進展する関係
ベンチまで直人に運んでもらって、座っていると杉山君が水を買ってきてくれた。
「はい、これ飲んで」
「ありがとう…」
手渡された水を受け取ると、僕はそれを一口飲んだ。
省吾と直人は2人でメリーゴーランドに乗っている…
よく恥ずかしくないよな…
杉山君は僕の隣に座りながら、言った。
「男2人でメリーゴーランドなんて…恥ずかしくないのかな?」
思わず同じ考えをしている杉山君に驚いた。
「そう…だよね?僕もそう思う」
思わず顔を見合わせて、2人で笑った。
「少しは大丈夫になった?」
「うん…大丈夫…」
ペットボトルを握りながらそう言うと、杉山君は「よかった」と小さくつぶやいた。
「増田君って、絶叫系苦手なんだ?」
「そう…なんだよね…昔から省吾にグイグイ引っ張られて行くだけでさ、僕の気持ちなんて関係なくて…嫌って言えないのもよくないんだけどね」
そう言って笑って杉山君を見ると、少し瞳が曇った気がした。
「あのさ…」
杉山君がそう言いかけた時に、省吾と直人が帰ってきた。
「たっだいま~」
明るい直人が、僕と杉山君の間に座った。
(なんで邪魔するんだよ…僕の気持ち知ってるくせに…)
と、少し直人を心の中で恨んだ。
「稔たちは乗らないの?メリーゴーランド」
「乗る訳ない…省吾や直人と違って、僕羞恥心あるから…」
そう僕が反論すると、省吾は僕の頭をグリグリっとしてきた。
「おいっ!俺らが羞恥心ないみたいに言うな!」
「痛いっ!痛いっ!」
こういう所が省吾の嫌いなところ…
僕はすっと立ち上がると、省吾の攻撃から逃げた。
「言っておくけど、コーヒーカップも乗らないから!」
そう言うと、3人が同時に笑っていた。
そこ…笑うところじゃないんだけど…
「じゃあ、あそこに行こう」
ニヤッと笑みを漏らすと、省吾は僕たちを連れて歩いて行った。
「え…ここ…」
その場は絶叫系の次に苦手な…お化け屋敷だった。
「コーヒーカップじゃないから大丈夫だろ?」
悪い顔をした省吾に、僕の足は前に動かなかった。
「はい!じゃあ、次は俺と行こうね~稔!」
そう直人は言って、僕の手を引っ張った。
先行は省吾と杉山君で、その後を僕と直人が進む。
薄暗い通路の中は、おどろおどろしい雰囲気に僕はびびっていた。
「怖い?」
含み笑いをしながら耳元で言う直人の腕に、必死にしがみついた。
「これが女子ならギャンカワってところだな」
「悪かったな…女の子じゃなくて…」
捕まっている腕と反対の手で、僕の頭を撫でた。
「クッソ…直人の癖にイケメンな対応じゃん…僕が女子なら惚れてるかもね」
そう僕は意地悪く言うと、いきなりオブジェが動いて、腕にしがみついたまま目をつぶった。
「可愛いな…稔は…」
僕たちはそのまま進んで、その間ずっと直人の腕にしがみついたまま、目を閉じて出口へと出た。
「全く…稔はいつまで経っても男らしくないな~」
揶揄うように言う省吾に、直人は笑いながら言った。
「可愛いじゃないですか~俺はこういうところ好きですよ。な?稔!」
直人の腕にまだしがみついてたのに気がついて、バッと離れた。
「可愛いって言うな!」
杉山君の前で恥ずかしい姿を見せた事で、僕はかなり動揺していた。
それからフードを食べたり、他の乗り物なんかも堪能した。
夕方になり後は観覧車で終わろうという事になり、乗りに行った。
省吾と直人、僕と杉山君で観覧車に乗る事になった。
2人で観覧車に乗り込むと、なるべく椅子の真ん中に座った。
対面には杉山君が座っている…こんないいシュチュエーションなのに、少し風に揺れるこの空間が怖かった。
「どうしたの?もしかして…高い所が嫌い?」
優しい声で言う杉山君の方を、見た。
「嫌いっていうか…揺れたりするのもちょっと苦手で…」
膝に置いた手をギュッと握りながら、そう言うと杉山君は優しく言った。
「あのさ…そっちに行ってもいい?」
その言葉に驚いて顔をあげて、杉山君の方を見た。
「同じ所に座ったら、少しは揺れが軽減されるかなって…」
その提案は嬉しいけど、杉山君がこんな狭い空間で隣に座るって事が、怖いというより恥ずかしい事に思えた。
「ただ、移動するのに揺れちゃうけど…」
杉山君は優しさで言ってくれている…それを断るなんて僕にはできなかった。
「分かった…じゃあ、少し座るの横にずれるから、その間にこっちに来てくれる?」
「わかった」
そう言って微笑んだ彼の顔が、とてもカッコよくて顔が赤くなった。
僕が横にずれると同時に、杉山君が僕の隣に移動してきた。
彼はなるべく揺れないように、ゆっくりと移動してきてくれた。
「ありがとう…」
あまりに恥ずかしくて、下を向いたままお礼を言うと、杉山君は優しく言った。
「どういたしまして」
ただ、観覧車の中は狭いから、どうしても男2人が座るには、この椅子は狭い…だから僕の足と彼の足が触れていて、彼の体温を感じた。
(これって…なんか…)
よく考えたら、これって恋人とかがするような事で、僕が杉山君の隣にいていいんだろうか…
「杉山君って絶対モテるでしょ?」
「え?なんで?」
無自覚かぁ…こんな事をさらっとできる彼は、計算でしていない事が分かった。
「こういう自然な優しさを行動できるって凄いなって…僕にはこんな事できないから…」
そう僕が言うと、少しの間があってから彼が言った。
「誰にでもするって訳じゃないよ」
「え?」
その言葉に驚いて、杉山君の方を見た。
この意味って、僕の事を仲間だと思ってくれてたりするのかな?
そう考えると少し腑に落ちて、それがこの上ない喜びを感じた。
この様子を省吾が見ていたなんて、この時の僕に気がつかないくらい杉山君の事しか考えられなかった。




