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届かぬ調べに、心が響き合い  作者: 相沢蒼依


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第三章 恋の作戦と届かない想い5

***


 授業がはじまっている。ちゃんとしなければ「委員長のくせに気が抜けている!」と佐伯からツッコミを入れられるかもしれないので、必死こいて集中しようとがんばった。それなのにさっき目の当たりにした、迫力のある悠真のアップがどうしても頭の中を支配する。


 それと同時に、先ほどまでのやり取りを思い出した。


「返すのはいつでもいい」とか「無理して読まないこと」など、俺が普段から本を読まないのがわかっているゆえに、悠真はそういう気遣いをしてくれたのだろう。


(あのお願いをしたということは、図書委員の権限を使って、俺の読書履歴を見たっていう可能性があるよな――)


 本が大好きな悠真の目に、本を読まない俺の読書履歴が映ったことを考えただけで、ガックリと項垂れたくなる。まさに、いいところなしの状態。しかもここでやさぐれて、中途半端な態度で授業を受けたりしたら、冷酷な副委員長様に叱られること間違いなし!


 とりあえず今なすべきことは、まず授業に集中しなければならない。


 俯かせていた顔を上げ、先生からなされる丁寧な説明に耳を傾けた。周りからノートに書き込みする、シャーペンの音が聞こえる。


「ううっ……」


 残念なことに顔を上げると、必然的に悠真の後ろ姿が視界に入った。授業に集中しようとするそばから、大好きな悠真の姿を見ているだけで、なんとも言えない気持ちになる。


(悠真から借りた本をしっかり読んで、感想を告げてやれば、絶対に盛りあがるのがわかる。問題は、いつこの本を読むかだ……)


 しっかり授業を受けてますという真面目な態度をとりつつ、教科書の下に隠した、悠真から借りた文庫本をちょっとだけ覗かせる。悠真が憧れていると言った主人公のタクミが、長剣を掲げて格好よくポーズを決めてる表紙をチラ見しただけで、不快感を覚えた。この時点で嫌な予感がする。


 表紙を見ただけでこんな感情が芽生えるということは、中身を読んだら、もっと不快感が増すのではないだろうか。


 そう考えついた瞬間、ぞわっとして額に汗が滲み、思わずフェロモンが漏れそうになったのがわかり、慌てて深呼吸をしてせき止める。


 恋を自覚してからというもの、感情の浮き沈みが激しすぎて、フェロモンのコントロールをするのに戸惑った。アルファじゃなければ、こんな苦労をしなくても済むというのに、どうして――。


「どうして俺は、アルファなんかに生まれちまったんだろうな」


 こんなことを考えつくなんて、今までなかった。アルファでいる苦労よりも、優秀だからとか思った通りに事が運ぶなど、楽しいことばかりの経験が山積みで、アルファでよかったと思っていたのに。


(アルファのフェロモンが悠真に効かない時点で、アルファでいる意味がない。それって悠真の優しさに釣り合わない、情けないアルファだよな)


 どんよりとした気持ちを抱えながら、授業を受け続ける。先の見えない自分の恋の行方に不安感しかなかったが、悠真の笑顔を見るために、借りた本を少しでも読もうと決意を固めたのだった。

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