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それぞれの気持ち

観覧車から降りると、そのまま遊園地を出て駅へと向かった。


「晩御飯までに帰るって約束だから、今日はここまでだな。2人ともありがとな!」


省吾は直人と杉山君にそう言うと、微笑んでいた。


「いえ、こちらこそ誘ってくださってありがとうございました」


「また誘ってくださいね!省吾先輩」


2人も省吾に言うと


「じゃ、またな~」


「それじゃ…ありがとう」


僕もそういうと、2人と別れた。


省吾と2人で歩いていると、なんとなくひんやりとした空気感を感じた。


「稔…ちょっとあの公園に寄っていかないか?」


「うん」


省吾に誘われて、人がまばらになってきた公園へと足を踏み入れた。


ちょっと人気のない場所へと行くと、ベンチに座った。


「今日楽しかったな」


ベンチに座って上を見上げると、しみじみ省吾はそう言った。


「うん。楽しかった…」


僕も今日一日を振り返り、思い出して思わず微笑んでいた。


「それで…返事をもらおうかな…」


省吾はそう言うと、僕の方を見た。


一瞬にして、その場の空気が変わった。


僕は膝の上の手をギュッと握って、意を決して口を開けた。


「僕は、やっぱり省吾とは付き合えない…」


その言葉を発すると、省吾は上を向いて息を吐いた。


「続けて…」


「僕なりに考えたし、ここ最近の省吾の事を真剣に見ていた。同性とかそういう事を抜きにして、一人の男性として恋愛できるかどうか考えたよ…」


省吾は何も言わず、そのまま沈黙していた。


「省吾は優しいし、頼りになる…僕の事を大切にしてくれるし、愛情も感じた…僕も省吾の事は好きだし、大切にしたいと思ってる…けど…恋愛のソレとは違う…」


「うん…」


小さくそう言って、そのまま黙っていた。


「省吾と一緒に居ると楽しいし、安心するし、とても穏やかだよ…でも、恋愛対象として、僕は省吾を見る事ができない…ごめん…」


省吾は首を垂れると、深く息をはいた。


「分かってたけど…きっついな~」


声が震えているのが分かる…だけど、僕はそんな省吾にかける言葉が見つからなかった。


省吾は顔をあげると、足に肘をついて真っすぐ見つめて言った。


「分かってたよ…最初から…あのスケッチを見つけた時からさ…俺には稔の中に入れないんだろうなって事は…」


省吾の方を、僕は静かに見ていた。


「杉山を見ている稔の目をみたら、誰だってわかるよ…」


そこまで言うと、僕の方を見た。


「ちゃんと考えてくれたのは凄く嬉しかったよ…ありがとう稔…」


僕の頭を撫でると、すっとベンチから立ち上がった。


それに合わせるように僕もベンチを立つと、省吾は手を差し出していた。


僕も省吾に手を差し出して、握手をした。


「幼馴染としてまた接するけど、少しだけ時間をくれる?さすがに明日から、はいじゃあ幼馴染だねって訳にはいかないからさ…」


そういう省吾の目は、優しく微笑んでいたけど、とても悲し気だった。


「うん…省吾から話しかけてくれるまで、僕からは近づかないよ…」


そう言うと、握手をほどき、僕の肩に手を置いて


「じゃあ、またな…先に帰って…俺はもう少しブラブラしてから帰るよ…」


僕は頷いて、手を挙げて公園を後にした。


省吾に全部気持ちを伝える事ができて、僕の心は軽くはならなかった。


気持ちが少しわかるというか…恋するって時に残酷だなっと思ってしまった。


省吾にとっては、僕が彼を愛する事ができていれば、幸せだったのかもしれない…


でも、僕には僕の幸せの形がある…


決して杉山君に言えないから、ある意味省吾と一緒なのかもしれない…


でも、省吾は凄いな…関係が変わるかもしれないのに、自分の気持ちを素直に僕にぶつけてくれた。


僕は杉山君に対して、そんな事できない…


勇気がない…やっぱり省吾はカッコいいな…


僕は暗くなりかけた空をぼんやりと眺めながら、静かに歩き出した。



—side猿渡省吾

やっぱり…答えは最初から分かっていた。


稔は杉山が好きで、俺の事は幼馴染の兄くらいにしか思っていなのは分かっていた。


あの絵を見た瞬間、俺は息が止まる感じがした。


絵から愛情が溢れていて、それに嫉妬した。


わざと杉山と稔を、引き合わせる様な事をした。


稔が杉山との関係を少しずつ築いている…


杉山が稔を見る目が、普通のソレとは違っていた。


絶対2人は惹かれあっているとは分かっていた…


それが決定的になったのは、今日だった…


あの観覧車から見た景色は、俺にダメージを与えるには十分だった…


2人が並んで座っているのを見て、俺の心臓は痛みを感じた。


分かっていたはずだった…でも、稔が俺の側から離れていくのがこんなに辛いとは思ってなかった。


稔の気持ちは分かってたはずなのに、それを突きつけられるとしんどいなぁ…


「せーんぱい」


明るい声で直人が声をかけて、こっちを見ていた。


「なんだよ…」


「なんて顔してんですか…今にも死にそうですよ」


そう言って微笑みかける直人の目は、とても優しかった。


「そういうお前も稔の事好きなんだろ?」


俺がそういうと、直人は少し驚いた表情をした。


「へぇ~バレてたかぁ~」


「それはもう…あれでバレてないとかないだろ」


直人は「ふ〜ん」という顔で、僕をじっと見ていた。


「といっても、俺は省吾先輩みたいに脅したりしないけど?」


それを言われると、痛いな…


「はは…そうだな…」


「俺は告白なんてしないですよ…ずっと傍に居たいですからね~」


冗談まじりで言っているが、直人の考えもわかっていた。


俺も最初はそのつもりだったからだ…


自分の気持ちを伝えてしまったら、一緒にいる事が難しくなることが分かっていたから…


でも…自分の気持ちが衝動的に動いてしまった…それでも稔を手に入れたいと思ってしまった…


でも、それも今日まで…


俺には諦めるという事しか残っていない…


この気持ちを封印するには、どうしたらいいのか…俺には分からなかった…


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