四話 勝利
『聖獣の卵よ。お主は何を望む?』
意識が霞む中、突然、声が頭に響いた。いつの間にか目の前に大きな白い獣が座って俺を見つめていた。
「護る力が欲しい。」
『誰を?何の為に?』
「優しいリリィのことが好きなんだ。」
『その者の命尽きるまで添い遂げられるか?』
「できるのなら。」
『良かろう。』
白い獣が俺の心臓に鼻先を当てた。すると、蹴られた痛みが引いていく。立ち上がってみると、見える世界が低い。背が低くなったような…いや、違う。四足歩行の獣になっている。
『今すべきことは何だ?』
今まであった違和感が少し和らいだことに疑問を抱いていたところで、現実に引き戻された。
「盗賊の無力化。」
『では、思うままにやってみよ。』
獣の戦い方なんて知らない。だから、突進をしてみる。身体が軽い。さっきまでの身体が嘘のようだ。俺を蹴っていた盗賊は飛ばされて、木にぶつかって気絶している。他の盗賊が俺に剣を向けてきた。
「獣になって強くなったからって調子に乗るなよ!」
一斉に攻撃されたが、軽々と避けることが出来た。避けた先は空中。何も出来ない。でも、吠えることは出来る。攻撃になりそうなもの…超音波か?とりあえずやってみる。
「ガゥアアアアアアアア!!!」
耳を塞ぐ者、倒れる者がいるあたり、成功なのだろう。その隙に残っている盗賊に突進をした。噛みつきたくはなかった。突進で全員気絶したのだから良いだろう。