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第28話:変な期待

「じゃあ、うちら彼氏んとこ行くから。」

「へ?」

あたしは口をぽかんと開けたまま、立ち上がった2人を見上げる。

「お約束じゃーん?」

「大丈夫だよ。代わりに大樹が来るから。」

「えっ?いや、意味が…」

ちょっと嫌な展開になってきた。

「信じるものは馬鹿を見るんだよ?」

語尾にハートマークでも着いてるかのような可愛い口調で、千秋ちゃんは酷いことを言ってのけた。

「…それはまずいんじゃない?」

「まずくない、まずくない。」

「じゃあ、また、あ・し・た♪」

「やっ、ちょっ、待って…」

香の服の裾をぐいっと引っ張ってみたものの、脅迫じみた2人の笑顔に圧倒され、あたしは仕方なく手を離した。

「ごめんねー。」

全く悪びれる様子の無い顔で2人はそう言い残し、部屋を出ていった。

「…。」

んー…まいったぞ?

あまりの急展開で話がわからないと思うので、軽く今の状況を説明致します。

今回のキャンプは別に本格的なものではなく(まぁただ単にみんなで騒ぎたかっただけなので)内容は小学生の合宿みたいなものだった。もちろんテントなんかなくて、近くのペンションを借りていたわけで。事前にあたしが聞いていた話では、今回借りた部屋は2つで女部屋と男部屋に別れるってことだったんだけど…実際借りた部屋は3つで、恋人同士で過ごしましょってことらしい。結局あまりもののあたしと大樹が、同じ部屋で過ごすことになってしまうんだけど…うちらは決して恋人同士じゃあない!香も千秋ちゃんもいくら自分がラブラブしたいからって、こんなの酷すぎる。鬼だ…。いくら相手が大樹だっていっても、やっぱり男の人と一晩中2人きりで過ごすのは緊張する。そんなことより、こんなに緊張してることが大樹にばれたら…徹底的に馬鹿にされるに違いない。どうにか隠さなきゃ。

「やられたな。」

そんなことを一人悶々と考えていたあたしは、突然後ろから大樹の声が聞こえてびくっと肩を上げた。

「ちょっ、ちょっと!女の子の部屋なんだからノックぐらいしてよ!」

振り返ってみたものの、何だか変に照れてしまってうまく顔が見れない。

「女の部屋とか言われても、今日は俺の部屋でもあるし。」

「あ…そ、そうだね。」

「まぁ、しょうがねぇよ。いまさらどうしようもねぇし。」

テンパっているあたしとは違い、大樹は全く動揺してない様子でそう言い放ち、座り込んでいるあたしのすぐ横にあるベットに腰を下ろした。

「そう…だね。」

観念したあたしはがくっと肩を落とし、ため息を着く。あたしばっかり緊張して馬鹿みたい。…大樹をかぼちゃだと思おう。そうしよう。

「何考えてんの?」

「いやっ、いやー?何も?」

思わず声が上擦って…当然大樹に笑われた。おそらく、あたしが緊張してるのはバレてるだろう。

「やだー。ぼく、そんな変態じゃないんですけどー。」

「わかってるよ!大樹をそういう目で見てるとか、そういうことじゃなくて…。」

そうだ。大樹は天地がひっくり返ってもあたしに手を出さない。そういう男じゃ無い。じゃあ、何であたしは緊張してるんだろう?変な期待でもしてるのかな。わかんないや…。

「ちかじゃ立たない。」

「何が?」

「俺の息子。」

「…あっそ。」

前言撤回。こんな男に変な期待なんかするわけねぇー!

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