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届かぬ調べに、心が響き合い  作者: 相沢蒼依


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第五章 恋の鼓動と開く心5

***


 100m走など足の速さを競う競技はもとより、クラスの団結力を試す騎馬戦、借り物競争など、男子校らしい出し物が体育祭に組み込まれており、わざわざ見に来る来賓者も楽しめるようなものがあった。


 そこに今年は先生方が課した競技も追加され、今回は二人三脚をするように指定されたのだが――。


「西野はB組の応援団長やったり、最後の勝敗を握るリレーにも出るんだから、二人三脚は休んでろ」


 佐伯がしれっと言い放ったら、周囲にいるクラスメイトは互いに目を合わせる。冷徹な副委員長の佐伯に楯突こうとする気の強いヤツはいないので、自分から悠真と一緒に出たいと言わなければ、競技に参加することはかなわないだろう。


「佐伯、俺は――」

「俺、陽太と二人三脚に出たい!」


 クラスメイトが輪になって相談する中、悠真がみずから挙手して参加を表明した。そのことに俺だけじゃなく、ほかのヤツらも驚きを隠せずに、黙ったまま手を挙げている悠真を見やる。


「100m走、僅差でA組に負けたのがどうしても悔しくて。リベンジしたい」

「悠真、俺と一緒っていうのは……」

「気合いが入りまくってる、友達の陽太とペアを組めば、絶対に一位になれるから」


 淀みなく語られる理由に、あちこちから意味深な視線が俺に注がれた。


「月岡がリベンジしたいという気持ちはわかった。西野、出られそうか?」


 この状況を楽しんでいるのだろう。佐伯は含み笑いでわざわざ俺に訊ねる。


「悠真の誘いを断るわけがないだろ! 一位を目指してやってやるぜ!」


 ガッツポーズを作りつつ、フェロモンを垂れ流した。気分が高揚するこの場面なら、クラスメイトの士気が確実に上がる。そのタイミングで、目立ちたがり屋が大きな声を出した。


「西野委員長に続かなきゃな! 二人三脚、あと二組ペアを作らなきゃだけど、誰が出る?」


 こうしてB組の面々は内輪で盛りあがりながら、勝敗の決まっていない競技の勝利に向けて、A組に負けないくらいに士気をあげた。




 二人三脚は、各クラス6人3ペアが出場することになってる。走る距離は50mだが、ふたりが息を合わせて走るとなると、地味に大変な距離だと思われる。


 出場するメンツとの話し合いで、俺と悠真は最終グループに出ることになった。確実に勝つと言い切ったため、是が非でも勝利しなければならない!


「いいねいいね、皆盛り上がってるなぁ」


 一眼レフカメラを片手にコースに現れたのは、お馴染みの長谷川先生だった。


「西野、いろいろ大丈夫か? 月岡とそんなふうに密着してよ!」


 互いの足首を紐で縛り、肩を組んでくっついてる様子を、長谷川先生は意味深な笑みを浮かべて眺めた。


「二人三脚なんだから、密着して当然だろ……」

「西野の西野が火を吹いたら大変だと思って、わざわざ心配してるのにぃ」

「長谷川っち!」


 恥ずかしさでうまく言い返せない俺と、俺らのやり取りを見てキョトンとしてる悠真の写真を撮られた。


「ほらほら西野、ここは笑うべきとこだぞ。いい写真を撮らせろって」

「ムカつくことばかり言うからだろ」

「これから競技に挑む西野を、俺なりにリラックスさせてるんだよ」


 ニヤニヤしながら告げられても、まったくリラックスしそうにない。


「陽太、長谷川先生と仲がいいよね」

「月岡そうなんだよ。先生と西野って息がピッタリなんだ」


 柔らかくほほ笑む悠真の笑顔を、一眼レフで撮影した長谷川先生に、あとで写真をもらおうとちゃっかり計画を立てる。


「長谷川っち、もしかしてだけど先生方が考えた競技って――」

「ビンゴ! 俺の意見が通ったんだ。ものすごく感謝しろよ」


(俺が喜ぶと思って、二人三脚を提案したのか。それともラットにならないように訓練を兼ねているのか、わかったもんじゃない!)


「月岡、西野の呼吸に合わせて足を動かせよ。コイツは深呼吸の達人だから、一定のリズムで普段から行動してるからさ」

「アドバイスありがとうございます。陽太は深呼吸して、フェロモンの調整がんばってますもんね」


 楽しそうに会話したふたりが、そろって俺の顔を見る。告げられた言葉が照れくさくて、頬がぶわっと赤くなったのがわかった。


「さてと。卒業アルバムに使うんだから、3年生もきちんと撮してやらなきゃな!」


 無言を貫く俺との不毛なやり取りを終わらせるべく、長谷川先生は颯爽と踵を返した。

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