第25話:背中を押して
後ろ髪を引かれる思いであの場を立ち去り、あたしとかづみは飲み屋に向かった。かづみは何も言わず、ただ手を握って歩いてくれた。それが嬉しかった。飲み屋に着く頃には、あたしもぽつりぽつりと話し始め、かづみも笑ってくれたりした。
…きっとかづみも別れた彼氏に会いに行ったことがあるんだだろう。そしてあたしと同じことを思ったんだと思う。
かづみもあたしも諦めの悪い女。まぁ、良く言えば一途な女ってことでしょ?…なんて都合よすぎかな。
もちろんあたし達だって、こんなところで立ち止まっていたいわけじゃない。ただ、『あぁ、この恋は叶わないんだ』ってわかったから諦めがつくとか、そんな簡単じゃないだけ。心ちゃんがまたあたしを好きになってくれるとか、戻って来てくれるとか、そんな甘い考え、本当はとうに無くしてる。
だってそんな期待何回も打ち砕かれて、その度に泣いているんだから。でも、期待なんかしてなくても、好きという気持ちだけは残ってしまって…どうしようもないから、理由が欲しくなる。『心のどっかでは期待してるから、諦めつかないんだよね』って、そうごまかすしかないんだ。
本当はちゃんとわかってる。かづみも、あたしも。もうどんなに思ってもあんな幸せな日々は戻って来ないって。ただ人間の心が少し複雑に出来てるだけなんだよ。だから、重たいとかしつこいとか、そんな風にとらえてほしくないな。…自分自身をそんな風に思いたくないな。
飲み会であたしもかづみも別れたことを暴露した。
ガンガンお酒を飲みまくって…半分酔いに任せて。でも、みんなも酔ってるせいか、笑い飛ばされて終わりだった。悲しくはなかった。別に同情してほしかったわけじゃないから。こうやって笑い飛ばして『次はもっといい男見つけろ』って背中を押してもらいたかったんだ。だからあたしは泣くほど嬉しかった。言葉には出さなかったけど、ありがとうってみんなに言ったんだ。
何回も何回も。