遊園地の出来事side杉山
—side杉山健吾
美術室から俺を描いたと思われる絵を見てから、余計に増田君の事が気になっていた。
増田君に確かめる勇気もなく、日々過ぎていたがまた4人で遊園地に行くことになった。
「遊園地なんて久しぶりだな~」
猿渡先輩は楽しそうにそう言っていた。
「中学校以来だね」
その言葉に引っかかった…気になる事は聞かずにはいられなかった。
「てことは…猿渡先輩と増田君は一緒に来たって事?」
恐る恐るそう聞くと、猿渡先輩はなんなく答えた。
「あぁ、そうだよ。2家族で来たのが最後かな」
よかった…2人でデートで来たって訳じゃない事に、少しホッとしている俺が居た。
「家族と行くくらいで、友達と来るの初めてで楽しいですね~」
菊地も楽しそうに言う傍らで、俺も答えておいた。
「俺も久しぶりですね…小学生以来かも…」
「まずはジェットコースターからだな!」
猿渡先輩は増田君の手を引いて、走り出した。
「ちょっと…」
引っ張られる感じで走る姿を見ながら、俺らも遅れないように追いかけた。
ジェットコースターに乗ったけど、終着点まで着くと、増田君は怯えている様に見えた。
「相変わらずだな!稔…立ってるのがやっとだな」
笑いながら先輩が言うと、菊地が増田君を背負おうとしているのか、彼の前でしゃがんでいた。
「稔乗れよ」
「え…」
「早く乗れ!恥ずかしいだろ」
正直ああいう行動を臆面もなくできる菊地に、少しモヤモヤした気持ちが湧いた。
「おんぶって小学生かよ!」
すぐにツッコむ先輩に、小さい声で何か言っているのが分かったけど、なんと言っているのかは聞き取れなかった。
「省吾先輩、稔恐ろしい事言ってますよ」
笑いながら菊地は言うと、先輩はなんともなさそうに
「恨まれるのはいつもの事だからさ」
そう笑いながら言っていた。
ベンチまで菊地が増田君を運んでいるのが分かったから、俺は自販機で水を購入した。
増田君が座るのを確認して、ペットボトルの水を彼に差し出した。
「はい、これ飲んで」
「ありがとう…」
手渡したペットボトルを彼が受け取って、一口水を飲んでいた。
猿渡先輩と菊地は、休憩している増田君と俺を置いて、メリーゴーランドに乗っていた。
俺は彼の横に座りながら
「男2人でメリーゴーランドなんて…恥ずかしくないのかな?」
つい普通に感じた事を、そのまま口にしていた。
「そう…だよね?僕もそう思う」
同じ考えだったことに、思わず顔を見合わせて笑った。
「少しは大丈夫になった?」
「うん…大丈夫…」
「よかった」
少し顔色がよくなっているから、少しは大丈夫だとは思った。
「増田君って、絶叫系苦手なんだ?」
あんな感じだったら、きっとそうなんだろうと思った。
「そう…なんだよね…昔から省吾にグイグイ引っ張られて行くだけでさ、僕の気持ちなんて関係なくて…嫌って言えないのもよくないんだけどね」
やっぱり…これは先輩と付き合っているって事なんだろうか…思い切って聞いてみようと口を開いた。
「あのさ…」
そう言葉を言いかけた時に、2人が戻ってきた。
「たっだいま~」
明るい声でそう言う菊地は、俺と増田君の間に腰をかけた。
「稔たちは乗らないの?メリーゴーランド」
菊地は増田君の顔を見ながら、そう言うと彼は少しむくれた顔をしていた。
「乗る訳ない…省吾や直人と違って、僕羞恥心あるから…」
先輩は増田君の頭をグリグリっとして、優しい目をしていた。
「おいっ!俺らが羞恥心ないみたいに言うな!」
「痛いっ!痛いっ!」
2人でまるで恋人の様に、イチャつくような雰囲気だった。
やはり先輩からは、増田君に対して愛情を持った目をよくしている。
増田君はベンチから立ち上がると、少し怒ったように言った。
「言っておくけど、コーヒーカップも乗らないから!」
そういう増田君が可愛くて思わず笑うと、みんなも同様に笑っていた。
「じゃあ、あそこに行こう」
その後先輩に連れられて、お化け屋敷に向かった。
「え…ここ…」
増田君は時が止まったように、その場から動かなくなった。
「コーヒーカップじゃないから大丈夫だろ?」
いたずらっ子の顔をした先輩はそう言うと、増田君に手を伸ばした。
「はい!じゃあ、次は俺と行こうね~稔!」
そう菊地は言うと、増田君の手を引っ張った。
俺と先輩が先に行くことになったが、全く楽しくもないお化け屋敷だった。
基本的に俺は霊なんて信じてない…しかもこんな遊び場だと尚更だ。
先輩も同じ感じで、とても静かに進んでいると、後ろから増田君と菊地の声がしている。
増田君が怯えているであろう事はわかったけど、俺たちにはどうする事もできないから、そのまま出口まで静かに進んだ。
2人はお化け屋敷から出てきたが、その姿は菊地の腕に絡みついて目を閉じている増田君の姿だった。
その姿はとても楽しくない…思わず俺はその光景から目を逸らしていた。
「全く…稔はいつまで経っても男らしくないな~」
揶揄うように言う先輩に、菊地は笑いながら言った。
「可愛いじゃないですか~俺はこういうところ好きですよ。な?稔!」
菊地の腕にまだしがみついてた増田君が、バッと菊地の腕から離れた。
「可愛いって言うな!」
怒ったその顔がまた可愛らしいと、思ってしまった。
それから夕方になり、観覧車で最後にしようと向かった。
俺と増田君が観覧車に乗る事になり、乗り込む時に反対側の席の真ん中に慎重に座る増田君を見て、彼はもしかして高い所も苦手なのかと思った。
「どうしたの?もしかして…高い所が嫌い?」
そう聞くと、増田君の手は少し震えている様だった。
「嫌いっていうか…揺れたりするのもちょっと苦手で…」
膝に置いた手をギュッと握っている…せめて少しでも怖がらないようにするのには、どうしたらいいか考えた。
「あのさ…そっちに行ってもいい?」
俺がそう言うと、増田君はこっちを見た。
「同じ所に座ったら、少しは揺れが軽減されるかなって…」
横に行くとか、ちょっと流石に気持ち悪いだろうか?
「ただ、移動するのに揺れちゃうけど…」
極力怖がらせないように、言ったつもりだった。
「分かった…じゃあ、少し座るの横にずれるから、その間にこっちに来てくれる?」
俺の提案を承諾してくれて、少しホッとする。
「わかった」
安堵したせいで、思わず笑顔になると、増田君の顔が少し赤く見えた。
増田君が横にずれるのを見て、俺はなるべく揺れない様にゆっくりと彼の隣に座った。
「ありがとう…」
「どういたしまして」
そう言いながら隣を見ると、少し頬が赤くなった彼の顔を見ると、可愛すぎてドキドキとしてしまう。
「杉山君って絶対モテるでしょ?」
突然彼にそう言われて、思わず聞き返した。
「え?なんで?」
「こういう自然な優しさを行動できるって凄いなって…僕にはこんな事できないから…」
そんな風に言ってもらえるなんて…俺は誰にでも優しい訳じゃない、むしろ冷たいと言われる部類だ。
「誰にでもするって訳じゃないよ」
ついそう言葉にすると
「え?」
っと驚きの声が返ってきた。
これは増田君はモテるだろうな…っと俺は思った。
彼にもっと近づきたいと、そう思ってしまった。
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