第2話 ひとりぼっちの月の楽園(2)
分かった?広大な月の中で生き物が一番幸せに暮らす事が出来るのがこの塔なの
私は少しでも不幸な猫たちを幸せにしたいのよ
でも外がこんなじゃあ外に猫なんて居ないんじゃないのか?
月猫たちは魔法が使えるからどこかでこっそり暮らしているかも知れない
だからそれも含めて調べてきて欲しいの…私はここで待っているわ
月の魔女は窓の外を見ながら淋しい顔をしていた。
だからオレはそんな彼女に協力したくなったんだ。
オレはひょいと窓から降りると彼女に向かってこう言った。
一人でここに居ても退屈だしな
よし、探検がてら探してきてやるよ
ありがとう…吉報を待っているわ
そう言った魔女の顔は安心した女性の顔だった。
オレは彼女を疑っていた事を少し恥じていた。
月の魔女に見送られながら俺は月の塔を後にした。
月の大地、いや、砂漠か?の感触はとても不思議なものだった。
柔らかくて少し暖かくてふわふわと浮くようだった。
見上げれば夜空に浮かぶ沢山の星に青い地球。
魔女に召喚された今でも自分がその青い星からここに来たなんて信じられなかった。
さて、探すとは言っても…
俺はとりあえず感覚を澄ましてみた。
目を瞑り、耳と鼻とヒゲに神経を集中する。
集中した時、この砂漠に満ちる周りの光がオレを包んだ気がした。
これが魔女の言っていた魔法の資質ってやつなのかなとも思った。
とにかく今まで感じた事もない感覚がオレの全身を包んでいた。
体がふわっと浮くような不思議な浮遊感に満たされて暫くその状態で感覚を研ぎ澄ませていると少し何かを感じた気がした。
俺はただ導かれるようにその感覚のする場所へと歩いていった。
この感じは、そうだな…。
地球に居た時に感じていた仲間の猫たちを近く感じた時の気配に似ている…。
その感覚は月の砂漠のずっと奥に続いていた。
何の迷いもなくオレは吸い込まれるようにその場所に向かっていった。
辿り着いた先は小さな洞窟だった。
その洞窟の奥から微かに何かの存在の気配を感じる。
オレは体中の感覚を研ぎ澄ましたままその奥へと進んでいった。
確かにこの洞窟の奥には何かがあると言う確信を胸に抱きながら。
(つづく)