プロローグ
《犬は犬なりに考えている》。そんな風に感じることがよくあります。
小首をかしげた犬たちの姿。飼い主が何を言っているのか、一生懸命聞こうとしているようにも見えます。
こう考えるきっかけとなる出来事がありました。
縁あって、お世話をすることになったシルバーのトイプードル。
捨て犬だったのですが、当時犬を飼える環境になかった私は、お願いして、実家の両親に引き取ってもらいました。
人見知りをする犬ではなかったので、母にはすぐになじみました。
後から帰宅した父にはちょっと警戒したのか、しばらく距離を置いて、じーっと観察していました。
ですが「家族」だと納得してからは、尻尾をフリフリと近寄っていきました。
両親とその犬がお互いに慣れるまで、数日間一緒にすごしたのですが、夜に外食した時に、最初のお留守番をさせました。
帰宅した時、灯のついていない家の中、玄関ごしに待っている犬の姿が見えました。
皆が居間のソファーに落ち着くと、まず私、そして母、父と順番に愛想を振りまく犬の様子をみて、
「お前も大変だなぁ。全員に気を配らんといかんからなぁ・・・」
と父の一言。
犬がいろんな人に愛想よくするのを当たり前と感じていた私。
(確かに!)
とあらためて気がつきました。
その時から、《犬は犬なりに気を使っている》とか《犬は犬なりに考えている》という文句が、お気に入りのフレーズとなったのでした。