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邪悪なる龍生 〜あくまで勇者のペットのドラゴン〜 作者:魔法陣
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1話 目覚める邪竜

――唐突だけど、俺、龍に転生します。


 元人間であったことはかろうじて覚えているんだが、記憶も曖昧で、自分の名前や容姿など全く思い出せない。

 そんな俺が鮮明に覚えていることが、一つだけある。

 「愚かな人の子よ。無残に散った哀れな者よ。貴様にもう一度命をくれてやる。邪悪な龍となり、この世を暗黒に染めるのだ」

 地獄の底から這い上がるような耳障りな声であった。

 生まれる前から邪悪呼ばわりは不服だが、ドラゴンってのは悪くない。こうなったらとことん堕ちてやろう。邪の道を極めてやろうじゃないか。

 まるで悪役ロールプレイのように意気込み、俺は目を開けた。

 いざ、俺の邪悪なる龍生ドラゴンライフの幕開けだ――!



 ◇ ◇ ◇



「…………う」

 目覚めた俺がいたのは地獄でも魔界でもなく、見知らぬ部屋だった。

 自分の姿を確認する。黒い鱗に覆われた真っ黒い体。まさしく邪悪なドラゴンというにふさわしい姿であった。

――異様に小さいことを除いて。

 いやー、てっきり大人のドラゴンになれるものだと思っていたんだけど? 幼体からやらされるなんて聞いてないぞ!


 それにしてもここはどこだ? 龍の住処にしては手狭だし、そもそも今座っているのはお花柄にレースのついた布が敷かれたバスケットの中だ。邪悪感はない。

 もしかして人間に捕まったとか? なんてこった。このままじゃこの世を暗黒に染められない! それどころか、善良な龍として育て上げられてしまうかも――

「あれ? アンタ起きてたの?」

「うぎゃう!?」

 唐突に声をかけられ、悲鳴を上げる俺。なんだようぎゃうって。邪龍の名が泣くぞ。

「うぎゃうだって! 何よそれ! あはは!」

 いきなり笑われる。なんなんだ一体。確かにみっともない悲鳴だったけど、そこまで笑われる筋合いはないと思うんだが!

 ツボにはまったのかこちらを指差して笑い続ける少女。

 髪は金髪。腰まで伸びた長い髪が印象的。

 瞳は鳶色。ちょっとつり目気味。

 整った顔に白い肌。美少女である。ぶっちゃけ、かわいい。紛れもない美少女です。

 と、ケラケラと笑っていた少女の笑いが収まる。と思ったら今度はじっと見つめてきた。なんだか恥ずかしいぞ。

 邪竜だというのに、俺は美少女に見つめられて照れてしまっている。いや、よこしまな感情を抱いているという意味では正しいのかもしれないぞ? そういうことにしておこう。

「……ねぇ、アンタ今私の事――」

 少女に抱き上げられ、あろうことか抱きしめられる。

……平坦だけど、まだ子供みたいだし、成長の見込みがないわけじゃなさそうだ。むしろこのままの方が――

「平坦で悪かったわね! このぉっ!」

「ぎゃぐぅっ!」

 思い切りバスケットにぶん投げられた。今の俺は赤子同然。首が座らなくなったらどうしてくれる!

「知らないわよ! 拾ってもらっただけありがたいと思いなさい!」

 それはもちろん感謝してます……って、なんで会話できてるんだ? 俺たち。

「やっぱり。アンタの考えてること、私に丸聞こえだから」

 なんと!

 つまり俺は、これから一生心の声を聞かれ続けるわけだ。時折聞くに耐えないようなことを考えてしまうかもしれないが、是非頑張ってくれ。

「私で変なこと考えたら、鱗を一枚ずつ剥いでいくから。それでもいいなら好きなだけ考えなさい?」

 この子、かわいいくせに中々えげつない。まぁでも、1枚くらい剥がれても問題ない気がするけどな!

 そんなことを考えた矢先、俺は床に叩きつけられて気を失ってしまった。



 ◇ ◇ ◇



「とりあえず、自己紹介を済ませましょう。」

「ぎゃう……」

 叩きつけられたのち、殴る蹴るの暴行を加えられた俺は、再びバスケットに座らされていた。

 殴る蹴るといっても、俺には一切ダメージはなかったけどな。子供だが龍の鱗であることに変わりはないということか。

「……コホン。私の名前はレリア。歳は15。あなたの飼い主です。よろしく」

……いつのまにかペットにされてしまった。おそらく好感度はマイナス。最悪だ。

 俺の名前は、なんだ? よく考えたら今の俺はなんと名乗ればいいんだろう。元の名前は覚えていない。

「アンタ、名前がないの?」

 そうなのかもしれない。生まれたてだろうし、名前がなくても不思議じゃない。

「せっかくだし、飼い主の私が名前をつけてあげる! 名前がないと不便だし、いいでしょ?」

 名前がないと確かに不便だ。それに美少女に名前をつけてもらえることなど滅多にあることじゃない。

 でも、それとこれとは違うのだ。名前とは大事なもので、簡単に決めていいものじゃない。変な名前をつけられようもんなら、一生心に深い傷を――

「アンタ、体は真っ黒なのにベロは真っ赤ね。名前、ベローチェなんてどう? 私はいいと思うんだけど!」

 ちょっと待ってくれ。そんな安直な名前はダメだ。もっとカッコイイ名前が……!?


 ズグン!という突き上げるような痛み。何かが体に刻み込まれたような感覚。これは……? 

 嫌な予感がする。


「決まり! 今日からアンタはベローチェよ! 改めて、よろしくね?」

 なんてこった。こんなにあっさり決まってしまった。俺はこれから名前の由来は?と聞かれたら「ベロが赤かったもんで……」と答えなければならないのだ!

 うぅ。俺はこの先どうなってしまうんだろう。生まれたばかりだというのに、すでに将来が心配だ。

「さて! 私は明日の準備をしなきゃ!」

 明日の準備? 明日は何があるんだろう。もしかして俺の誕生日パーティーとか? 誕生日を祝う習慣があるのか知らないけど。

「明日は私とアンタの旅立ちの日なのよ! 旅の支度に決まってるわ!」

 旅? 一泊二日の温泉旅行とか、そういうこと?

「……アンタと温泉なんて願い下げ。旅と言ったら冒険の旅! 勇者レリアとペットによる世界を救う旅が始まるのよ!」

……今、なんつった? 勇者って聞こえた気がしたんだが!? 邪悪な龍の俺が勇者と冒険? なんだそりゃ!

「目指すは魔王討伐よ!えいえいおーっ!」

 おーっ! じゃない!
よろしくお願いします!
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