呟くと、杉山君は直人に言った。


「そういえば、増田君の絵は見せてもらったことあるけど、菊池のは見た事ないな…よっぽど下手なの?」


ド直球な言葉に、直人は大袈裟に胸を射抜かれた様な仕草をした。


「いたっ!心臓に刃が…」


その仕草を見て、僕と杉山君は笑った。


「なら、そっちの練習終わったら俺の絵を見に来る?」


そう杉山君を誘っていた。


自然に誘えるその行動力に、本当にコミュ力お化けだと思う。


「んじゃあ…後で部室に寄らせてもらうよ。じゃあ」


と杉山君は、校庭の方へ走って行った。


「これでさっきのはチャラだよね~稔~」


僕にそう言うと、ニカッと笑って見せた。


最近省吾と一緒に帰る事も無くなってたから、杉山君と交流ができるのは久しぶりだった。


確かに…杉山君が部室に来てくれるなら、久しぶりに話ができる。


「分かったよ…何が飲みたいんだよ…」


自販機にお金を入れながら言うと、直人は嬉しそうにボタンを押した。


僕の分も買うと、部室へと戻った。


これから杉山君がここに来るかと思うと、なぜかソワソワしてしまって、中々筆が進まなかった。


「集中できないなら、スケッチでもすれば?」


少し含み笑いをしながら、直人が言った。


「うっさいよ…黙って進めたら?」


筆を進めながらそう言うと、直人は少し肩をすくめた。


「あ~お腹空いたな…」


「ずっと暑いとか、なんとか言ってて進んでないんじゃないの?」


直人はうちわをパタパタと扇ぎながら、首にタオルを巻いて汗を拭いていた。


「本当に菊地っていつでも集中力が無いんだな…」


少し呆れた様な声がした。


振り返ると、そこには杉山君が入口に立っていた。


「お~杉山!いらっしゃい!」


「お邪魔します」


そう言って、杉山君は部屋に入ってきた。


「いらっしゃい…」


少しドギマギしながら言うと、杉山君はまず僕の絵を見に来た。


「風景が初めて見たけど、凄いね…なんか…景色なのに…惹きつけられる…」


「だよな!」


直人まで僕の方に来て、杉山君の肩に腕を回していた。


(ったく…気安く杉山君に触ってるんじゃないよ…べ…別に羨ましいわけじゃないからな!)


「本当に稔は天才だと思うんだよな…俺は…」


そう言った直人に、杉山君は直人をじっと見ていた。


(え?もしかして…杉山君って…直人の事好きだったりするんだろうか…)


なんとも言えないモヤモヤした感情が浮かんできた。


「ほら、俺の作品も見てよ!」


杉山君の手を引っ張って、直人の絵の前に連れて行った。


あぁいう行動力は本当に尊敬する…


「へぇ~菊地も結構うまいんだな」


「結構ってなに?そりゃあ、稔ほどじゃないけど、俺もそこそこ…」


少しむくれたように言うと、杉山君は笑っていた。


2人の空気感に、僕はなんとなく入っていけなかった。


「あ、もう杉山は帰るの?」


「あぁ…もう練習も終わったし…」


「ならさ、ご飯食べにいかね?」


「いいけど…2人は絵はもういいの?」


僕の方を向いて、杉山君は言った。


「こんな暑い環境でやってらんないから、今日はもうヤメヤメ!少しは息抜きしないとな!」


そう直人が言うと、杉山君も同意していた。


「てことで、稔!行こう!」


僕の方を向いて、直人は片づけをし始めた。


「わかった…」


仕方ないな〜という素振りをしながら、さっさと後片付けをしてしまう…


直人みたいにあんな誘い方できるの、本当に尊敬する…


羨ましいと思いながら、帰り支度をした。



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