第3話 洞窟の猫たち(3)
あいつは月の塔や魔法や女神様をじっくりと調べ上げ、行動を起こす時を待っていたんだ
ある日、女神様が行う魔法儀式の場へルーンが現れた。
女神様はちょうど地球の平和を祈る儀式の最中だった。
この儀式は女神様が唯一無防備になる瞬間だ…あいつはその時を待っていたんだ
ルーンは魔法エネルギーの放出先の魔法陣に細工をして逆魔法陣にしていた。
逆魔法陣は女神様の力を地上ではなくルーン自身へと送り込んでいく…。
そう、すべては女神様の力を取り込む為にあいつが仕組んでいたんだ…その結果がどうなるか…。
それで…ルーンは人の姿に…?
オレは思わずつばを飲み込んだ…。
魔法の力はそんな事も出来てしまうのか…。
そして女神様は力を吸い取られて逆に猫の姿になってしまった。
余りに一度に大きな力を取り込んだルーンは限界まで達した瞬間に倒れこんで意識を失った。
けれどルーンはそれで満足した訳じゃなかった…。
完全に女神様の全ての力を取り込んで自分が月の女神になろうとしていたんだ。
それを知った俺たちはあいつが意識を失っている間に塔にいる仲間全員を連れて脱出したんだ
月の魔女となったあいつから女神様を守るために…
なるほどねぇ…それで反撃の時を待っていると…
オレはゲイルの話を聞いて事態を大体飲み込めた気がした。
いや、今はまだ反撃までは考えていない…
オレの言葉にゲイルはそう答えた。
何かそれには事情があるみたいだった。
今は女神様の力の回復に努めたい…このままでいてもあいつは次第に力を失っていくし、女神様は徐々に力を取り戻していくんだ…だから
えらく消極的だな…ま、力の差が大きい相手に正面から攻めるのは無理があるか…
そこまで話してオレは俄然その女神様ってやつに興味を持った。
ま、当然の話だわな。
で?女神様って言うのは?
オレの言葉にゲイルは戸惑っているみたいだった。
そりゃあそうか…突然やって来た余所者にいきなり組織の重要機密をさらけ出すバカはいない…。
まだ信用されてない内からそこまで秘密をバラす奴なんていないか…
オレが自嘲気味につぶやいていると猫の団体の中から一匹の猫が名乗りを上げた。
ようこそ、クロウ…私がその女神です…
オレに前に現れた猫はまさに女神と名乗るのに相応しい美しい猫だった。
(つづく)