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人間掃除人  作者: 影都 千虎
二掃目
34/73

09

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

 僕に向けられているのは黒いものは拳銃でもう嫌だ痛いのは嫌だどうして僕ばっかり死にたくない嫌だ怖いまた僕を撃つのやめろ男は違うこいつはあのときの奴じゃ今は僕だけだ僕がこいつを殺せばそうだやられる前にやればなんて出来るわけがすぐ撃たれる頭を撃たれて脳髄撒き散らして汚い汚い血と脳味噌を飛び散らせて汚いみっともない汚い死に方はしたくない違うそうじゃない僕は死なないこいつを僕が高校生だろうと知ったことか嫌だ死にたくない一発殴ればそれで動けまた動けずに終わるのか僕は嫌だ痛い撃たれたところが傷口が疼く痛いぐちぐちとずくずくと痛い痒い痒い壊せ全部壊せそうだ無くなれば全部なくなっちゃえば苦しい僕は何でこんなことにぐちゃぐちゃするぐちゃぐちゃにぐちゃぐちゃにばらばらにぐるぐるする殺せ殺せ殺せ今すぐに僕を違う僕があいつを相手は三人組で人質をとっていて能力がばれたらそのときは全員殺せばいいね殺すのは楽しい楽しくない気持ち悪い本当に違う僕はきっと楽しいから一年も続けたんだ違うだから僕はここで死ぬわけには僕は殴られたら殴り返せば僕が勝つんだ痛いのは一瞬だけいつか忘れるから母さんも父さんも僕を殺したくて残念だったね僕は死ななかった生き残った僕を殺そうとしてるんだから自分が殺されても文句は言えない違うそうじゃないあんなの父親でも母親でもないあんなの親じゃないだから殺したって問題は腕を振れ触れたら終わりだ黒いそれは僕を僕でなくして僕は誰僕はなに僕は僕は、僕は。

 僕は。


「ああああああああああああああああああああ」

「熊君、もう大丈夫よ。大丈夫なの。もう怖がらなくていいのよ」

「ああああああああ、あ、あ……あ……?」

 温かい。

 温かくて気持ちいい。けど、苦しい。息がうまくできない。吸えていない? 空気が身体に入っていかない。苦しい。これはもしかしてもしかすると僕は息ができなくて死ぬんじゃ。まずい、いやだ。それは良くない。息を吸わなきゃ。空気を、酸素を吸って僕は。

「慌てなくていいの。ゆっくり、ゆっくりでいいのよ。大丈夫だから」

 僕は抱き締められていて背中を優しくさすられていた。この声に聞き覚えがある。よく知っている。そうだこの声は兎さんだ。でも、なんで。今はもう面会時間じゃない。

「ふ、うっ……」

 僕の口から泣き声ともとれるような、そんな声がこぼれる。それと同時に身体の中の空気が抜けて、少しだけ楽になったような気がした。ああそうか、僕は過呼吸だったのか。頭は嫌に冷静だ。

「辛かったわね。いいのよ、泣いても。もう、大丈夫なのよ」

「う、あぁ……」

 抱き締められて、頭を撫でられて、僕は堪えることをやめて言われるがままにすべてをこぼした。

 その周りで、室内が原型をとどめないほどに崩れ砂まみれになっていることにも気付かずに。

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