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16 蓮side


菜摘のことを意識し始めたからと言って何か変わったわけではない。相変わらず俺はユカを優先したし、ユカと二人で遊ぶ事はあったけど菜摘と二人で会う事はなかった。

それは高校生になってからも変わる事はなかった。二人でいる時に何かあればユカを助けて菜摘のことは後回しにしていた。それが俺たち三人の関係だった。

ユカに彼氏ができたのは高校三年の五月だった。ユカは俺たちには内緒にしていたけど俺はすぐに気付いた。その時俺はあまりショックを受けなかった。高校二年の時にも進路のことで父と揉めてユカのことを放っていた時期があり、その時もユカが男と出かけていたから彼氏という存在もユカが騙されているのでなければ容認できた。結局俺はユカのことを妹のように可愛がってるだけで女として見ていなかったのだ。

それでも中学の時に一回だけユカとキスをした。それはその場の雰囲気というか流れでなんとなくキスをしたのだが、かなり濃厚なキスになったのにまるで反応しなかった。それはユカの方も同じだったみたいで


「なんか違うね」


と呟いていた。それ以上の行為に進みたいと思わないのだから俺にとってユカは女ではなかったのだ。では菜摘のことはどうかと聞かれれば、高校生になった菜摘は俺の守備範囲で抱きたい女の中に入っていた。けれど遊びで手を出せる存在ではないので決して二人っきりにならないようにしていた。元々二人で会うこともなかったのでそれはうまくいっていた。幼なじみと言っても俺と菜摘は間にユカがいなければ会うこともあまりない二人だった。


「そっかぁ。お前らって昔はいつも三人でいるところかユカと二人でいるとこしか見なかったけどそういう関係だったんだ。お前は菜摘を意識しだしてからは束縛されたくなくて逃げてたってことか」


いつのまにかビールや酒がテーブルに並んでいて、それをたらふく飲んだ俺は一也さんに聞かれるままそれまでのことを話していた。


「なんか菜摘には手を出したら終わりみたいなものを感じたんだ。他の遊んでるような子にはいくらでも手を出せたけど菜摘は違ったんだよな。結局三年の夏には我慢できなくなって手を出したんだけど、菜摘も嫌がらなかったしなるようになったんだなって思ってた」


「それで今は後悔してるってか?」


「ああ。手を出したことは後悔してないけど、菜摘に何も言ってなかったことを後悔してる。言わなくても通じてるって……そんなわけないのに……馬鹿だったよ。おまけにあんな身体にして……今さら好きだって言っても信じてくれないよな」


飲みすぎたかもしれない。最後の方は泣き声になっていた。女々しいのは嫌いなのに、振られた後に縋って来る女は大嫌いなのに自分がそうなりそうで最低な気分だった。


「俺は女じゃないからなんとも言えないけど、お前は自分ができることをするしかないんじゃないかな」


「俺にできることか。何があるんだろうな」


まだ菜摘の怪我は完全に治ったわけではない。今からが大変になるって。足の怪我は整形外科による再手術が必要だし、歩けるようになるためには何度も手術する事になる。その度にキツイリハビリが待ち受けていて菜摘の未来は暗い。その手助けを拒否られた俺に何ができるのだろう。


「アメリカはどうするんだ? 振られたから日本の大学に通うって玲子さんに言うのか?」


そうだった。もう菜摘の行く医療機関の近くの大学に入学する事になっている。今なら取り消すことも可能だが玲子さんに言ったらなんと言われるか……。


「玲子さんには言えない。今さら進路は変えられないし、日本からだと何かあっても助けられない。振られたけど、菜摘のことが気になるから遠くから見守る」


「遠くからって…それだと全然遠くないだろ。はぁ、どうでもいいけどストーカーで捕まるようなことだけはするなよ」


ストーカーになるなよではなく捕まるなよってあたりが気になるけどアメリカで捕まったらシャレにならないなと思うので頷いておいた。その時の俺は菜摘とはすぐに元の関係に戻れるだろうとタカをくくっていた。まさか十年も別れたままになるなんて考えてもいなかった。


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