第14話:メール
あたしは今まで生きてきた中で、死にたいと思ったことは1度もなかった。
それはあたしの性格の象徴でもあったし、生きていればいつかいいことはあるって信じてるから。
でも、その生きてる時間が苦痛なんだよね。
だから逃げたくなる。
よく、フラれて自殺する人がいるけど、今はよくその気持ちがわかるや…。まぁ、あたしは一生自殺なんてできないと思うけど。…だって、あたしが死んだら心ちゃんが後ろめたい気持ちで、辛い人生を送ることになるから。心ちゃんには幸せになってほしいから、あたしは我慢する。心ちゃんが傍にいなくて苦しくても、我慢する。それがあたしの愛だ。
どうしてこんなに好きなのにって、考えれば考えるほど自分が醜い人間になってしまいそうで嫌だった。
まるでストーカーみたいな自分。
心ちゃんとの思い出をまだ何一つ消せていない。
心ちゃんから貰った指輪も、2人で撮ったプリクラも、心ちゃんから送られてきたメールも、全て消せないまま。
友達に散々説教してきたくせに、実際自分がフラれればこうだ。そんなに簡単に思い出を消せるわけがないんだよね。それどころか、あたしなんて吸わない煙草を買ってはお香みたいに煙を出して、心ちゃんが付けていた男ものの香水を買って…本当くだらない。その匂いがないと生きていけないなんて、あたしはちっちゃな人間だ。
心ちゃんと別れてから2週間が経ち、ようやく現実を見始めた自分。まず、今のバイト先を辞めることにした。ここの家賃を払っていくには、もう少しお金が必要だったから。居酒屋でバイトしようかなと思ってる。本当はキャバクラとかでもいいんだけど、心ちゃんが嫌がってたのを思い出して辞めた。別にもう心ちゃんの彼女ではないから、関係ないんだけど。
そして今日、4ヶ月ぶりにすずからメールが来た。すずの名前を見ただけで、胸が痛くなった。直りかけの傷に塩水でもかけられた気分。恐る恐る開いたメールの文章は簡単だった。
『会って話したいことがあります。』
あたしは痛む胸を押さえ、携帯を閉じた。