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「でも蓮はアメリカに来なかったよね」


「アメリカには行ったよ。菜摘に振られたけど君のこと気になってたから時々様子を見に行ってた」


わたしが振った? 何を言ってるの? わたしは目の前に座っている蓮の目を見る。わたしの目は驚きでいっぱいだ。蓮の目に嘘が隠れていないか探したけど見つからない。本当にわたしのためにアメリカに来ていたのだろうか? 責任を感じていたから? それとも本当にわたしの事を好きだったの?

これは許容範囲を超えた気がする。わからない事だらけでパンクしそう。

蓮はユカが好きだった。だから一番にユカを助けたしわたしを忘れてしまった。今さらそれ以外の真実があったなんて言われても困る。わたしは十年もそう思って生きて来たしもう昔には戻れない。


「帰る」


わたしはもう蓮の話を聞きたくなくて立ち上がった。これ以上聞いているとおかしくなりそうだ。


「待ってくれ。最後まで聞いてほしい。俺は間違ってた。ユカの事を菜摘が気にしてるなんて思ってなかったんだ。いつも三人でいたから分かってくれてると思ってた」


「何をわかるの? ユカが一番大事だっていつも態度で教えてくれてたじゃない。今になってそんな風に言われても困るの。だいたい本当にアメリカにいたのならどうして会いに来てくれなかったの? わたしはあんな事言ったけど落ち着いたら二人とも会いに来てくれると思ってた。その時は二人が恋人同士になってても歓迎するつもりだった。アメリカで一人で手術に耐えてリハビリして寂しかったのに蓮は一度も会いに来なかったし手紙だってくれなかったじゃない」


言うつもりのない泣き言をぶつけてしまった。蓮はきっと驚いている。わたしはいつだって蓮に声を荒げた事はなかった。そう言う女性を蓮が嫌っているって知ってたからいつも冷静な態度で話していた。本当はいつだって蓮に問いただしたかった。わたしの事をどう思ってるの?って聞きたかった。


「泣くなよ。菜摘が泣くと俺が困る」


わたしはいつの間にか泣いていたようだ。

蓮は涙を止めるためなのか抱きしめてきた。わたしの涙は蓮の服に吸収されていく。化粧も落ちてるかもしれないから蓮の服は大変な事になるだろう。でも、これは蓮のせいだからわたしは気にする事なく思いっきり泣かせてもらった。

長い間人前で泣く事はしなかった。夜、一人ベッドの中で泣いていた。特にアメリカに行った当初は毎日のように泣いていた。


「ごめんな。俺が気付いてやれなくて本当にごめん。アメリカで一緒にいてやれなくて悪かった」


蓮が謝っているのが聞こえる。本当は蓮が悪いわけじゃない。わたしが意地を張って「会いたくない」なんて言ったから会いにきてくれなかったこともわかってた。

だからアメリカに会いに来なかった蓮を責めて泣いてるのはわたしの我儘だ。それなのに蓮は「ごめんな」って謝ってくれる。ギュっと抱きしめて頭を撫でてくれる手はとても優しい。

少しずつ泣き声が小さくなると急に恥ずかしくなってきた。とてもじゃないけど顔を上げられない。仕方ないので顔をゴシゴシと服になすりつけて誤魔化している。

そんなわたしの行動にも蓮は何も言わない。いつもなら「鼻水を人の服につけるな」とか言いそうなのに黙ってわたしを抱く腕を緩めない。


「俺さぁ、本当に馬鹿だったから菜摘をいっぱい苦しめてたんだな。玲子さんに言われるまでユカと俺が噂になってたことも知らなかった。菜摘に好きだって言ってない事にも気付いていなかった」


「それは仕方ないよ。だって蓮はわたしの事を好きだって思ってなかったでしょ?」


顔は相変わらず隠しているけどモゴモゴと返す。


「好きだったに決まってるだろ。好きでもない女と一日中同じ部屋にいないし、毎日のように会ったりするわけない。だいたい勉強だって好きでもない女に教えたりしないよ。下心があるから勉強会なんて名目でマンションに呼んだんだ」


「それはわたしが幼なじみだったからでしょ? それに勉強会はユカも一緒だったから」


「ユカが勉強会なんてすぐに飽きるってわかってた。二、三日すれば菜摘と二人っきりになれるって分かってて仕組んだんだ」


え? それって初めからわたしと二人っきりになるつもりだったって事なの?

それはそれで恥ずかしいんだけど。だってそれって蓮がわたしの事を好きだったみたいじゃないの。



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