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死神days  作者: 優蘭
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第2話・契約

『・・・この世の悪魔達よ。我の前に姿を現せ、そして代償と引き換えに願いをかなえよ・・・』と、図書館の中から声がした・・・。



太陽が消えそうな時間帯に、有名な高校の進学校の中にある、国で一番大きいと言われている図書館の真ん中に立ち、本を手に、33本の蝋燭で2つの円を書くように置かれていた。そして1つの円の中には男子が立っていた。


その男子とは、頭脳明晰、運動神経抜群、顔や性格も良く、生徒や先生から頼りにされていて、今一番モテている、生徒会長の山中祐哉。


しばらくすると、太陽が完全に消えあたりは蝋燭の炎だけになった。普通の人ならば、今すぐにでも逃げ出すか、ものすごく怯えるような闇に、この学校の生徒会長は平然と立っていて本に書かれている呪文らしきものを低めの、他人ならば思わず聞き入ってしまいそうな、その気持ちのいい声でつぶやいていた。

そして、何ページにも続いた物凄い量の呪文の最後の言葉を唱え終えた瞬間、気温が一気に下がり、蝋燭の火が一斉に消えた・・・。火が消えたのは、ほんの一瞬だった。また火がついた時は、もう一つの円には・・・



悪魔がいた。



悪魔は、気の弱い人なら気絶してしまいそうなくらい恐ろしかった。見た目は普通の人間に似ていた。上半身は裸、背中からは蝙蝠のような翼が生えている。下は人間が着るようなダブダブのズボンをはいていた。このまま想像しても、全く怖くはない。それもそのはず。一番恐ろしい場所は、『目』なのだから。

その悪魔の目の色は、深い黒だった。底なし沼のような黒、死を運んでくるような色だったのだ。白い所などなく、目を開けると、すべて黒。人を引きずり込んでしまいそうな色。そんな目の色を持つ悪魔が、祐哉に尋ねた。

『俺をよんだのはお前か?』

「あぁ。そうだ。さっそく本題だが・・・」

『まて。そう急ぐな。まず、お前の名から教えるのが礼儀って云う物じゃないか?』

祐哉の言葉を遮って、悪魔はこう言った。

・・・が、

「何言ってる。悪魔に名を教えたら、こっちの身が危ないという事くらい子供でも知ってるぞ。」と悪魔を一蹴した。

悪魔は内心、少しだけ驚いていた。

『(ヘェ。こいつ、意外にやるな。俺の目を見ても気絶はおろか、怯えもしない。)そうか、知ってたか。じゃあ、どうやって俺を出した。』

悪魔は次々と質問していく。

「簡単な話だ。俺の親は資産家でな。お願いしたら、悪魔に関する本を世界中から集めてくれた。だから、俺は、それを虱潰しに調べていったんだ。」

『・・なるほどな。だから、国中に数冊しかない悪魔を召喚する本を見つけたのだな。それじゃあ次だ。どうして俺を喚んだ?お前は見た所何の問題もなさそうだが?』

「あぁ。生きて行く上では何もないな。俺なら、いい大学にでもいって、いい会社にはいれるだろうな。そして、金持ちの綺麗なお嬢様とでも結婚して、いい夫として、幸せな家庭を築いていけるだろうな。フン。だがな、俺にはそれが退屈でしょうがないんだよ。そんな人生ってさ。人間なんて、少しの事で笑い、泣き、表面上だけの付き合いしかしないただの下等動物じゃねいか・・・そんな世界で生きていくより、仲間を殺して生きていく死神の世界の方が面白そうなんだよ。分かったか?分かったならば、さっさと俺を死神にしろ。そしたら、代償だろうと何だろうと払ってやる。」

『(こいつ、イカれてやがるんじゃないか?・・・まぁ、いい。それもまた一興だからな。こいつを死神にしてみるか・・・それにしても・・・)お前みたいな奴は初めてだ。たいていは、永遠の命欲しさに来る奴ぱっかなんでな、こっちも退屈してたんだよ。ようやくお前みたいなイカれ・・・いや、珍しい人間が現れた。おかげで面白そうな物がみえそうだ。決めた。お前を死神にしてやる。』

「フン。やっと腹括ったか。ところでお前に一つ質問だ。代償とはなんだ?」

この質問に、悪魔はさも驚いているというような顔をしてみせ、話し出した。

『代償も知らんのか。代償とはな、他人に与えた損害を,それに相当する金品や労力を差し出してつぐなうこと。又、ある目的を達成するために失ったもの。また,犠牲にしたもののことで・・・』

「・・・」

裕哉が何か呟くと、急に悪魔の体に激痛が走った。

『グワッ・・・ってめぇ』

「俺をなめるなよ。これくらいの術、使えないとでも思ったか。俺はな、代償に何を渡せばいいのか聞いているのだ。意味など聞いていない」

悪魔は、裕哉を睨みつけながら(こいつなかなかやるな・・・。)などと考えていた。

『・・・分かった。お前の事はもう見くびらないどこう。俺が貰う代償は・・・感情だ。』

「感情・・・だと?」

『あぁ。感情だ。お前、知ってるか?感情というものはな、人間の一番大事な所だが、人間が、一番大事だとは見抜けない場所なのさ。だから、俺はそれを貰う。意味が分かるか?つまりだな、お前が少しでも感情を出すと、お前は・・・死ぬ。意味分かるか?つまり、死神としてのお前が死ぬ。あっ、だからっといて、人になど戻れないぞ。死神としてのお前が死んだらその肉体も死ぬ。そして、お前は、天国にも地獄にも行けない。何故なら、魂は俺様が貰うからな。』

「ふん。なるほどな。面白そうじゃねいか。喜びも悲しみも、あってはいけないということか。いいぜ、俺の感情をお前にくれてやる。」

『そうか。1つだけ言っておく。いいな、死神になったら、人間には戻れないからな。お前は今日から化け物になるんだ。覚悟はいいな?』

「あぁ。もちろんだ」

そう返事したのを確認した後に、悪魔が腕輪を投げてきた。いつもの反射で、キャッチした腕輪を祐哉がよくみると、細かい草のような蔓が心臓みたいな形の模様を囲むような、そんな腕輪だった。

『それをはめろ。』

悪魔が言った。祐哉が、言われた通り、腕にはめるとぶかぶかだった筈の腕輪が手首にしっかりとくっ付き、体中が燃えているような感覚に陥った。祐哉はたまらず、しゃがみ込んで痛みを我慢した

「う゛っ。くっ・・・がはっ。」

五分ほどそうしていただろうか・・・しばらくすると、裕哉の体の痛みが消えてきた。立ち上がると、それを待っていたかのように、悪魔がしゃべり始めた。

『それが、死神の証だ。普通の人間には見えない。しかし、死神同士には見える。つまり、これで死神魔を識別するわけだ。しかもこれは、武器にもなるんだ。だから、持ち主の強さで武器の種類がかわかる。それじゃあ、せいぜい頑張れよ。質問はないな。それじゃあ、俺は行くぞ。いいな』

「ああ。」

祐哉がそう言うと、悪魔の体が透け始めて来た。『おっと、そういやもう一つ。お前は、大事な奴・・親か友達等の中から1人選んで殺せ。そうしなければ、一人前の死神にはなれんからな』

そう言い残して、悪魔は消えていった。

そして、窓の外では、太陽が昇り始めていた・・・。


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