第4話 クロウの秘密(2)
野良仲間からは人間みたいだと何度も言われたし、どうにも猫社会には上手く馴染めていなかったからだ。
しかし突然そう言われてもすぐに納得出来ると言う訳にも行かなかった。
だから、今はただ淡々と女神の話を聞くばかりだった。
貴方が人間だった頃は黒い鎧に身を包み黒騎士と呼ばれた腕利きの戦士だったそうよ
誰も寄せ付けない雰囲気があってそれで誰にも愛されなかった…
そんな貴方が戦場で拾った一匹の猫が彼女だった
貴方とルーンは仲睦まじく暮らしていたらしいわ
けれど所詮は人間と猫、いくら仲良くしていても結ばれる事はなく
やがて先に寿命を迎えた彼女は次は人間になって貴方と一緒に暮らす事を願って転生していった…
その想いが強くて前世の記憶を持ったまま生まれ変わったのか…
そう言う事…だから貴方から彼女を説得して欲しいの
それで?オレが断ったら?
その時は仕方ないわ…でも出来れば私達がここにいる事は黙っていて欲しいの…
オレはしばらく考えた…このままこの猫たちをこんな洞窟にいつまでも閉じ込めていい訳がない。
やっぱり彼らは月の塔にいるべきだろう…。オレは意を決して女神に話しかけた。
説得って一体どうすれば…?
この質問に暗い顔だった女神の顔が明るくなった。
話を聞いてくれるのですね!
乗りかかった船だし…ここにいるみんなをこのままになんて出来ないよ
流石黒騎士クロウ!きっと協力してくれると思っていました!
女神は食い気味に身を乗り出して話を進め始めた。
ずっと前から計画を練っていたのかスラスラと話が進んでオレはまたしても理解するので精一杯だった。
話を聞く内に自分に課せられた責任が重圧となって心を重くするのが分かるようだった。
オレにそこまでの事、出来るかな…説得だって自信が持てないのに…
大丈夫です!あなたが動いてくれれば後はきっと何とかなります!
それは女神らしい根拠の無い自信の現れだろうか…。
ともかくこの言葉にオレは勇気をもらったのだった。
考えて見ればここまで重い責任を持ったのは初めてのような気がする。
けれどその重圧も達成出来た時には大きな喜びに変わる気がしていた。
大きな不安と大きな期待がオレ自身を突き動かしているのが分かるようだった。
(つづく)