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とある片隅の記憶

「ほら、早く帰ろ」


「やだぁ!まだ遊ぶの!」


「そんなこと言ってたら置いてくぞ」


「やだやだやだ!」


 その日はそう、むしゃくしゃしていたんだと思う。理由は多分、サッカーでゴールが決められなかったとか、カードゲームで負けたとか、将又鬼ごっこで女の子相手に逃げられた、とか。


 そんなありきたりで、思い出してしまえば何の感情も湧かない。そんな不確かで曖昧な理由だったんだろう。


 実際何も覚えていないのだから。


 そんな夕暮れ時—


一つ大きな後悔を落とした。




—暗転




 赤く点滅した光は、日の落ちた辺りを再び夕暮れ時に戻ったようだった。否、それ以上に赤く、思わず目を逸らしてしまうような光。


 暗闇の中辺り一面に広がった、目を覆いたくなるような夥しい赤を際立たせるかのように。




—暗転




 誰かが言い争っているようだ。隅っこで両足を抱えて、ただその様子を見上げていた。


 この場から消えたいと思ったのだろうか。それとも、「死にたい」と思ったのか。


 目の前の怒声が先ほどよりも耳に届くようになった。それもそうだ。怒声を浴びせる先がこちらになったのだから。


 耳に届くようになったはずの言葉は、頭が拒絶したかのように理解できない。そして気付いた時には、その声は聞こえなくなっていた。正確には薄らと聞こえるが、気にならなくなっていた。そして遂には、その様子も目に映らなくなった。


 あぁ、よかった。自分に向けられた言葉じゃなかったんだ。


 耳を塞ぎ、目を閉じ、抱え込んだ両足に顔を押し付けながら、その少年は笑みを浮かべた。


 その時口に入り込む無味の液体は、止めどなく流れたままだった。




—暗転




 薄らと開けた目に最初に飛び込んできたのは、目まぐるしくすぎていく光明だった。寝ぼけ眼のまま辺りを見回すと、前に座席が2つあるのが見える。


 そこにはハンドルを握る誰かが居た。その人はルームミラー越しにこちらを見ると、安心したように静かに笑った。


 今思えば、すごく寂しそうな笑みだった気がする。


「やっほー。起きた?」


 その問いかけに無言の相槌で返すと、その人は突然屈託のない笑みを浮かべた。


「よし、じゃあ今から旅行行こっか!」




—暗転




—暗転




—暗転




◇◇◇




「はぁ、寒いなぁ」


「…」


「服貸してあげるよ」


「…」


「ほっぺもこんなに冷たいし」


「…」


「雪、すごいなぁ。止むかな?」


「…」


「後で一緒に雪だるま作ろっか」


「…」


「ほら、そろそろ起きないと」


「…」


「んー、起きないなぁ」


「…」


「俺も寝よっかなぁ」


「…」


「起きたら晴れてるといいね」


「…」


「おやすみ




— —ちゃん」

遅くなりました、すみません。


番外編は後2話ほどありますので、早めに出します。

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