妖怪の寮の住人達
今日中に書きだめた残り3つをすべて放出するつもりです
最後の一個はまだ描き終わってないのでもしかしたらできないかもしれませんが………。
狙うは金的!
小さくなった体を活かして相手の防御を躱し、下側からアッパーを決め………
………ようとして玄関の段差につまずいて転ぶ
「………」
「えっと………。大丈夫?」
そう言って鬼隆と呼ばれた目の前の少年は僕を起こす
「平気?怪我はない?」
そう青年は僕の顔を覗き込んで来る
黒い髪をぴっちりと揃え、立派な角を二本生やした
あの、天使(仮)と同じ顔で
「おまえ!なんでここにむぐっ!!」
「気持ちはわかりますが静かにしてください下手したら地獄行きですよ?」
青年は僕の口を押え、そう呟いてくる
「後でちゃんと僕にできる範囲だったら説明しますから、とりあえずここは大人しくしといてください」
むう………
まあいい、僕だって地獄行きはやだしこの状況について説明されるんだったらとりあえずここは引いてやるか
「大丈夫?どこか打ったりとかとかしてない?だめでしょ、急に走り出したりしたら。ごめんね、鬼隆くん、びっくりさせて」
「いえ、僕は別に平気です。えっと………その子は?」
「ああ、えっと………。まあいろいろあってしばらくうちにいることになったんだけど、まあ後で皆とまとめて話すよ。とりあえずみんな待ってるだろうしはやくご飯作らなきゃ」
「ああ、それならみんなでもう作ってますよ。腐蘭が今日首璃さん遅くなるだろうってって言ってたんで」
「あらそう?ありがとう。じゃ、行こうか」
お姉さんが靴を脱ぎ歩きだし、僕もそれに付いて歩いていく
………おい、そこの天使(仮)
うやむやにしようとしても無駄だぞ、絶対後で説明してもらうからな
横を通るときにそう牽制しつつ、僕はリビングに入った
何故かほほ笑まれたけどそんな事は気にしない
♢♦♢♦♢
「………と、言うことでしばらくこの子預かることになったからよろしくね~」
「「「「へ~、そうなんだ~」」」」
おいなんだこのノリ
質問一つなく簡単に受け入れられたうえになんでこんなに棒読みなんだよ
ご飯のときにあたりまえのように居座ってたのに全く気にされなかったし
昼に見た二人や僕のことを知ってる天使(仮)はまだいいとしてもう一人、明らかに今さっき初対面の子いるのにじろじろ見られたりすることも無かったし
「っていうかまあ実は知ってたんだけどね。結構前に駐在さんが絶対首璃さんは断らないからよろしくな~、て電話来たから」
「あ、それで雪ちゃんからも何も言われなかったの」
お姉さんがそう言うと、雪と呼ばれた少女は無言でうなずく
身長から見ると小学校高学年くらいだろうか
水色と白が混じったような色の髪を長く伸ばした大人しそうな子だ
「まったく、あの人は私を便利屋かなにかと勘違いしてるんじゃない?」
「この町の人たちは皆首璃姉が優しいことを知ってるから頼られてるんだよ」
ゾンビっ娘がそう言ってお姉さんに笑いかける
「頼られるのはいいけど使われるのはやだなぁ」
「皆そんな恐れ多い事できないですよ。首璃さんが怒ったら生活終わりですよ?」
この町でのお姉さんの立場がとても気になる
「さて、まあそんな話は置いておいてご飯も食べ終わったし、歓迎会と自己紹介しましょうか!!!」
そう言ってゾンビっ娘はキッチンの方に行き、何かを持ってくる
「じゃ~ん!実は歓迎会のためにケーキ買ってきてます!!さあ食べよう!!!」
「なんでお前が一番テンション高いんだよ」
ヒキニート(多分)の青年の突っ込みを気にもせず、ゾンビっ娘はケーキを切り分け、みんなの前に置く
「はい、どうぞ。ショートケーキ食べられるよね?あ、分かんないかな?」
「う、うん………。食べれる……」
やっぱりちょっとこの子苦手かな………
ただでさえコミ障だからテンション高い人苦手なのに顔とテンションに全くあってないし
「さて、まあとりあえず全員自己紹介でもしようか」
お姉さんがそう言って皆を見る
「じゃ、まず私からね。もう言ったと思うけど、私は村長 首璃、24歳。見ての通り、種族はろくろ首だよ。この寮の大家………って言って分かるかな?まあそういうお仕事をしてます。何かあったら何でも言ってね。よろしく」
そう言ってお姉さんは僕の頭を撫でる
むう………
なんか今日だけで結構頭撫でられてる気がする
いやまあ別にそんなに嫌じゃないんだけどちょっと複雑な気分だ
「じゃあ次は俺ですね。俺は治水 皇。種族は吸血鬼。………大学4年の二十二歳だ」
「嘘つけもう一年は大学なんて言ってないくせに」
「いいんだよ、単位はもうほぼ取り切ってるから後卒業までに数回の講義と卒レポさえすませば」
………引きこもりには間違いなかったけど大学行ってるのか
引きこもり歴一年とか小学校から割と引きこもってた僕と比べたら大したことないな!
………ってえ?
今あの人なんて言った?
「吸血鬼!?」
「ん?お、おお。吸血鬼だ。それがどうかしたか?」
急に大声出したからか、ヒキニートの青年は驚きながらそう答える
「血、飲むの?」
「ああ、そりゃ吸血鬼だから飲むけど………。どうかしたか?」
どうかしたかじゃないよ!
吸血鬼って言ったらあれでしょ!?
夜な夜な勝手に血を吸いに来て翌日全身の血を吸いつくされた変死体が出るやつでしょ!?
ある意味ではゾンビなんかよりもずっと危険な奴じゃないか!!!
畜生、こっち来てから無害な種族ばっかりでしかも人間と誤解してたから完全に油断してた
ゾンビはまだ人を襲う理由がないっちゃないけど吸血鬼は明確に人間の敵じゃないか!!!
えっと………
そう、ニンニク!ニンニクを探さなきゃ!!!
えっと、今日食べた料理の中にニンニクは………
無い!!!
じゃ、じゃ後の対処法は………
「………なにやってんの?」
「十字架!!!」
箸をクロスさせて十字架を作った僕を何故か皆がすごく生温かい目で見てくる
すると、吸血系ヒキニートは僕に近づき………
「ほいっ」
僕の作った十字架を取り上げて来た
「!?」
ば、ばかな………
十字架が効かないだと………
「くく、馬鹿め、そんな十字架がこの俺に効くか。俺にはニンニクも流水も、日光だって効かないわ!!!」
「いやあんた日光苦手じゃない」
な、なんだと、弱点がない!?じゃ、じゃあ僕はどうやって対処したら………
「さあ、分かったら大人しくこの俺に血を捧げ…「止めんか!」ぐはっ!!!」
そう言って僕に近づいてきた吸血系ヒキニートは、ゾンビっ娘に蹴り飛ばされる
「ちょっと!本気で怖がってんでしょうが!!!なにやってんの!!!」
「いや、ちょっとした冗談で…ごふっ!」
な、なんだ?
何かが起こってるようだがお姉さんに後ろから目隠しされたせいで何が起こっているか全然わからない
なんだかゴスっとかボコッとか野太い音が聞こえるけど………
すると、音がしなくなったあたりでやっと目隠しが外される
「ごめんね、うちのくそ馬鹿が怖がらせちゃって。実際あいつには十字架とかそういうのは効かないけど絶対あなたの血を吸わせたりしないから」
ゾンビっ娘は申し訳なさそうに赤い液体で汚した自分の手をふきながらそう言う
「吸血鬼って言っても、絵本とかに出てくるような悪い人はいないから心配しないでも大丈夫よ?血は飲むけどいっぱいは飲まないしちゃんと買ってきた血しか飲まないから」
そう言ってお姉さんは僕を抱き上げ、慰めてくれる
ヤバい、軽く絶望したせいなんか泣きそうだ
目をウルウルさせながら我慢してると、お姉さんが優しくもう一度撫でてくれる
すると、ゾンビっ娘が何か………いや、誰か?を引きずってきた
「ほら、謝れごみ野郎」
「ずい゛ま゛ぜん゛でじだ………」
何故かさっきとは比べ物にならないほどボロボロになった吸血系ヒキニートが土下座をしてくる
なんか、ここまでくると恐怖感なくなって同情してきたんだけど………
「ごめんね、後でしっかりお仕置きしとくから………」
これ以上やるんですか
「あ、ついでに自己紹介しとくね。私は噛崎 腐蘭、高校一年16歳。種族は見ての通りゾンビだけど、絵本とかとに乗ってるようなゾンビとかとはずいぶん違うから怖がらないでね。気軽に腐蘭お姉ちゃんって読んでね?」
そう言って何か期待した目でこちらを見てくる
………呼べってことか?
「腐蘭…おねえ……ちゃん」
「おお!!!」
ゾンビっ娘は満足そうにこちらを見る
………なんだか喜んでもらえたようで何よりです
「じゃあ次は僕だね。僕は天辻 鬼隆。種族は鬼。大学二年の19歳だよ。よろしく」
天使(仮)はそう言って僕に笑いかける
それを僕はできる限りきつく睨み返してやる
この野郎、僕をこんな状況に陥れた本人のくせしていけしゃあしゃあと自己紹介とかしやがって。後で覚えてろよ
「じゃあ最後。ほら雪ちゃん、自己紹介して」
「う、うん………」
雪と呼ばれた少女はぼそぼそした声でしゃべりだす
「冬美 雪。中学一年の12歳、だよ………。あ、種族は雪女、で。あの、私も、雪おねえちゃんって、よんで欲しい、な?」
そう言い終わると期待したような目でこちらを見る
………この子もか
「ゆきおねえ、ちゃん」
「………ん」
ああ、満足しもらえたみたいだけど滅茶苦茶恥ずかしいぞ
このまま消えてなくなってしまいたい
「これで全員自己紹介終わったね?じゃ、歓迎会も終わって片付けしよっか。ごちそうさまでした」
「「「「「ごちそうさまでした」」」」」
お姉さんのその一言で各々が自分が使った食器などを片付け始め、僕もそれに続いて自分が使ったものを片付ける
そうして、僕の異世界一日目の夕食は終わった
今日更新分1/3