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無敵な魔女の方程式(イクエーション)  作者: 日々一陽
第一章 魔法の方程式と3人の魔女
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1章 第1話

 第一章 魔法の方程式と3人の魔女


 アインシュタインは十六歳の時に相対性理論の発想を得たらしい。

 コンピュータの父、ノイマンは八歳で微積分法をマスターしたという。

 だから高校二年の彼が超常現象の理論化に成功しても

 何も不思議なことではない。


 Gμvw+Λgμvw=κTμvw


 超能力、幽霊や霊的現象、謎の怪奇事件や怪奇現象の数々。

 彼が導いたこの物理方程式は、これらを合理的に説明した。

 それは同時に、彼自身も実在を知らない、あることを予言していた。

 そう、魔法と魔法使いが実在することを。


 秘密裏に魔法を研究していた某国家機密機関は、彼がウェブに発表した方程式に興味を持った。そして彼を学生研究員として招聘した。


 彼の名は桐間弦内きりまげんない

 背が高く痩せ形の、中性的な顔立ちをした青年だ。


 今、招聘に応じた彼の前にはひとりの紳士と3人の少女が座っていた。


「ようこそ。先端理論研究所、通称ATラボへ。桐間クン、歓迎しますデス」

 ブロンドの髪に青い目をした紳士は、桐間弦内に名刺を差し出した。


 国立先端理論研究所 教授 リチャード サントス


「そしてこのカワイイ少女たちが魔法使いデス。アナタにはカノジョたちのマホウの原理を解明して欲しいのデスあるよ」

 サントスはちょっとだけ残念な日本語で話をする。


「だから、これから暫くカノジョたちとオナニ施設で一緒に色んなコトしてクダサイデス」

 弦内は『同じ施設』の言い間違いにすぐ気がついたが敢えて訂正はしなかった。


「サントス教授、ところで僕たちはどこへ向かってるんですか?」

 桐間とサントス、それに3人の少女は立派なリムジンで移動中だった。

「とてもいい機会なので、今からカノジョたちのマホウ使ったシゴト見て貰いマスあるよ」

 そう言うとサントスは横に座る少女をチラリと見る。


「そう言うことよ。これから総理大臣様の護衛のお仕事なの。なんでも世界的なテロ集団による凶行情報があったらしくて。あ、あたしは朝永ともながまりや。あなたの話は聞いてるわ。よろしくね」


 赤毛のショートヘアがよく似合う快活そうな少女が笑顔で手を差し出す。

 弦内もそれに応え握手をする。

「桐間弦内です。お世話になります」

 緊張気味の弦内。

「バッチリお世話しちゃうから安心して。あと、あたしのとなりは長岡美鈴ながおかみすず、その向こうが青山嶺華あおやまれいかよ」


 朝永まりやが隣に並ぶふたりの少女を紹介しようとしたところで車が止まった。

「着いたようデス。自己紹介は後にして、お仕事の、チカンが来ました」

 サントスの残念すぎる日本語とともに、車のドアが開く。


 車を降りると背広を着た男がサントスに声を掛けた。

「お待ちしていました。こちらです」


 車の目の前には十数階建ての立派なコンベンショナルセンターが建っていた。

 サントス様ご一行はこの施設最大の演説会場舞台袖にある小部屋に案内された。


 これから始まる政治演説会に参加する総理大臣への凶行を、魔法を使って未然に防ぐのがサントス達の使命だった。


 部屋にはたくさんの監視モニターがあり、会場内を映し出している。

 壁には操作版らしきものもあった。

 これでカメラの向きの制御や切り替えが出来るのだ。

 部屋には直接会場を一望することが出来る窓もある。


「ここなら大丈夫ね」


 朝永まりやはそう言うと他の2人の少女と一緒に会場のチェックを始める。

 今日はここで総理大臣を含めた政府要人の演説会が行われるのだ。延々2時間らしい。

 演説が面白くなかったら鐘が一回鳴って強制終了にならないものかと弦内は思う。


 演説会場は見事に満席だった。

 後方の通路には立っている人すら目立つ。

 2000席の会場はそれ以上の人が入っていること間違いない。


「情報ではテロリストは3人。でも違っているかも知れないから油断はしないで」


 まりやの言葉に桐間弦内はモニター画面を見ながら考える。

 情報では凶行はこの会場で起きる。しかしこれだけたくさんの人の中からどうやって3人のテロリストを見つけ出すのだろうか。勿論、彼女たちは魔法を使ってそれを成し遂げるはずだ。しかしどう言う原理で、どう言う手順でそれを成し遂げるのか、弦内は固唾を呑んで彼女たちの行動を注視した。


「まず前から3列目の少し左よりの、背が高い赤いシャツの男ねっ」

 まりやは舞台が見える窓から指差しながら他の2人の少女に説明した。


「前から5列目にもいますねえ、右端辺りです、黒い服を着ていますね」

 長岡美鈴も会場を見ながら小声で呟く。


「じゃあ、そちらはお願するわ。わたしは真ん中付近の太ったグレーの背広の男と、その直ぐ後ろの緑のブラウスの女を押さえるから」


 青山嶺華の言葉にまりやが驚いたように振り向く。

「えっ、4人いるの?」

「ええ、緑の服の女は武器を持っていないと思うわ。きっと見張り役ね」

「さすがは嶺華。氷の人形(アイスドール)の二つ名は伊達じゃないわね」

「お願い、その呼び名は勘弁して」

 表情ひとつ変えずに嶺華が呟く。この辺りが氷と呼ばれる由縁なのだろうか。


「ごめんごめん。ところでサントス教授、SP(セキュリティポリス)の配置を前方と中央付近重点に変更して貰ってもいいかしら」

「了解デスあるよ」

 語尾に『あるよ』を付けるのが日本語のルールだと思っているのだろうか。ともかくサントスは持っていた携帯電話で誰かに連絡を取り始めた。


「じゃあ、総理が舞台に上がって彼らが武器を見せた瞬間に実行よ。それまでは注意深く確認を続けましょ」

 まりやの言葉にふたりの少女は首肯しゅこうする。


 どうやって彼女たち3人の魔女はテロリストのめぼしを付けたのだろう。

 それを解明するのが仕事なのだが正直全く分からない弦内だ。


 やがて、場内にアナウンスが流れる。いよいよ演説会が始まる。


 サントス達がいる袖とは別の方からテレビや新聞で見たことがある男達が壇上へ向かう。大臣や国会議員達だ。その中には総理大臣の顔もあった。実物は初めて見たが意外と大柄だ。体もでかいが顔もでかかった。

 会場内が一斉に大きな拍手で包まれる。


 と、その時。


 弦内はモニターの幾つかに異変が起きているのを見た。


「うっ!」

 ドサッ!


 声も音も聞こえないが、そんな音が脳裏をよぎる。

 まりやが指摘した大柄な赤いシャツの男が突然体をよろめかせたかと思うと、その手からは光る何かがはじけ飛んだ。拳銃だ。一方、美鈴が言っていた黒い服の男はひとりで勝手にもんどり打って後ろに倒れた。そのがっしりとした体が後ろの椅子をはじき飛ばすと同時に手に持っていた拳銃が床に転がる。間髪入れずにSP達が彼らの元に駆け寄り、その身柄を拘束する。


 その頃、嶺華の言うグレーの背広の男は背広を脱いだ状態で両手を後方上部に突き出していた。


「うあああ」


 苦痛に顔を歪めながら不思議な方向へ腕を自分でねじ曲げる男。

 その体には何かが巻き付けてあった。


「爆弾だ……」


 彼は自分自身に爆弾を巻き付けていた。しかし、彼の腕はあり得ない方向にねじ曲がり、ただ立っているだけだ。ひとり芝居を見ているようだった。


「あれが彼女の、魔法……」


 弦内がそう思ったとき、男はSP達に取り押さえられた。SP達は爆弾を巻き付けたまま動けなくなっている男を場外へ担ぎ出していく。


 見るとその後ろで緑のブラウスを着た女が両手を後ろに組んだまま硬直していた。

 彼女の両横にもまたSPの姿があった。


「ふうっ。終わったかしら」


……ほんの数秒の出来事だった。

 まりやの声に美鈴の顔にも安堵の色が広がる。

 しかし嶺華は全く表情を変えずモニターと会場を睨みつけていた。


「大丈夫のようね」


 暫くの後、嶺華は表情ひとつ変えず呟く。


「すごい……」

 弦内は初めて見る光景のためか、あるいは彼女たちのあまりの手際の良さに驚愕しているのか、目を見開いたままモニターの様子を見つめ続けた。


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