第37話:変わりたい
大樹を好きになろうと思った。なれると思った。一緒にいて楽しくて、安らげて…あたしの求めているものを大樹は沢山持ってたから。何年後かには今日の判断を後悔するかもしれない。逃した魚はでかかったって思うかもしれない。でも、今のあたしには大樹の気持ちに応えられない。同じ量の愛情を返してあげれない。
結局、ホテルで一泊して、次の日は遊ばずに帰ってきた。車の中はもちろんすごく空気が重たくて、とても息苦しかった。大樹とのお気楽な関係は、もう戻ってこないんだと痛感した。
車を降りようとしたあたしに、大樹は『もう一度だけ』と同じ質問を投げ掛けた。
『俺に可能性はない?』
答えは同じ。あたしは頷いた。大樹はあたしに笑顔を向けることもなく『わかった』と言った。
ドアを閉めるとすぐに車は発進して、あたしはその走り去る車を目に焼き付けた。きっとあの車に乗るのはこれが最後だから。
大樹ともっとちゃんと話さなきゃいけないと思った。でも、言葉にすると涙が溢れてうまく喋れないし、あたしが泣くのはなんか違うと思った。このままでいいとは思わないけれど、今はこれ以上なにも出来ない。
環境が変われば…時間が経てば、あたしも変わると思ってた。でも、実際は全然変わってない。心ちゃんに対する想いも、自分の精神的な面も。いつまでもあの家に縛られて、馬鹿みたいに煙草の煙を充満させて…。こんなんじゃダメだ。全然ダメ。いつまでたっても心ちゃんが消えるわけない。大樹にすがりついて、思い出に縛られて、ずっと前に進んでないんだ。
甘ったれなあたしはもう終わりにしたい。
変わりたい、強く。




