第3話 洞窟の猫たち(2)
クロウか…わざわざ地球からご苦労だったな…
オレはゲイル…かつてあの塔にいた猫たちのリーダーだ
信じるも信じないも勝手だが俺たちはあの塔から逃げてきたんだ…もう戻る気はない
一体何があったんだ?
オレが話の真相に迫ろうとした時、周りにいた猫の一匹が声を荒らげた。
余所者に話す事なんてない!
魔女の手先はオレたちの敵だ!
そいつはそう言うが早いかオレに襲いかかってきた!
ヤレヤレ…頭の悪い奴はすぐ暴力に訴えるから嫌いだ…。
敵意はないが振りかかる火の粉は払わなきゃな…。
オレはそいつの攻撃を軽く交わすと相手を刺激しないようにつぶやいた。
全く…馬鹿には話が通じないから困る…
この言葉を聞いて攻撃を交わされた猫の興奮度がマックスになるのが手に取るように分かった。
やれやれ…逆効果だったか…。
よせ!彼は敵じゃない!
ゲイルの言葉も届かず攻撃を続ける若者猫。
オレはヤツの攻撃を軽く交わすと慣れた仕草で抑えこんだ。
野良猫時代からこの手の輩の対処法は心得ている。
この鮮やかな対処に洞窟内の他の猫達は急に静かになった。
やっと話を聞ける体制が整った、と言うところだろうか。
仲間の無礼、申し訳ない
どうか許してやってくれないか…
ゲイルの申し出にオレは素直に従った。
この程度なら相手がどれだけ襲ってこようと対処出来るからだ。
いわゆる強者の余裕ってヤツだな。
ほら、心強いリーダーの元に帰りな!
オレはそう言ってまだ興奮収まらない若者猫をゲイルの元に帰す。
納得行かない顔をしながらも若者猫は群れの中に戻っていった。
話を続けてもいいかな…無駄な争いはこちらも望んでいない
それは構わないさ…むしろ早く話を進めて欲しいくらいだ
そこからゲイルの話は始まった。
オレはその話が終わるまで大人しく聞く事にした。
月の塔はそもそも月の女神が管理する場所で猫は月の女神のしもべだった。
そしてある日、月の女神はある猫を地球から召喚する。
そしてその猫がすべての始まりだった…。
ちょっと待て、まさかその猫って…
大人しく聞くつもりだったがつい口を挟んでしまった。
オレの前に地球から召喚された猫がいただって?
それが全ての元凶って…もしオレの想像が正しければ…。
そう、今あの塔を支配している魔女さ
ゲイルはあっさりとそう答えた。
オレはその答えを聞いて素直な感想を漏らす。
猫が人間に?
女神の力を奪ったんだよ…あいつが!
そういったゲイルの顔は怒りに満ちていた。
自分の主君を酷い目に合わせたのだから当然なのだろう。
召喚されたばかりのルーンは女神様に忠実に仕え様々な魔法を学んでいった。
そうしていつの間にか女神様の一番の側近になっていった。
だが、それは全て計算された行動だった。