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無敵な魔女の方程式(イクエーション)  作者: 日々一陽
第一章 魔法の方程式と3人の魔女
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1章 第2話

 テロリスト拘束劇は開会の拍手にかき消され、聴衆に混乱は起きなかった。

 演説会はそのまま決行され、先ほど無事終了したばかりだ。


 帰路についた3人の魔法使いは、リムジンに乗ると弦内に自己紹介の続きを始めた。


「じゃあ、もう一度紹介するね。長岡美鈴ながおかみすずちゃんと青山嶺華あおやまれいかちゃん」

「はい~、長岡美鈴ですう、よろしくお願いしますね」

「どうも。桐間弦内きりまげんないです」

「はい~」


 長い栗毛をかき上げ、にっこり微笑みながらたおやかに手を伸ばし握手をするす美鈴。こんなおっとりした美少女が一瞬でテロリストを倒したとは。弦内にはまだ信じられなかった。


「青山嶺華よ」

「き……桐間です」


 碧いストレートヘアを肩で切りそろえた青山は無表情なままで手を伸ばした。

 全てを見透かすような切れ長の瞳。

 凛としても可憐な彼女の、そのあまりの美しさに弦内は息を飲んだ。


 身を乗り出して朝永が親しげに弦内に語りかける。


「ねえねえ、桐間さんって魔法の原理を方程式で現すことに成功したんですって? 凄いわね、まだあたしたちと同じ年頃なのに」

「い……いや、同じ年頃で一国の総理を守った皆さんの方がずっと凄いよ」


 彼は謙遜ではなく心底そう思った。そして3人をもう一度見回した。


 快活で気さくそうな朝永まりや。

 おっとりした麗しのお嬢様風な長岡美鈴。

 美しくも氷のようにクールな青山嶺華。


「どう? 女の子ばかりで嬉しい? しかもみんな可愛いでしょ!」

 まりやが声を掛ける。

「え、ああ。そうだね。でも、少しだけ戸惑いもあるかな」

「大丈夫よ。あたしたちも女ばかりだったから弦内くんのご降臨は大歓迎なわけよ。今晩早速歓迎パーティをするね」


 嬉しそうなまりやと美鈴。高校の制服のようなブレザーを着たふたりを見る弦内。

 どちらも美少女だし胸元が……


『あっ!』


 このとき弦内は気がついてしまった。

 まりやと美鈴の素晴らしい胸の発育に。


『だめだ、変なところを見ちゃ!』


 自分に言い聞かせながら弦内は嶺華の胸元に視線を動かす。


「……」


 ほぼ、平坦だった。

 申し訳程度に膨らんだ胸を見て『俺好みじゃん!』と言う言葉を必死で飲み込む弦内。

 そんな彼に嶺華が表情を変えずにぽつりと呟いた。


「あなた、今、わたしに対して失礼な慰めの言葉を考えたわね」

「えっ? いや別に僕はなにも……」


 弦内は狼狽した。脳内が漏れていたかと。

 しかし嶺華は怒った様子もなく淡々と、いやそれどころか自嘲気味に嘆息した。


「ダメね、わたし。どうしてこんな事ばかり……」


 それを聞いた弦内は彼女の言葉の意味を理解した。

「あの、青山さん、もしかして今、僕の意識を読み取った…… とか?」


 弦内の一言に驚いたように顔を上げる青山嶺華。

「えっ、どうして判ったの?」

「いや、僕の仮説が正しかったら、魔法使いは他の人の意識を感じ取れるんだ。もしかしたら今日も犯人の攻撃的な意識を感じ取ることで彼らを捜し出したんじゃないのかな?」


3人の魔法使いはお互いに顔を見合わせた。

「それ、きっとあたっているわ……」

「意識しているわけではないんですけど、そんな感じ、ですわねえ」

 まりやと美鈴が驚いた表情で弦内を見る。


 と、その時。


 ニコニコナース ニコニコナース


 突然、昔流行った美少女PCゲームのオープニング曲が鳴り出す。

 その音にサントスが最新式のスマートフォンを取り出した。

 なかなかイカす着メロの選曲だが、自分の立場とかは気にしないのだろうか。


 ともあれ、サントスが画面を見入っている。メールが入ったようだ。

「皆さん、今日はお疲れさまデシタ。今日捕まえた4人の身元が分かりマシタ。爆弾の起爆装置も無事カイジョしました。背後の危ないカンケイも捕まえたデス」


「わあっ!」

 まりやと美鈴の顔がほころぶ。


「モロチン、今日皆さんが捕まえた4人には全く怪我はなかったそうデス」

 『モロチン』とは『勿論』の事だろうが、もう驚かない弦内だった。


 サントスは更に続ける。

「ひとり両腕の関節が外れていたそうデスが、元に戻ったそうデスあるよ」

「ふうっ」

 嶺華の嘆息が聞こえた。


 このとき初めて弦内は氷の人形(アイスドール)と呼ばれた嶺華の表情が緩んだのを見た。


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