一話 魔力無し
俺、ルカ・レイラは貴族、平民、誰もが通う学校で今、公爵家の息子であるにも関わらず、苛めを受けている。
「魔力無しはこの国に必要無い! 」
そう言ったのは同じく公爵家の息子、カミユ・アイラだ。
この国、ミラ王国は決して魔力至上主義の国ではない。ただ、この国、いや、この世界には、誰もが魔力を大なり小なり、体内に持っている。そんな中、俺は全く魔力を持たずに生まれた。理由は未だわかっていない。
「必要よ! 魔力が無くても同じ人間よ! ……それに、私には必要なの。」
この国の第一王女リリィ・ラ・ミラが庇ってくれた。最後は小さすぎて何を言ったかわからなかったが。
「ありがとう。リリィがそう言ってくれるだけで嬉しいよ。」
「……どういたしまして。」
彼女が顔を赤くして、また小さな声で言った。
「将来、王位に就かれるリリィ様に対して不敬だぞ! 」
そう、彼女は王位継承権第一位でもあるんだ。その証拠に王家の中でも王様を表す「ラ」が氏名の間に入っている。だが、彼女は俺の幼馴染でもある。本来なら敬語で話すべきなんだが、彼女が嫌がるんだ。仕方がない。
それが好ましいことでないとわかっているから、彼女は何も言い返せない。もちろん、俺も言い返さない。それでも俺から離れる気はないと言うかのように、カミユを睨んでいると、彼が折れた。
「いつまでもそれでは、リリィ様にとっても彼にとってもよろしくありませんよ。」
彼女にそう言って、離れていった。
「おはようございます。本日の講義を始めます。」
みんなは先生が教室に入る前に着席している。それが当たり前で、先生が苛めを知ることはない。