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届かぬ調べに、心が響き合い  作者: 相沢蒼依


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第三章 恋の作戦と届かない想い

 昼休みが終わり五時限目のチャイムが鳴る中、教室に戻った俺は机に突っ伏して、佐伯の言った自分のいいところを悶々としながら考えた。


 アルファのフェロモンを使わないって決めたけど、正直なところなにが武器になるのか、さっぱりわからなかった。


 突っ伏していた頭を上げ、目の前にいる悠真の背中を眺める。


 悠真は俺がテストのヤマ張りを真面目にしていると思っているらしく、あれから全然話しかけてこない。昨日なにかと一緒にいて、なんやかんや盛り上がったあとだけに、どうにも寂しい。


(とにかく策を練るんだ。俺のいいところを悠真に見せなきゃ、なにもはじまらないじゃないか!)


 恋愛の先輩にあたる佐伯の手腕を知りたかったのに、榎本の口を塞がれたのは実に痛い。アイツらなんてクラスが違うせいで、俺と悠真よりも接点がないというハンデを背負っているハズなのに、恋人同士になった奇跡の理由を知りたかった。


 悶々と考えてる間に先生がやって来たらしく、授業がはじまっていて、クラスメイトのひとりが前に出て、黒板に書かれた問題を解いている姿が目に留まる。


「確かあの問題は、宿題に出されていたヤツだったか……」


 慌てて教科書を捲り、宿題が書かれているノートも開く。結構難しい数式の問題で、解くのに時間がかかってしまい、悠真を落とす作戦を考える暇がなかったことを思い出した。


 結局、寝る前にいろいろ思いついて、深く作戦を練らなかったことと、フェロモンを爆散したせいで、失敗に終わった悲劇まで脳裏に流れたため、いいアイデアが出なかった。


 だからこそ次は失敗しないように、計画を立てなければならない。


「俺のいいところって、まずはアルファだってことだろ……」


 アルファだから成績だって優秀、スポーツも万能。人当たりもよく、クラスをまとめるのも得意だし、顔だって悪くない。同じアルファの佐伯と比べても、引けを取らないと胸を張って断言できる。


 そう言い切れるのに、自分に自信がない――現に昨日バスケでうまいこと活躍してみせたのに、悠真の反応は俺のプレーより、その後の体育館がカオスになったことに着目したせいで、がんばったバスケが無になってしまった。


(どんなアピールをすれば、悠真の心を掴むことができるんだよ。さっぱりわからねぇ……)


 黒板の書き込みを見て、クラスメイトがノートにシャーペンを走らせる音が聞こえても、俺の手は固まったまま動かない。 昨日の難しい数式は時間をかけて解くことができたのに、恋については性質そのものが未知すぎて、考えあぐねてしまったのだった。

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